第二章
横山は、勉強は得意ではなかった。クラスの成績は下から数えた方が早いくらいであった。だが、親はその点は心配していない。中2の学力テストで、行ける高校がどこもない。と言われても、楽観的な家族であった。横山はアイドルを、あきらめていなかった。別のグループに入ればいいと思っていたからだ。
そして、バドミントンでも、活躍できなくなってしまった。体の丸みが他の女子と比べて大きくなってしまったからであった。彼氏ができたことが影響しているのであろうか。以前に勝てた相手にも、余裕で負けるようになってしまった。
「おい、横山、最近たるんでるんじゃないか?」部員たちは横山に彼氏ができたことは知っていた。それを、あまりよく思っていなかったのだろう。しかも、相手はイケメンである。それから、横山は幽霊部員になった。
横山は、次の日彼氏の部活が終わるまで、近くの本屋に立ち寄る。しかし、すぐさま出ていくことになった。雑誌を読んでも、写真の部分を見るだけで、文字は読めないからであった。小説などは読めない。漫画はそもそも立ち読みできない。といっても、横山に文字を読むという習慣がないので、それも難しい事であった。
すぐに本屋を出ていき、一旦自宅へ戻る。自宅へ戻っても、誰もいない。寂しい。早く彼氏に会いたくてたまらなかった。横山は自分の顔を鏡で見つめた。一応歯磨きはしておこう。横山は歯ブラシを取り、歯を一個一個丁寧に磨いていく。舌も磨いておこう。それに、シャワーも浴びなければ。シャワーも浴びていく。鏡をずっと見つめていると奇妙な感覚にとらわれる。あれ?私の歯って、こんなに歯並び悪かったっけ?そして、鼻の大きさや、目元も気になってしまう。しかし、彼氏はそんなことを期にしない性格であろう。
そろそろ、部活も終わることであろう。綺麗な服に着替えて外に出る。すると、彼氏が他の女と話しているのを見かけた。マネージャーであろうか。横山は、話し終えるのを待たずに、彼氏の元へ向かう。彼氏はぎょっとする。女は気まずそうにその場を離れた。
「じゃあ、行こう!」横山は笑顔で言った。彼氏の家に向かう。そして、二人は交わった。さっきシャワーを浴びたがそれでも熱い。男は内なる獣を、外を放った。欲望のままに貪りつく。横山も同じであった。本能のままに男を求める。体中を駆け巡る、汗や血や細胞が活性化していた。肉と肉が触れ合う音が部屋中に響いていた。数時間もの間求め合い二人は果てる。
それからというものの、二人は毎日のように求めあった。時間も忘れて求めあった。体中にたまった老廃物がその行為によって放出されていくのだ。二人だけの濃密な時間を、二人だけの世界を築き上げていった。まるで会話であった。無言なりとも、お互いの感情を知ることができた。薄い長時間の会話よりも、濃い短時間でも交わり、肉体同士の交わりの方が濃く感じられた。
しかし、そんな幸せな時間も長くは続かなかった。横山が浮気をしたからであった。イケメン彼氏には何の落ち度もなかった。しかし、横山が飽きたのであった。違う肉を求め、彼氏が部活に行っている間に別の男とやっていたのであった。
「何やってんだてめえ!」彼氏は激昂するが、横山にまったく反省の色が見られなかった。
「だって、飽きたんだもん」そう言うだけで、何も言わない。別れてくれとも、構ってくれとも何も言わず、ただただ、飽きたと言っただけであった。
そのことはクラス中に広まった。それを聞いた男子は、横山に交際を申し込んだ。横山は交際を断るが、セックスは断らなかった。数ある男の中の一人でいいから、童貞食いを次々と行った。そんな横山に嫌気が差し、彼氏は別れを告げたのであった。
ただただ無為に時間が過ぎる感覚に横山は取られた。男をしゃぶりすぎたせいで、顎が痛くなってしまった。
とうとう、受験の年が迫る。横山にはいきたい高校がなかった。取り敢えず、近所の高校に願書を出す。しかし、そこは、名前を書けば誰でも通るようなところであった。
ここまで、横山には必死に何かをやり遂げたという経験がないまま、ここまで来てしまった。そして、いよいよ、アイドルを本格的に目指す転機が訪れる。
Sweet Dropsという、地下アイドルが、名古屋に拠点を作る、ということでオーディションが開催される。このころには、経験人数は、数十人となっていた。
横山は、アフタヌーン娘には、落ちたがこれには受かると思った。そして、見事合格し、無事にアイドルの仲間入りとなる。
しかし、いざ、その場に入ると、オーディションでは見たことないような人物ばかりであった。ダンスのレッスン場の控室。自分よりも若い者ばかりであった。
女子同士の会話もまだ幼く感じられる。サイズは何センチがいい。肩さは大事だよねえ。と言ったものだが、想像の範疇を超えないものばかりだなと、そんな折話しかけてきた女がいた。
後の親友となる、高橋かおりであった。高橋は、幼いころより芸能界におり、モデルとしても活動していたが、人気低迷を機に地元に帰省し、Sweet Dropsに加入したのであった。年齢は、横山より4歳ばかり上である。
「緊張してるの?」
「は...はい...」
「そんなにかしこまらなくていいよ。私高橋かおりって言うの。よろしくね。」横山は高橋のことは何となく知っていた。地元でもそこそこ有名だったからであった。横山は当初、高橋のことを見下していたのであった。いい年をして、アイドルを夢見るなんてと...しかし、同時に恐怖を覚えた。自分も同じ立場になってもおかしくないのでは?ダンスレッスンが始まる。といっても、技術の習得にはさほど時間はかからない。問題は自分がどれだけ目立てるか、それも輪を乱すことなく。である。これは、技術の習得の何倍も難しい。そして、ダンスレッスン中に、横山は隣の女とぶつかった。
「あ、すいません」女は申し訳なさそうな口調と表情で言うが、横山は知っていたこれはわざとだ。しかし、波風をここで立てては負けを意味する。横山は笑顔で言う。
「大丈夫よ」
「そこ!輪を乱すな!もう一回!」横山に視線が集まる。講師の一言もそうだが、じっと湿ったような眼で見つめられる。横山は一瞬ぞっとするが、すぐに
「すいません」そういって、頭を下げ練習は再開する。
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