第43話 手合わせ
強、リゼ、キンバは和夜を囲むように立つ。手合わせが始まるのである。道場の端で騎士は様子を見守る。騎士だけでなく、見守る者がまだ居た。
「本当・・・仲良くなれて良かったな」
マンだった。
「まぁ、かかって来たまえ」
和夜は少し天狗になっていた。
「あいつ・・・調子に乗るところが親子だな」
手合わせを開始し和夜は3人の攻撃を避けまくる。和夜の天狗の鼻は一瞬で折れた。和夜は無敵返しによるガードが間に合わずに強の一撃が当たり倒れていた。
「当たった・・・俺、急に強くなったのか?・・・いや」
「和夜姉さんが弱くなってね」
「今も十分に強いけど、この前と違う」
和夜は起き上がる。
「痛ーい」
と言ってはいるが、傷はなくなっていた。
「やっぱり弱体化してるかー。この姿はあまり好きじゃないけど、しゃーない」
瞬きする間に片目が紫に変わる。そして、血管のような模様で肌の一部が紫色に変わる。
「あの時の・・・右目じゃなくて左目だけに変わってる」
騎士だけは気付く。騎士以外の3人、いや4人は変身の方に驚く。
「何だ?」
「変身するのかよ」
「そんなことも出来るんだ」
4人の内3人は強、リゼ、キンバ。そして、残る1人が言う。
「いや!何だ!?あれ!」
マンだ。そうだ、マンも変身を見たことがなかった。3人は和夜へまた攻撃をする。変身後はこの前の様に攻撃は当たらず交わされる。
「無敵返し!・・・これがあって本当に良かった~」
3人はこの前はボコボコにされたと言えども幹部の一員。1度も攻撃が当たらないとは言え、和夜からすると決して楽勝ではなかった。全員、スタミナ切れになるまで続いた。
「くっ、一瞬でも自分が強くなったと思ったのが不覚。上司への侮辱、すまない」
「1度も当たらねぇ。変身した後が強過ぎる」
「尊敬します」
「いや・・・それほどでも・・・そんなことはないよ」
1番、息切れしていたのは和夜だった。床には寝転がりたくないが疲れ過ぎて、それどころではない。あーた達の方が強いんじゃない?と和夜は思った。
「和夜ちゃんの方が強いことに変わりはないに決まってる・・・そもそも3対1だし・・・」
ボソッと呟く騎士であった。
スタミナ切れで休憩しているところへ、足音が聞こえた。
「前回は和夜ちゃんの中に眠っていた大きな感情が糧となっていて強かったのもあるからねぇ。元々、変身が出来るようになる前の無敵返しだけでも十分に強いけど」
イカイケメンだった。
「確かに・・・それが大きいな。羽も出せなくなったし」
「でも、私の細胞が入った体だから前より運動神経や身体能力が上がっているのは間違いないよ。それだけじゃない。さっき強くんの一撃が当たっても一瞬で治っただろ?もし、もっと細胞が欲しいなら言ってね。2回目だから成功するかは怪しいけど、君の体にまた穴を開けたり、バラバラにしたり」
「遠慮しときます」
「それは残念。和夜ちゃん以外には出来ない。和夜ちゃんにしか出来ないことなのに」
絶対ろくなやり方じゃない、失敗したら堪ったもんじゃない、と和夜は思った。
「貴方がイカイケメンですか?」
「初めて見るぜ」
「騎士さんみたいに綺麗な顔」
ボソッと口に出した3人にイカイケメンは頭を下げた。
「私が原因です。和夜ちゃんを操ってすみませんでした」
和夜と同じで謝りに来たのだ。和夜があの時、ヒーロー達に攻撃をする原因になった責任を感じていた。
「いや、俺達に謝ることでは」
「1番の元凶は俺達だし」
「逆に気付かせてくれたっていうか」
3人は怒っていなかった。自分達が悪いと本気で思い、反省していたからだ。
「ありがとう・・・」
お礼を言い、イカイケメンはさりげなく騎士の隣に行く。
「じゃ!和夜姉さん!再開っすよ!」
「えっ、嘘・・・終わりじゃないの?」
「和夜先輩、何言ってるんですか。まだ1回しかしてないっすよ」
「そうだな」
和夜は真っ青になる。もう疲れたよー・・・と思っていた。
「マジかよ・・・」
命がけなのか、はたまたプライドなのか、和夜は完璧に避けきった。2人のイケメンはその様子を見守る。
「騎士くんもごめんね。大切な和夜ちゃんの胸を突き刺して連れ去って洗脳して・・・」
騎士は目を合わせず無言だった。
「俺は許したくないけど・・・和夜ちゃん本人が怒ってないし・・・幹部になったならせいぜい頑張れば?・・・仮だけど」
「うん・・・ありがとう」
イカイケメンは何だかんだ騎士に応援され嬉しかった。まぁ、騎士はそんなつもりは一切ないのだが。
「ふふふ。まさか騎士くんに応援されるなんて・・・頑張るよ。幹部としても、和夜ちゃんのナイトとしても」
「最後のは俺がするからいらない」
急に騎士が自分の方を向いてくれたと思ったら和夜には決して見せることはないだろう、怖い顔だった。
「じょ・・・冗談・・・だよ」
「面白くない冗談だね」
騎士は直ぐに和夜を見守る。
道場の扉で新たに手合わせしている和夜の後姿を見守る者達が居た。
「おっ、何かやってるな!解決したようで良かった!」
「そうね」
伸郎と美智子が様子を見に来たのだ。美智子は怪化薬打倒委員会に入っていないが許可を貰って今日は伸郎の付き添いをし和夜の様子を見に来たのだ。和夜が2人に気付いて目の前に姿を現す。怪人のような姿であるのを忘れていた。
「きゃあああああああ」
「うおおおおおおおお」
2人は見たことない姿に悲鳴をあげる。伸郎は変身が出来ることは軽く話を聞いていたが忘れていた。本当に忘れていた。全く何をしているのだ。美智子は全く知らなかったので後ろから倒れた。驚き過ぎて気絶したのである。
「えええ!?」
「ままっちー!」
美智子は医務室に運ばれベットで休むことになった。伸郎達は道場の中で丸くなって座る。言わなくても分かるだろうが胡坐をかいて座る和夜の隣は騎士である。
「ごめんごめん。ままっちに伝えてなかったわー」
伸郎が冷や汗をかきつつも笑いながら答えた。
「後で怒られろ」
和夜が冷静に言う。
「お父さん・・・ドンマイです」
「うるせぇよ・・・お父さんじゃねぇ」
美智子に後で怒られるであろう伸郎の心情を察知した騎士が励ます。和夜は体の力が抜ける。
「いやー、疲れたよ。運動もスポーツも全然して来なかった人だし」
「和夜姉さん!ここの道場に温泉あるっすよ!」
「温泉?そんなのもあるの?」
「今だと誰も入っていないから貸し切り状態だ。扉に念の為、使用中の札をしてから入ると良い」
「リゼとつよっしー、教えてくれてありがとう。行って来まーす」
和夜はウキウキしながら温泉に向かった。
「行ってらっしゃーい」
「のぼせないようにね。和夜ちゃん」
「おう!ゆっくり入って来い!・・・つよっしー?・・・」
驚いた伸郎は強を見る。強は照れながら
「あだ名呼びに憧れてたんですよね」
「そうか。つよっしー」
「つよっしー兄貴」
「つよっしー先輩」
強は照れつつも満面の笑顔で嬉しそうだった。意外に可愛い人である。
「そうだ!伸郎さん!一緒にトレーニングをお願いします!」
「おう!」
伸郎は和夜が道場から居なくなったところでトレーニングを始めようとする。先程までの明るい雰囲気が一気になくなる。
「・・・さて・・・和夜も居ないことだし・・・トレーニングと言う名の手合わせをしながら確認したいことがあるんだ・・・今まで君達3人が和夜へ相当、酷いことを言っていたようだが、本当か?・・・」
問題の3人はビビる。恐ろしい手合わせが始まることが目に見えていた。それを騎士は自業自得、当然の報いだと傍観しながら1人筋トレをしていた。何なら伸郎のお手伝いもする。
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