第2話 精神障碍者・サモン
サモンは、生き物が好きだった。
最近、区役所の傍にあるペットショップで、一匹一万円もするカエルを買ったという。
彼の金銭感覚は、一般的とは言いがたい。有り金のすべてを、ソープか高額な生き物の購入と飼育に費やしてしまう。
彼の人生への向き合い方は、手軽に得られる「所有の喜び」にあった。生き物を手に入れ、飼うことで、何かを満たしていたのだ。
けれど、そんな生き方は、精神障害を抱える多くの人に共通するものかもしれない。皆、刹那的な快楽に身を委ねながら、生きている。
ただ、サモンは少し違っていた。好奇心豊かで、お節介な性格で、世の中のことをよく理解している。だからこそ、ワタルの興味を引いたのだ。
「……あのさあ」
遠慮がちに、サモンは話を切り出してくる。
彼との出会いは、ワタルが入所してから二ヶ月後のことだった。
――それから、四年の月日が流れた。
今でもサモンとは、福祉事業所に一緒に通い、友人として付き合いを続けている。
これまで、目立ったトラブルは起きていない。
ある日、ワタルはサモンの声に耳を傾けた。彼が何かを話すときは、いつも少しだけ間があって、言葉を選んでいるようだった。その慎重さが、ワタルには心地よかった。
多くの人が、サモンのような人を「変わっている」と言うかもしれない。
でもワタルにとっては、サモンの沈黙も、言葉も、すべてが意味を持っていた。
「……カエル、さぁ、名前つけたんだ」
「へえ、なんて名前?」
「“アオ”っていう。色が、ちょっと青っぽかったから」
ワタルは笑った。
サモンの名付けはいつも素朴で、どこか詩的だった。以前飼っていたハムスターには「シロ」、その前の熱帯魚には「ヒカリ」と名付けていた。
どれも、見た目や印象から取った名前だったが、そこにはサモンなりの愛情が込められていた。
「アオは元気?」
「うん。夜になると、鳴くんだ。静かな部屋で、ぽつんと鳴くの。……なんか、いいよね。ああいうの」
ワタルは頷いた。
サモンが生き物に惹かれる理由が、少しだけ分かる気がした。
それは、孤独の中にある微かな命の気配を、確かめるためなのかもしれない。
誰かと繋がっていたいという思いが、彼を生き物へと向かわせるのだ。
そんな二人は、最近、交流を深めるとタックを組んで、令和7年を駆け抜けていく事になる。
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