Day17 空蝉 (中嶌)
テレビはないから、ニュースはスマホか教授との会話が頼りだ。天気予報アプリを開くのすら怠い朝は、スマホのアプリでラジオを聴きながら眠たいままにパンを齧る。
今日は雷雨。ここ一ヶ月ばかりでよく聞くようになったフレーズを、耳が勝手に拾う。
いつ降るのかまではまだ眠い頭では拾いきれなくて、それならばと取り出した服は速乾を謳うドライTシャツにジャージ。どうせ今日も研究室と家の往復なのだ。お洒落よりも万が一雷雨に遭っても損なわれない快適さを優先したい。
傘も持ってノートPCも濡れないようにして、家のドアを開けたらすぐさま陽光に背を向けて鍵をかける。ガシャンと鍵のかかった音を聞き届け、ドアノブをガチャガチャと鳴らしてから、ドアに背を向けようと振り向きざま、踵を支点に動かしたつま先が何かに当たって、かさり、と音を立てた。
見下ろせば、バタバタと動きもしない、仰向けの空蝉ひとつ。
見上げた空は、まだ夏には遠い。
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