3月2日 Vlog

 えー、オンライン講義の練習も兼ねて、日記……ブイログっちゅうのかな。まあ、ひとりきりですが、受講者の方に語りかけるような口調でね。今日から残していきたいと思います。

 くだん、わかりますかね。妖怪の一種でね。人面の牛で、生まれてすぐに予言を伝えて、その後は三日も持たずに死ぬんだとか。ニンベンにウシと書いてクダンと読ませます。


 文政の頃の越中えっちゅう、だから1820年代末の富山県の辺りに現れて、天保の大飢饉を予言した、っていうのが最古の伝説でした。

 他にも色々あって、「20世紀初頭に南満州で日露戦争を予言した」とか「1940年頃の神戸で日本の敗戦を予言した」とか「94年に阪神淡路大震災を予言した」とか、一番新しいのだと、「2019年に横浜で疫病が流行ると予言した」って都市伝説もあります。いずれも、大きな災いの前には必ず現れるって話ですね。


 まあ、私も一応は民俗学が専攻ですから、信じてなくても色々調べていたし、それなりに知っていたワケです。


 それで、旅行も兼ねて東北のほうへフィールドワークに行ったときにですね。語り手の方のお孫さんがたまたまいらっしゃって、蔵の掃除から見つけたってんで、


「先生、これ読めますか?」


 って、巻子本かんすぼん、つまり巻物を手渡されたんです。


 読んでみたら、平安時代の初期の記録でね。

 貞観大噴火を予言した牛女が首を切り落とされて死んだとかいう、非常に興味深い文献だったんです。

 さっき言った通り、件に関連する記録はこれまで江戸時代後期のものが最古とされていたわけですから、もし本物だったらかなりの発見です。


 あんまり良く出来てたんでフェイクじゃないかとも思ったんですがね。


 その場で頂きたかったのですが、一応は家長の方のご同意が必要ということで、今は回答待ちです。


 思わぬ掘り出し物があって、嬉しい限りですね。


 本日の記録は、これまでとします。

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