【第4章:踏み込む勇気】

道すがら、他愛もない話をした。

好きな音楽、将来のこと、今の悩み。


洋子は話す。けれど、肝心なことには触れない。


直樹は思い切って切り出した。


「洋子……無理してないか? 本当は、話したいことがあるんじゃないか?」


洋子は一瞬、立ち止まった。


そして「……なに、それ」


笑った。

だがその目は、少しだけ潤んでいた。


その日、彼女は何も話さなかった。

けれど直樹には確信があった。


彼女のなかに、誰にも言えない「何か」があること。


そして、それを知っている自分だけが、救えるはずだということ。

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