佳奈

この気持ち

 まただ。

 またきつく当たってしまった。

 お母さんごめん。

 でも、こうするしかなかったから。

 涼香ちゃんにいじめられてると知ったら、お母さんは自分を責めてしまうでしょ?

 それに、怒りに任せて怒るのは違うと思う。

 愉快犯なら怒っても良いと思うし、怒るべきだと感じる。

 でも、涼香ちゃんは愉快犯?

 そう考えると私は疑問符が出てくる。

 だって、笑顔の奥で笑ってないんだもの。

 私と同じ、ひきつった不器用な笑顔なんだもの。

 涼香ちゃんなら、どうするべきか分かってるはず。

 それなのに行動しない理由は分からないけど、完璧な愉快犯ではないと思う。

 だから、隠してる。

 確証はないし、ただの考えだから、結論が出るまで考えてる。

 でも、分からないや。

 いや、分かりたくないのかもしれない。

 考えたって、涼香ちゃんの歩んできた人生も、涼香ちゃんの気持ちもなにも分かりはしない。

 それでも、考えるべきだと思う。

 でも、最初にお母さんに謝りたい。

 私が悪いのに、いつも怒らせてばかりでごめん。

 無愛想になってしまうのは、話せないから。

 話し始めたら、泣いて、泣いて、全てを話してしまいそうだから。

 最近はずっと部屋に籠ってる。

 傘を隠されたことも、アクセサリーが盗られたことも、私は知ってる。

 でも、誰にも言わない。

 助けを求めない。

 いや、求められない。

 だって、涼香ちゃんの目は昔の私みたいに、仲間を探してるみたいだから。

 この関係を崩すと、可哀想だから。

 私は、なにもできない。

 でも、それといってこんなことをしてはいけないことも分かってる。

 だから、精一杯の反抗はしてみてる。

 涼香ちゃんの周りの取り巻きには、面白く写ってるみたいだけど。

 お母さん。

 いつか話すから。

 でも、それは今じゃない。

 分かってほしいな。

 この気持ち。

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