第9話 出会い


 ☆★☆★☆★



 「珍しいわね。あなたが旅行に誘ってくるなんて。今なんて忙しい時期じゃない」


 「俺の担当地域のチェックはある程度終わったからな。偶には家族サービスをしとかないと、お前に愛想を尽かされちまう」


 「まあ、うふふ。じゃあ、今日から少しは甘えさせてもらいましょう」


 「この旅館は風呂と料理が良いって、結構評判でな。まあ、ゆっくり楽しもうや」


 「それは楽しみだわ。……あら?」


 「ん? どうした?」


 沖縄本島から少し離れた離島。

 一馬達が住む観光で有名な島。


 そこに、少し旅行シーズンから外れた観光客が、夫婦で一馬の両親が営む旅館にやって来ていた。


 「あれ、マウンドじゃない?」


 「……そうだな。プレートらしきものも設置してて、そこそこ本格的だ。…投球ネットもあるな。荒れてもいないし、近所の誰かが使ってるのか?」


 旅館に入る直前、妻の方が旅館の隣にそこそこ本格的な野球のマウンドがあるのを発見する。


 「まあ、気にはなるがまずはチェックインを済ませちまおう」


 「良いの? もう目がワクワクしてるわよ?」


 「この旅館の隣にあるんだ。旅館の人に聞いた方が話が早いだろ」


 「それもそうね」


 そう言って夫婦は旅館に入る。


 「いらっしゃいませ。お名前を頂戴してもよろしいでしょうか?」


 「二人で予約してる賽野です」


 「賽野様…。はい、二泊のご予約でお間違いないですか?」


 「はい」


 予約してる事を告げ、チェックインの諸々の手続きを終わらせる。そして終わらせた後に、隣のマウンドについて尋ねる。


 「息子達が遊びでやってるみたいで…」


 「息子さんが遊びで…ですか…」


 詳しく聞いてみると、この旅館経営者夫婦の高校生と中学生の息子が一年ほど前にマウンドを作って遊んでるらしい。


 野球部に所属してる訳でもなく、本当に遊びでやってるだけなそうな。


 「遊びにしちゃ、随分本格的だと思うが」


 「そうねぇ。投球ネットもわざわざ買ってるんでしょうし」


 一通り話を聞いた後、部屋に案内された夫婦は、窓から見えるマウンドを眺める。


 「確か、今は息子さん達は海の方に居るって言ってたな」


 「ええ……。行くの?」


 「ああ。良いか?」


 「あなたのその目を見てダメとは言えないわよ」


 「いつもすまねぇな」


 「もう慣れました」


 休日の今日、旅館夫婦の息子達は海の方で遊んでるらしい。ここまで本格的なマウンドを作って遊んでいる高校生と中学生。


 男は職業上、気になって仕方なかった。

 そして、夫の職業に理解のある妻と仲の良い掛け合いを見せて、二人は海の方へ向かうのであった。





 「あれ…か…?」


 「あの子、随分大きいわねぇ」


 旅館から歩く事少し。

 息子達が居るという海にやって来た夫婦は少し驚いた。


 「兄貴ー! ペース落ちてるー!」


 「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ」


 「ほらほらー! ラスト一本!!」


 「ひぃー!」


 砂浜を水着姿で走ってるかなり背の高い男。しかも、ただ大きいだけではなく、高校生にしては、かなり身体もがっちりとしている。


 もう一人は砂浜に用意したベンチに座って、タブレットを操作しながら、走ってる男に檄を飛ばしている。


 夫婦は恐らくあれが言っていた息子達だろうとアタリを付けた。


 「はい、おっけー!」


 「死ぬ…死ぬ…死ぬ…」


 最後まで走り切った男が砂浜に倒れる。

 倒れながらも二人で話していて、一人は頷きながらタブレットを操作する。


 「素材は申し分なさそうだが…」


 夫婦は少し落ち着いたのを見て、二人に話しかけに行った。



 ☆★☆★☆★



 「おーい、ちょっと良いか?」


 「ん?」


 今日も今日とて、砂浜で泳いだり走ったりと、伸二に下半身を虐められる。ようやく一通り終わって、この後は楽しい楽しいピッチング練習だ。


 そう思って砂浜で寝転がりながら息を整えてたんだけど、砂浜への入り口から男女が俺達に向かって声を掛けながら歩いてくる。


 「あ、そういえば今日宿泊のお客さんが居たかも」


 「え? って事は、あの二人はうちのお客さんって事?」


 俺は慌てて立ち上がって身体中に付いた砂を払う。お客さんかもしれないのに、寝転んだまま応対なんてしたら、うちの旅館の評判に傷が付く。忙しくなるシーズンから外れてたから、すっかり油断してたぜ。


 「旅館の女将さんに聞いてきたんだが……」


 「はい。ご利用ありがとうございます。お見苦しい姿で申し訳ありません」


 「いやいや、それは良いんだ」


 やっぱりうちのお客さんだった。

 まあ、別に俺は従業員ではないから、そこまで気にする必要はないんだけど、お手伝いはするから、接する機会があるかもしれない。


 少しでも心象を良くするに越した事はないだろう。


 「旅館の隣のマウンド。あれ、二人が作って遊んでるって聞いて興味があってな」


 「? マウンドですか?」


 「うん。良かったらその遊んでる所を見せてもらえねぇかと思ったんだが」


 どうやらこのお客さんは、マウンドに興味があるらしい。これまでも興味を持ったお客さんが居たから不思議な事ではない。


 そりゃ、旅館の隣にマウンドなんてあれば、野球を知ってる人なら多少は気になるだろう。俺達兄弟が練習してるのをチラッと見る人達だって居たし。


 何かしらクレームが来たらすぐにやめるつもりだったが、今の所そういったのはない。


 「丁度この後にあそこでやる予定だったので、それは別に構いませんけど……。そんなに面白いものでもないですよ?」


 「お、本当か! じゃあ、是非見せてくれ! 俺達は向こうで待ってるからよ!」


 男性のお客さんの目がキラッキラなんだが。女性のお客さんもニコニコしてるし。流石にここまで興味を持たれたのは初めてだな……。


 よっぽど野球が好きな人達なのかもしれん。本当にただ投げてるだけだから、そこまで期待に沿えるようなもんじゃないんだけど……。


 まだ170kmなんて到底出せないしね。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 なんか今回の話。

 作者的にはしっくりきてない。

 もう少し上手く書けそうな気がするんですけど……。


 と、なんかモヤモヤするので今日は2話更新です。10分後にもう1話アップします。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る