第18話 仇
十年前
あの日も小雨が降っていた
私ユナ=ブライドは、買ってもらったまるでウェディングドレスのような純白のパーティードレスを着て父と母のいる部屋へと向かった
明日、屋敷では私の13歳の誕生日会が行われる
私は待ちきれなくてドレスを着て、優しい父と母にその姿を見せたかったのだ
「お父さん!お母さん!」
部屋に入るとむせ返るような血の匂いがした
父と母は血まみれで床に倒れている
「お父さん、お母さん」
私は泣きながら必死に揺するが、もう、すでに体は冷たくなっており動かない
「ユナ」
私は呼びかけられて頭を上げた
そこには血まみれのコートを着た銀髪の男が立っていた
私はその男の名前を知っていた
床に倒れている父の、親友であり、私に銃を教えてくれた師匠でもある
そして、私の本当の・・・
「デビッド=シン」
私は彼の名前を呼んだ
デビッド=シンはアダマンチウム製の黒いリボルバーを私に向けて構える
「ユナ、選びなさい。私と来るか、それとも・・・」
雷鳴が鳴り響く
そこから私がなにを答えたか忘れてしまった
ジル=ナカムラとタナトス=バーンが踏み込んで私は救助された
そして、私は組織の幹部だった父の後を継ぐように組織に加入
組織の暗殺者養成施設で射撃と暗殺技術を学びながら、GUNS N’ AIGISに選抜されるのを待った
全ては両親の仇を討つため、デビッド=シンを殺すために
空港で2人の部下に囲まれながら初老の男がジバンジイのコートを着て、小雨の中を歩いてくる
ナノマシンを使い、誰かと通信しているようである
「報告ありがとう
男は午後のブレイクタイムのような穏やかな表情で話している
この男にとってアルカディアの住人など、次の戦争のための生贄に過ぎない
私にはこの狂った男の考えが手に取るようにわかる
「ああ、
私は物陰から飛び出して、まず、痩せ身の初老の男の傘をさしている男の頭を撃ち抜いて射殺
銃を抜きながら彼を庇おうとした男の心臓に三発、銃弾を撃ち込むと邪魔がなくなったターゲットに向かって銃弾を放ってゆく
初老の男はニヤリと笑うと紙一重で銃弾をかわしてゆく
まるで、銃弾が男を避けているようである
「デビッド=シン!!」
私はその名を叫んだ
「無駄だよ。君に銃を教えたのは私だ。君に私は殺せない」
デビッド=シンはにこやかに微笑むと胸に手を当てて会釈をした
「ユナ=ブライド、いや。『黒い
「この十年、長かったぞ。貴様を殺すために私は全てを捧げてきた」
私は引き金に指をかける
「なぜ、父と母を殺した。お前にとっても親友だったあの二人を」
「友人だが、道が違えた。あくまで彼らは組織に忠を尽くし、何よりお前を戦争の担い手である私の手から守りたかったのだよ。しかし、皮肉なものだ。彼らは君を守ったのに、君は自ら進んで私と同じ道を歩んでいる。私と同じ血と硝煙の道を。血は水より濃いとはよくいったものだな」
「黙れ!」
ズドン
ハデスの銃口から発射された銃弾はシンの頬を掠める
奴は瞬きさえせず、穏やかな笑みだけを浮かべている
私はさらに引き金を引くが弾丸が発射されない
スライドストップが掛かり、銃が弾切れを伝える
「残弾数は体で覚えろと教えたはずだ。ユナ。仇を前に冷静さを失い過ぎだぞ」
「私をその名で呼ぶな!!『光を奪うもの《ペルセポネー》解放」
ーー『
銃が赤い輝きを放ち、変形してゆく
「素晴らしい。ならばこちらもカードを切ろう」
シンはコルトアナコンダをベースにした黒い銃を腰から抜いた
その銃にはTYPHONと刻まれている
この銃は私の前の先代No.ⅩⅢが所持した魔銃『
ゼウスさえも倒したギリシャ神話最強の怪物の名前である
「『万魔を産むもの《エキドナ》』解放」
ーー『
奴の銃も変形してゆく
紫の光を放つ大きく開かれた銃口はまるで魔竜の口だ
二つの魔銃から発射された、赤と紫のあらゆる物質を崩壊させるエネルギー弾は二人の間でぶつかり合う
全身の体力という体力がが銃に吸われてゆくが負けるわけにはいなない
ここで吸い尽くされても悔いはない
両親の仇を、デビッド=シンを殺せるならば、ここで倒れても本望だ
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