第42話 道場

 イカイケメンと一緒に生かされてから、皆に生きてと言われてから1週間を経った頃に和夜は1人で道場へ行った。会わなければいけない人達がいたからだ。道場の扉を開けると強、リゼ、キンバが床に座って待っていた。

「失礼します。集まって頂きありがとうございます・・・あっ、あの舎弟さん達は」

「まだベットから出られない状態だ」

「そうですよね・・・すみません・・・」

和夜の質問に強は腕組みをした状態のまま答える。蚊の鳴くような声で謝罪した和夜を3人は真面目な表情で見つめていた。和夜は怖ー、自分のせいだけど怖ー、と思っていた。3人に恐る恐る近づき膝と両手を付くと頭を下げて言った。

「大変すみませんでしたー!」

精一杯の謝罪をした。頭は直ぐに上げられなかった。殴られる覚悟で罵倒される覚悟で和夜はいたのだが少しおかしいなと思った。返答も何もなく、何かされることもなかったからだ。顔を上げると、3人も手を付き頭を下げていた。

「えっ」

予想外の光景だった。

「そんなに強いのに!実力者なのに!親の七光りだとか言ってすまない!いや、申し訳ございません!」

「俺もすみません!騎士さんをたぶらかして手柄横取りとか言って、本当にすみません!」

「和夜先輩のこと、ちゃんと知りもせず酷いことしてごめんなさい!」

次々に和夜に謝罪をした。

「舎弟は今日は来れないが怪我が治ったら必ず謝罪しに来ます!というか本来、ドクターストップがなければ来てました!すみません!」

「体の方が大事だから謝られることじゃないよ。安静にして欲しいし・・・えっと・・・恨んでないの?私のこと」

3人が一斉に顔を上げた。

「恨んでません!悪いのはこっちです!」

3人同時に言った。和夜は緊張した顔から安心した顔に変わった。

「そっか・・・良かった。恨んでなくて」

「逆にこっちが恨まれてもおかしくないって思ってる・・・」

「本当にすまないことをした・・・」

「許してくれとは言いません」

和夜の発言に対してリゼ、強、キンバの順番で言った。

「そんな・・・私が責められる立場なのに」

「そんなことありません!」

「ど・・・同時だね。3人共」

和夜は菓子折りを1つ出した。

「これ、お詫びです」

「そんな申し訳ない」

「そうっすよ。俺らが悪いのに」

「俺達は何も」

和夜は手を振る。

「いやいや、私の気持ちなんで。私が暴れたから怪我をさせちゃったし、先に手を出しちゃった方が悪いし」

和夜は新たに菓子折りを目の前に出す。

「皆さんの好みが分からないので甘い物が駄目な方のためにしょっぱい物も」

「ああ、ありがとうございます」

強は自分が酷いことをしてしまった上司なのに気を使って貰えたことに感動していた。

「もし、しょっぱい物も駄目な方のために辛い物も」

「俺、辛いの好きっす。ありがとうございます」

リゼもそこまで気を使ってくれたことに感動をしていた。

「後、辛いのが駄目な方のためにも苦い物も」

「和夜先輩、俺は辛いのも苦いのも駄目っすけど嬉しいです。ありがとうございます」

キンバも感動していたが、余計な発言をしたのでリゼに軽く頭を小突かれる。和夜が菓子折りを何個も出しながら言った。

「他に最近、人気のお菓子。見た目の良い物。お勧めの物。最後に一応、プロテイン」

「いや、用意し過ぎだろ!」

「私もそう思います!気付いたらこうなってました!」

リゼがツッコみ和夜が真面目に返す。数秒の沈黙の後、全員は笑った。

「確かにいくらなんでも多過ぎたな。これじゃ、賄賂みたいになっちゃう」

「和夜先輩、面白いっす」

「こんなにたくさん、ありがとうございます」

何とか謝罪は上手く行き、良い関係になった。そこをヒョッコリと顔を出し覗く者が居た。和夜以外の者達が圧に気付き声を出す。

「あっ、騎士さん」

「騎士さん!?」

「何か・・・怖い」

和夜は振り返る。


 騎士も和夜が上手く行くかの不安、緊張でいっぱいだった。本当は同席するつもりだったが和夜に1人で謝罪すると言われコッソリ付いて行ったのだ。見守っていれば上手く行って良かったが和夜と一緒に自分抜きで男達と楽しくやっているのは複雑だった。とても複雑だった。しかし、和夜が振り返ると同時に一気に嬉しそうな顔に変わる。3人はその変わりように引いた。和夜だけは知らない、気付いていない。

「和夜ちゃん、良かったね。俺も安心したよ」

「うん!ありがとう!」

騎士はさりげなく和夜の隣に来た。先程の怖い雰囲気を感じさせない、いつも通りの雰囲気で3人は余計に引いた。和夜は謝罪した3人ににこやかに言う。

「後、別にタメ口でも良いですよ。その方が何か気楽で良いなと、って言っても私が敬語にしろとか言っちゃたから、使いづらいかもですが」

「じゃあ、和夜さんも敬語を取って下さいよ~」

「確かに・・・そうだな。取るよ。リゼさん」

「さんも付けなくて良いっすよ。くん付・・・」

リゼは言いかけたことを止めた。騎士の視線が何か怖かったからだ。

「呼び捨てで!」

「そっか。呼び捨てか。おっけー」

和夜はリゼの様子を不思議に思いつつも答えた。

「私・・・いや、俺にも敬語もなしで呼び捨てでお願いしたい。年上だからとか気にせず」

「分かりました。でも、呼び捨ては何か抵抗あるな~」

和夜はあることを閃き、目を輝かせて言う。

「つよしっち!いや、つよつよ、うーん、つよっしー・・・」

段々、悩み出すが、先に聞き忘れていたことを思い出す。

「急にごめん。あだ名は嫌かな?」

「いえ!平気です!言われてみたかった」

「おお!そうなんですか!じゃない、そうなんだ!急だと慣れないな」

敬語とタメ口を急に変えるのは難しい和夜であった。

「希望を出したい。良いかな?」

「おっ!逆にどんどん出して」

「俺はさっき考えてくれた『つよっしー』というあだ名が気に入った」

「ラジャー、つよっしー」

和夜だけでなく、他の皆も本当に関係が良くなったことを嬉しく感じる。


 今までの酷い関係が嘘のような楽しい雑談だった。区切りの良いところで和夜は立ち言う。

「では、そろそろ」

「あっ、和夜姉さん」

「姉さん、何か良いな。兄貴とかだともっと響きが良いけど」

和夜は姉さん呼びに浸る。

「兄貴はちょっと・・・」

「冗談よ」

「俺、和夜姉さんみたいに強くなりたいっす!だから、手合わせをまた頼む!」

「私で良いの?武道とか格闘技とか全然やったことないのは事実だし」

「関係ないっす!和夜姉さんが強いことに変わりはないっす!」

「ありがとう。私で良いなら是非」

「では、早速!」

「えっ、今!?怪我は!?」

「これくらい平気っす。和夜姉さん、何だかんだ加減してくれたし」

強とキンバもお互いの顔を見て頷いた。

「俺もお願いしたい」

「和夜先輩、俺も」

「いや、つよっしーに関しては腕が骨折してるし・・・」

強は腕にはめているギプスを外し、ブンブン腕を回す。それを見た和夜は目ん玉が飛び出る程に驚く。

「骨折なんて1日もしない内に治る」

本当はとっくに骨折は治っていたが医者に念のため付けるように言われていた。

「えええ!?嘘ー!?本当だ!治ってるー!」

何ともないように腕を動かす強に和夜は驚く。念の為に伝えますが、これはあくまで強達の場合です。良い子も良い大人も真似はしてはいけません。1日で骨折は治りません。きちんとお医者様の指示に従いましょう。

「元気だなー、若造は」

「お前もな」

仲良くなれた3人は和夜にツッコんだ。

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