Day4 口ずさむ (御代田、坂城)

 ここのところ、御代田は機嫌が良い。自習スペースで合流すると、大抵小さな声で同じメロディーを口ずさんでいる。私語厳禁のスペースではないし、ひとりで勉強している学生はほぼほぼイヤホンを耳に埋め込んでいるし、グループで勉強している集団は何らか話しながら手を動かしている者が多い。だからか、周りから何かを言われたりすることはないようだ。ないようなのだが、

(こう、毎日聞いてると何の曲だかすっげぇ気になるんだよなぁ……聞いたことある気がするんだけど……)

「お、はよ、坂城」

「はよー。お前今日も早いな」

「でも残念、一番乗りではないんだなぁ」

 あまり残念がっているようには見えない笑顔に、十分早いわ、と突っ込んで、坂城はおにぎり型のテーブルの隣の辺に腰かける。2限が始まるまでの30分はあっという間に過ぎた。


 * * *


「え? 俺、歌ってた?」

「歌ってる。なんかこんな感じのやつ。フン~フンフフン~」

「あー、それ、こないだ映画行った時の予告編で流れてたやつ」

「それか!」

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