第8話 ありがとう

鏑木ほのかに告白された。

だけど俺は萌。

つまりほのかの姉の事を引き摺っている。

だから俺は裏切られるんじゃないかという事もあるし...その。

ほのかと付き合うビジョンが見えないのだ。


「...」

「...」


俺達はその事があってから移動した。

それからそれこそ本当にパン屋デートを仕方なくし始める。

隠れ家的な、住宅街にある様な。

そんなパン屋さんだった。

俺は告白を聞いてから無言の状態でほのかをたまにチラ見していた。

どうするべきなのか。

ほのかにどう接するべきなのか分からない。


「あの」


そんな事を考えながらメロンパンとか見ているとほのかに声をかけられた。

俺はほのかを見る。

ほのかは「...ど、どんなパンを買いますか?」と聞いてくる。

そのほのかに「あ、えっとだな。メロンパンが美味しそうだなって」と説明する。

すると「じゃ、じゃあ私はイチゴメロンパンというのを。一緒に食べましょう」と言う。


「ほのか?」

「嫌ですか?」

「あ、いや。嫌じゃないけど」

「じゃあ良いですかよね?」


積極的だ。

そう考えながら俺はほのかを見る。

ほのかはニコッとしながらパンを購入した。

それから俺もメロンパンなどを購入。

イートインスペースに行った。



「初デートですね」

「まだ付き合ってないぞ。ほのか」

「良いんです。私、付き合った様な感じですから」

「あのな...」


俺は苦笑いを浮かべる。

それからほのかに向いた。

ほのかは嬉しそうにパンを齧っている。

そして口元にパンの破片をくっ付けつつ笑う。

そんなほのかを見ながら俺はまた苦笑した。

聞いてみる。


「ほのかはこの場所が好きなのか?」

「落ち着くんですよね。この場所。だから好きですよ」

「...そうなんだな」

「特に好きな人と一緒なら尚の事落ち着きます」


その言葉に俺は「...」となりつつ俯く。

それから「ほのか。俺はお前に応えれない可能性が高い。それでも俺に...決めるのか?」と聞いた。

するとほのかは頷いた。

そして俺を少しだけ赤くなって真っ直ぐに見据える。


「私の初恋は誰にも譲れませんので」

「...初恋を譲れない...か」

「はい。私、何度も言いますけどこれは初恋です。だから私は絶対にこの想いを他人に渡しません」

「...」


俺はズキッと心が痛む。

それから俺はほのかを見る。

ほのかを見ていると萌を思い出してしまう。

だけど。

違うんだ。


「...ほのか。...すまない。俺は...弱いんだ」

「...?」

「ほのか。俺は強い人間じゃない」


そして俺はまるで肥やしに片足を突っ込んだ様な感じで居るとほのかが「...その。お聞きしても良いですか」と聞いてきた。

俺は「?」を浮かべて顔を上げる。

するとほのかがいきなり俺の手を握ってきた。

俺は「?!」となる。

ほのかは「...私...その。和彦さん。貴方の悩み。私に打ち明けてくれませんか」と切に願う感じで見てくる。


「...このままじゃバーンアウトします。貴方は」

「俺は...」

「お願いです。和彦さん」


しかしこの悩みを話したところ...で。

どうなるのだろうか。

俺がタイムリープしてきた事をこの子に話してもどうしようもない。

だけど限界だったのだろうか。

俺はぽつぽつと話し始めた。


「そうだったんですね」


そうほのかは納得した様に俺を見る。

するとほのかは「じゃあ簡単です。私がお姉ちゃんを超えれば良いんですね?」と言い出した。

俺は「え?」となる。

ほのかは「和彦さんの隣に居たい私はお姉ちゃんを超えたら良いんですね?」と言ってくる。


「簡単ですよ。そんな前世なんてぶっ飛ばしてしまえば」

「...前世をぶっ飛ばすって...?」


ほのかは周りを見渡す。

それから監視カメラの位置などを確認した。

そしてほのかは俺に近付いて来る。

何をする気か。


そう思っているとほのかは俺の両頬に触れてきた。

そして何を思ったか顔を迫らせて俺に唇を合わせてきた。

キスをした。

公共の場にも関わらず。

ちょ。


「ここは陰になっています。誰にもバレません」

「ほ、ほのか...!?」

「私は決意しましたよ。私、和彦さんの前世も。...私の事も全部共有したい。そんなカップルになりたい」

「...!」


俺は見開く。

それから俺はほのかを見る。

するとほのかはニコッとする。

店員さんが通り過ぎて行く。

素早く俺から離れて対面に腰掛けるほのか。


「ふえへへ。公共の場でキスなんて」

「我慢してくれよ」

「出来ませんよ。...今キスしないと後悔しそうでした」

「...」

「和彦さん」


ほのかは顔を上げる。

それから俺をまっすぐに見てくる。

俺は「?」を浮かべて彼女を見ると彼女は「私、和彦さんの過去を理解しました。これから先は配慮をしながら貴方を落とします」とニコニコした。

配慮しながら落とすって。


「...ほのか。俺はそんな気分には...」

「どんなに私に言っても私は和彦さんから離れません。決めました」

「...!」

「私、和彦さんを救うって」


どうしてこの子はこんなにも萌と違うのだろうか。

俺はそんな事を考えながら複雑に考える。

するとそんなほのかは「さてさて。それじゃあどうしましょうか」と俺を見る。

何を計画しているのか分からない感じの目だ。

怖いなオイ。

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