百鬼夜行

復元データ1 【幽識者会談 調査報告書（第25-0425号）】

記録作成日：2025年4月25日（データ下部の記録日から類推）

解析/復元担当：情報分析センター　安西

備考：一先ず一個だけ復元が完了したのでデータを送信する。以後、完了次第随時送信予定。ところで、これ何のデータだ？　安西

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　データが破損しており、そのままでは中身の確認が出来なかったSSD内のデータを安西にサルベージしてもらった。一番最初に復元されたデータは、誰かが何らかの目的で作成した報告書だった。タイトルはこうある。

【幽識者会談 調査報告書（第25-0425号）】

　やはり幽識者会談絡みのデータに間違いはなかった。だとして、問題は幾つもある。ヤシロと名乗った男はどうしてこのデータを持っていたのか？解決を期待して報告書に目を通したが――何というか、余計に混乱した。

　幽識者会談なるオカルト染みた名称に偽りなし。どうやら連中は怪奇現象に関する調査を行っているようだ。この報告書は「怪異消失事変」と銘打ち、去年の6月に発生した怪異の消失現象を追いかけていた。発生地域は長野県松本市、発生時期は去年の6月17日。その調査を今年の4月24日に行っている。調査メンバーは「四ツ谷」。こいつもヤシロと同じく幽識者会談なる集まりの一人らしい。ただ、名字だけでは素性は分からない。

　報告書を追う。どうやらSNS巡回中に発見したようだ。内容は次の通り。

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ゆのっち@yunocchi　2024年6月17日 18:21

ずっとつきまとってたヤな気配が岐阜に入った瞬間ピタって消えた

空気が違うとかじゃなくて、ホントに消えたって感じ

ここってそんな場所だっけ？

#霊現象に困ってます #岐阜 #誰か知ってる人いる？

返信 3 リポスト 540 いいね 3,381

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　何者かの投稿したポストを見れば、なるほど確かに怪奇現象が突然消失している様に見える。そして、この連中はこの如何にも胡散臭い話を馬鹿正直に捉え、大真面目に調査している。当初は趣味だと思った。世の中には色々な物に価値を見出す奴がいるのだから、オカルトに価値を見出す奴がいたって不思議ではない。実際、そう言った連中向けの雑誌が細々と続いている。ただ、何か毛色が違うと感じた。

　その根拠としたのが、目についた「主現象との関連性評価（主観・客観双方）：不明」という項目と、その下にあったもう一つ「記録者：三上の分析評価⇒関連度｜（0/10）」、更に項目に付記された「判定不可能。無駄足か？」なんてメモ書き。

　主現象と関連度。他にも情報の信頼性評価やら被害状況やらが記載されていたが、それよりも何よりも先の二項目が非常に気になった。つまり、この幽識者会談は「何か」を追っていて、その「何か」と関連がありそうな怪現象を好んで調査対象としている、と考えられないだろうか。

　ただ、結局は推測でしかない。報告書を更に読み進める。

　 記録資料添付一覧（要別ファイル管理）

　写真資料：【P-20250424.jpg】

　音声記録：【S-20250424.wav】

　どうやら画像と音声もあるようだ。まだ復元が終わっていない様で、個人の特定は不可能。続けて、備考の様な項目が目についた。数行程度のメモ書きが残されている。

　対象者への継続的聞き取りは不要、SNS活動の監視継続で十分と判断。次回対応：岐阜に何かある可能性は否定できない。対象が通過した中津川市■■地区を調査する必要あり。（三上）

　当該ポストを投稿した生徒に接触した感想はごく普通、何処にでもいる普通の女子高生って感じでした。写真資料は女子高生近影。特におかしな物は映ってません。音声記録はインタビューです。（四ツ谷）

　岐阜。対象が通過。女子高生。これ等のキーワードから考えられる可能性は――修学旅行、か？ただ、この程度では何も分からない。修学旅行で岐阜を通過した際、女子高生を襲っていた怪現象が急に終息したと分かったところで、結局この連中が何者で、何を追っているのかさっぱり分からない。

　やはりデータが完全に復元されない事には幽識者会談の全容は判明しない。今現在、判明しているのは――

1、幽識者会談という訳の分からない連中がいる。ソイツ等は何故か二課と組対から名前を知られている。

2、現時点での幽識者会談メンバーは三山、四ツ谷、ヤシロの3名。そして、ヤシロが不審死を遂げた。

3、誰かが幽識者会談について調べさせたがっている。警察内部が濃厚だが、断定は出来ない。

4、幽識者会談は「何か」に関連していると思しき怪現象を調査の対象としている。

　こんな程度か。あぁ、と今更ながらに思った。やっぱ、怪奇現象とか幽霊って実在するんだな。