【第11章:自戒】

雪が降り止んだ翌朝、校舎は静寂に包まれていた。


京子の遺体は発見され、学校には重たい空気が流れていた。


直樹は、教室の自席に座っていた。何も手につかない。洋子の姿も、そこにはなかった。


喪失——その言葉の意味が、今になって深く胸に刺さる。


(俺は……なにをしてきたんだ)


彼女の気持ちに気づけず、ただ自分の「正しさ」にすがっていた。


未来を変えること。そればかりを考えて、今を生きる誰かの痛みを見落としていた。


そこに、洋子が教室に入ってきた。


顔は晴れやかではなかったが、その目はどこか強く、澄んでいた。


直樹はゆっくりと立ち上がった。


「洋子……俺、間違ってたかもしれない」


彼女は首を振る。


「ううん。……ありがとう。あなたがいてくれたから、私は……京子と向き合えた」


言葉が続かない。だがその沈黙に、何か確かなものが宿っていた。


直樹は、目を閉じた。


(もう一度、立ち上がるんだ。彼女の死を、意味あるものに変えるために)


そして、心の奥で静かに誓った。


——今度こそ、本当に“全員を”救ってみせる。


その決意が、新たな物語の幕を開けようとしていた。

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