第4話 非常食

「貴様も鬼か」


 何とついているのだ。

 ご馳走がそちらからやってくるとは。

 俺は金棒を振りかぶると鬼の頭を吹き飛ばす。

 この方が角が手に入りやすいだろう。


 しかし・・・

 なんだこれは。臭いぞ、この角。

 鬼の匂いしかしない。

 試しに齧ってみるが不味い。


 そういえばガキが何か言っていたな。

 活かさず殺さず飼いならして人間を喰うと。

 なるほど。人を喰った鬼だけがあの美味い角を発現させるのか。

 これからは人を喰って太らせた鬼だけを喰おう。

 

「おとう!」


 声に目をやると倒れた緑鬼に縋るガキ鬼が居る。

 こいつも人を喰ってないな。泳がすか。


「あんた!」


 そしてもうひと鬼。これは妻か。

 こっちは人食いだな。

 俺は金棒で首を飛ばす。

 やはりだ。良い匂いがする。

 人をたんまり食った鬼の角だ。


 一口齧る。

 美味だ。人の美味しさを凝縮し濃厚な熟成を重ねた角。

 これは人間ごはんと一緒に味わいたい所だが致し方ない。

 鬼の体がおかずになればいうこと無しなのだがな。


 俺は今しがた手に入れた力で炎を出すと鬼の遺体を焼いていく。

 死んだ鬼は臭くてかなわん。


「なんで焼くの?」


 ん? 逃げんのか?

 人無し鬼など殺す価値もないのだがな。


「臭いからだ」


 俺は答える。


「うん。臭い」


 ほう。わかっているじゃないか。

 しかし人肌鬼か。いつぞやのガキもそうだった。


「ねぇ。美味しい匂いがする所。あーしは知ってるよ」


 ほう。親を殺されてこれか。これは見込みがある。

 それにだ。

 こいつに人を喰わせれば美味なる鬼の角を人間ごはんと共に味わえる。

 首を持ち歩くよりも確実だ。


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