第5話


「これは……?」


 一体どういうことだ。なぜこんな姿に?



「誠に恐縮ながら……天陽様は、御姿が光の粒におなりになり、一度ご消滅あそばされました」

「消滅した? 私が?」



 顔を上げた桃の命が一つ頷いた。冗談はやめなさいと言うまでもなく、桃の命のまっすぐな目が事実だと訴えかけてくる。



「……そうか。でも、私はなぜここへ?」

「それは私も存じ上げません。ですが、光の粒が私の目の前に現れたあの日、すぐに天陽様だと拝察いたしました。もしかすると、私の中にある天陽様のお力が引き寄せたのかもしれません」



 桃の命は元は神ではなく桃の精霊だった。精霊にしておくには惜しいほどの力を持っていて、その力に助けられたことを称して天陽自らが力を与え神へと昇格させた。



「……あれからどれぐらい経った?」

「千年ほどでございます」

「千年……」



 神に寿命は存在しない。天界にいたあの頃であれば、たかが千年と思っただろうな。今は違う。千年もの間、私がいない世界が存在し、成り立っていたのだ。それは酷く長く感じた。


 天陽は小さくそうかと呟いた。



「私の力不足ゆえ、これほどまでにお時間を頂戴してしまい、御姿までそのように変わられてしまわれたこと、深くお詫び申し上げます」

「それは違う。桃の命がいたから私は再び目覚めこの世界に戻れたのだ。礼を言う」



 ありがとう。

 天陽が感謝の言葉を口にしたその瞬間、桃の命の身体が淡い桃色の光に包まれ透き通っていく。



「っ、それは……」

「心配には及びません。元の場所御神木に戻るだけです」


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