ゴミスキルとはこういうことか ~廃棄物処理スキルの有用性は僕しか知らない~

第1話:そのスキル、マジでゴミだよね(誉め言葉)

目が覚めた瞬間、違和感しかなかった。


まず、寒い。というか、ぬるい。

布団じゃない何かにくるまれている感じ。

しかもやたら狭い。手も足もろくに動かない。なのに誰かに抱かれている。


次に、視界がぼやけている。

天井、いや、空? いや、いや、誰?この顔、近い、近いって!でかいし、声でかいし。


「おぎゃあああああ!!」


え、俺!? ……え? いや、今の、俺?


混乱の極みである。まさかとは思うが、いや、まさかだろうけど、これは——


「生まれたての赤ん坊だコレ!!」


声にはならない思考が頭の中で大音量で鳴り響く。


異世界転生、である。


死んだ記憶は……確か、ビルから落ちてきた何かに当たって……まあ、覚えていないならどうでもいい。

重要なのは今ここにいる、という事実。


泣き声を上げながら、全身がなんとなく理解していく。

体が小さい。喉が渇く。空腹感がじんわり広がる。

赤ちゃんって、こんなに無力なのか。いや、前世でもそこそこ無力だったけど。


「……名前は、ラグにしましょう。」


上から降ってきた声にビクリとする。

ファンタジー風な装いの女性が、俺——ラグを愛しげに抱いている。

金髪、碧眼、テンプレ美人。母親らしい。

横にはやたら豪奢な服を着た筋肉質な男。父親か。

ってか、いきなり名前決まったのか俺。


「ラグ・ディースフェルト……お前のスキルは……『廃棄物処理』?」


なんだそれ。え、いきなり鑑定された?

転生ボーナスとかじゃなく、スキル名?

しかもよりによって“廃棄物処理”って。


どこからどう見てもハズレスキルである。


「まあ、ゴミでも処理してくれるなら掃除には困らないわね〜。」


「はは、男の子らしくないが……ま、平穏無事が一番だな。」


うん、俺もそう思う。平穏無事でいい。でもさ。


このスキル、本当に“ゴミ”なのか?

いや、“ゴミ”なのかもしれないが、“使えない”とは言ってない。もしかして、これ、そういうやつじゃないのか?

どっかで聞いたことあるぞ、“ゴミスキルが実は最強”ってパターン。


だけど今は……この体じゃ、何もできない。


ラグ・ディースフェルト、0歳。異世界にて“ゴミスキル”を引っさげて、第一声を上げた秋の夜だった。


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