第39話 覚える事がたくさん
具志川でのキャンプがスタートした。
由美達が来るのはもう少し先になる。
俺はいよいよ始まった本格的な練習にワクワクがいっぱいである。
「じゃあ、まずは簡単なところからやるぞ」
「うす! お願いします!」
やるぞやるぞーと思ってたのも束の間。
ウォーミングアップが終わったところで、俺はコーチにお呼び出しされた。
連れて来られたのは小さな部屋。
これは噂の体育会系にあると言われる可愛がりというやつかと警戒したけど、流石にそんな訳がない。
昔はあったのかもしれないが、今そんな事をやったらたちまち炎上しちゃうからね。
俺は今から特別カリキュラム。
野球のお勉強をする訳だ。
俺が素人でピッチングはともかく、他の事が何も分からないのは周知の事実。実際、今は他の選手は投内連係をしてるが、俺はそれ以前の問題なのだ。
まずは、この場面ではどう動くとかをしっかり座学で頭に入れる。それから実践してみて、また座学をしてを繰り返す事になる。
今から説明してくれるコーチは、俺の専属みたいなもんだな。『まさか、一から野球を教える事になるとは思ってなかったぞ』と、苦笑いされちゃったけども。
たかが育成選手にここまでしてくれるのはありがたい限り。俺用に説明する為に動画とかを編集して用意してくれてたりするからね。
実際にコーチに口で説明してもらって、映像でも見てしっかりとイメージする。
早く最低限は覚えて、練習に参加出来るようにならねばなるまい。キャンプ中、ずっとこの部屋に缶詰めとかは流石に勘弁ですよ。
せっかく由美達も来てくれるんだからさ。
「狭山一馬です! 色々ご迷惑をお掛けすると思いますがよろしくお願いします!!」
結局座学は丸一日使って行われた。
丁寧に説明してもらったし、一応大体の動き方は頭に叩き込んだつもりだ。
だが、それで実際身体が動くかどうかと言われると、動かないと思う。今の俺は理論だけで分かった気になってる頭でっかちな状態だ。
今日は動いてみて、また後日座学で復習。
ここから反復練習で身体に染み込ませていかないといけない。いくらステータスがあるとはいえ、こればっかりはすぐにどうこう出来る問題じゃない。
いつも通り、地味な練習をコツコツとだ。
って事で、今日は普通に練習に参加する。
集合時間の二時間前にはグラウンドにやって来て、イメトレや実際に一人で動いて準備は万端。
それでも迷惑は掛けるだろうから、先に一緒に練習する人達に謝っておく。自己紹介の時にピッチング以外はガチの素人って言ってあるからな。
一応の理解は得られている。
無様を晒し続けたら、流石に空気は悪くなってくると思うが。
明日は午後からブルペンで投げる練習もあるんだ。もうそれが楽しみで楽しみで仕方ない。まだ本気で投げる訳にはいかないみたいだが、それでもある程度力を込めて投げれるのは嬉しい。
ジェニファーじゃなくて、キャッチャー相手に投げれるのも最高だ。
………ジェニファー、元気にしてるかな。俺が居なくなったらあいつに役目が無くなっちゃう。シーズンと秋季キャンプが終われば実家に帰る予定だから、帰ったらうんと可愛がってやろう。
ぴっかぴかに磨き上げてやる。
「狭山ー! サードにカバーやー!!」
「あ、すんませーん!!」
いけないいけない。
ジェニファーに思いを馳せてたせいで、少しボーッとしてたぜ。
今はこっちの練習に集中しないとな。
「よっしゃ。ほんじゃあ、まずは軽くやっていくで。徐々に強度は強めていくけど、とりあえず雑にならん事は意識せぇ。ゆっくりでええから丁寧に。分かったな?」
「はい! お願いします!」
午前の投内連係はまずまずと言った感じだった。相応にミスは出るが、思ってたより酷くないってのが、周りの反応らしい。
ベテランのピッチャーの人が悪くないぞって言ってくれたし。お世辞かもしれないけど。
まあ、俺は頭の中がぐちゃぐちゃになりそうだったけどな。考えてるうちはまだまだ未熟って事だろう。他の選手の練習を見てると、ほんと自然にやってたし、俺みたいに考えてる素振りすらない。
もう身体がそう動くようになってるんだ。
俺もこのキャンプでみっちり追い込んで、そうなるようにしたいもんだ。
で、午後からは、また俺だけ特別カリキュラム。
ゴロとライナー、簡単なフライの処理をする練習だ。ピッチャーは投げた瞬間から九人目の野手。ある程度の打球処理は当然必要になってくる。
俺は大河達同期に付き合ってもらって、ほんのちょびっとだけ出来るようになったけど、あくまで付け焼き刃。現に経験ポイントは取得出来てるけど、ステータスの守備や捕球は上がってない。
まだ現状の能力値すら完全に発揮出来てない状態って事なんだろう。守備に関してはF(39)なのに、その領域にも至ってないって事だ。
全くもって先が思いやられるぜ。
「ほな、いくでー」
「ばっちこーい!」
まあ、俺がこの辺の能力で劣ってるのは分かってた事だ。今更嘆いても仕方ない。このキャンプで最低限は出来るようになって、後はコツコツと努力を積み上げていく。変に焦って怪我だけはしないようにしよう。
明日は念願のブルペンにも入れるんだ。
それをモチベーションに、今日の練習を頑張るぞ。
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