第12話:おみやげ
ソファにすわって、ソゾロさんと小さな声でおしゃべりしながら待っていると、チクタク、チクタク、という音が聞こえてきた。
いっしょに、コツコツコツ、と足音も。
「お待たせいたしました。こちら、ゴショモウの品でございます」
「やあ、ありがとう。イソガシさん」
ゴショモウって、なんだろう。わたしたちがほしい物ってことかな。
図書館のおくからもどってきたイソガシさんは、一つの箱を持っていた。イラストはなくて、平べったいふたがついている。
「ごかくにんください」
ソファの空いているところに箱を置くと、イソガシさんはふたを開けた。
入っていたのは、本とうちわだ。
「すごくきれい! これは、なんの本なの?」
「風を旅する、タンポポの本です。アサカゼさまは、風が大好きなので」
なるほど! それで、うちわも入っているんだ。
「風をふかせるのが好きなんだ。たまに、つむじ風を作って遊んでいるよ」
つむじ風!
たまに校庭や、公園の広い場所にできている、小さなたつまきみたいなもののことだ。
「あれ、わたしあんまり好きじゃない。目にゴミが入っちゃうんだよ」
「あはは。アサカゼさまのいたずらだね。きっとこれからは、このうちわで作るだろうね」
笑い事じゃないの、ソゾロさん。すごくいたいんだから。
ソゾロさんは、うちわを持ち上げてながめている。
全部がガラスみたいにすきとおっていて、緑とオレンジの線が、くねくねとかいてあった。
うーん……。
こんなにきれいなうちわで作るつむじ風なら、まあ、ゆるしちゃうかも?
「いかがですか?」
「いい品ばっかりだ。これなら、鏡も直してくれるだろうね」
「それはよかった」
うちわを箱の中にもどすと、イソガシさんはふたをしめる。
それから、きれいな赤いリボンを取り出した。スルスル箱に引っかけて、真ん中にリボンを結んでいく。
最後にちょっとだけ引っぱると、ふわっと広がって、かわいくなった。
「ありがとう! イソガシさん!」
「こちらこそ。新しい時計を、ありがとうございます」
イソガシさんは、リボンを結んだ箱を、わたしの手に置いてくれた。
「どうか、無事に帰ることができますように」
きりっとしているけれど、すごくやさしい声だ。
はじめはこわい人かと思ったけれど、とっても良い人なんだ。顔も本でできているのに、笑ったり、喜んだりしているのが、よく分かる。
「さあ、そろそろ行こうか」
「うん! イソガシさん、さようなら」
「さようなら。どうかお気をつけて」
せすじをピンとのばしたイソガシさんに手をふられながら、図書館の外に出る。
イソガシさんのむねにくっついている時計は、ちょうどぴったり、十二時になっていた。
「お母さんに、おこられちゃうなあ」
ぽつり。こぼれたわたしの言葉に、ソゾロさんがふり返る。
「どうかしたの、ミツキ?」
「ここに来る前、お母さんに、お昼には帰ってきてねって、言われていたの。でも、間に合わなさそう」
「うーん……おこられるのは、いやだよね。帰りたくない?」
「ううん、帰るよ。ずっと帰らないでいたら、心配かけちゃう。おそくなっても帰って、ただいまって、言わないと」
「そっかあ……」
約束を守れなかったのは、悪いことだけれど。おこられるのがいやだから帰らないのは、もっともっと悪いことだ。
たくさんおそくなったら、おまわりさんとか、お友達の家にも、連らくが行くかもしれない。そうしたら、もっとたくさんの人が心配しちゃうだろうから。
「それなら、急ごうか。公園はすぐ近くだけれど、ジャンプしてあげる」
「いいの? ありがとう、ソゾロさん」
「ミツキのためだからね。さあ、箱を落とさないようにして」
両手でプレゼントの箱を持ったわたしを、ソゾロさんがだっこする。
三回目のだっこだから、もうなれっこだ。
「三、二、一……ジャーンプ!」
でもやっぱり、ジャンプしたあと、目をつぶらないではいられなかった。
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