14-2 シャッター

 あれから、彼は、車を走らせて、別の地下駐車場に何度か入って出た。多分これ、完全に尾行をくための行為なんだよ。それができたと思ったのか、自分の家らしき場所のガレージの前まで車を進めた。なんて手際なんだ。


 シャッターが開いて、車が進み、停まる。

 シャッターをリモコンで閉じると、彼は、車を降りてトランクを開けた。


 何かし始めたな。何だ?……うん? ナンバープレートを変えてる? 多分それだ。

 くそっ、それじゃあナンバーから特定することができないじゃん……。


「さて」

 運転席に戻ってきた彼は、僕のかばんを漁った。

 鞄の横のポケットから僕のスマホを取ると、彼は恐らくそれの電源をオフにして、助手席に捨てるように置いた。

 そうしたら、シャッターを開き、また車を進ませた。

 ガレージから出ていくと、今度はまたしばらく走って、別の家へ。


「よし、これはもう不要だ」

 唐突に彼がそう言った。


 あれ? どういう意味だ?


『これ』と言う時、彼はシャッターのリモコンを手に持っていた。

 じゃあ何か? そのシャッターのリモコンは、別の家のもの? だからって要らない? 別荘のだったりしたら不要なんて……


 ――そうか! 別の人のリモコン! いや、もしかしたら多分、全く別人の所有しているガレージのリモコンと同型のもの! そりゃ必要ではなくなるし、捨てていい……!


 くそっ、そこまでされたら誰もこの人の所に辿たどり着けないんじゃ!?

 せめてサクラの反応で探してもらえないと……。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 私は嘆きました。ここまで周到に大樹だいきくんを狙う者がいるとは思っていなかったからです。


 GPSはどうだろうかと鳥居とりいくんらが解析。大樹くんのスマホの最後の位置は、どこかの住宅街。

 そこへ右柳うりゅうくんに行かせました。


 数分後、右柳くんが現地から。「この家には大樹くんはいません。さきほど住人が同じ色の車で帰ってきましたが、仕事から帰宅した風で……、この場所を利用されたとしか……。住人は事件と無関係としか思えません」


 そんなまさか。

 ならばもしや、ナンバーも偽装?


 警察に問い合わせました。

 住所は、今右柳うりゅうくんがいる所のもの。つまりそこの住人が、ナンバープレート交換やGPS切断のタイミングも、丸々利用された、ということでしょうか。


 こうなるともう手立てがない? くっ……どうすれば。


 最も大樹くんと接していたのは――檀野だんのくんでしたか。私は彼に電話を掛けました。

「もしもし」

 彼の応答があってほっとしました。さて事情を話しましょう。


「大樹くんが誘拐されました」

「――! またですか!」

「今度のは手ごわいです、尾行も振り切られましたし、GPSからも辿たどれません。犯人は自分の場所を用意周到に隠しています。それになぜか大樹くんのサクラが反応機に映されないんです、それで辿ることもできません」

「そ、そんな……。でも、本部長に案が出せないなら」

「いいえ私も人間です、ミスはあります、だからこそ私はあなた方に頼ることもする、あなた方を信じている。――意見を聞かせてください。……たとえば町中の監視カメラ――」

「どれだけ手あたり次第なんですか、それは無茶というものでしょう」

「……困っています、何か意見をください」


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 ほかに手は……? 本部長に言われ、俺は考えた。

 手がなければ、大樹だいきくんは……。

 追跡……? 犯人の特定が無理なら、大樹くんを……。

 ん? 大樹くんを?


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 檀野だんのくんの声が聞こえました。「もしかしたら――」

「何か思い付いたんですか?」

 私はきっと気がいていました。話を切るような早さで促してしまったのです。

 檀野くんが改めて言ってくれます。

「本部長、実は――」

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