歴史パズルの再配置テスト

ちびまるフォイ

人類史のはじまり

「ここはどこだ!? 俺は部屋で寝ていたはず」


「ここは天界じゃ」


「な、なんだお前は!?」


「私はこの世界の神。実はお前に頼みたいことがあって呼んだのじゃ」


「まさか……異世界転生か!?」


「それは別の部署。お前さんには歴史を正しく並び替えてほしいのじゃ」


「歴史を並び替える……?」


「実は、ついさっき転んだ拍子に

 この国の歴史の時系列を壊してしまったのじゃ」


「神でもヒューマンエラーするんだ……」


「しかし神がいちいち下界の人間の些末な歴史など

 逐一把握しているわけではない。

 つーーわけで、お前さんに正しい順に並び替えてほしいのじゃ」


「あんたの尻拭いかよ! そんなの歴史の専門家にやらせればいいだろ!」


「ああいうのは自分の理想の歴史にしようとするからダメじゃ。

 だからお前さんのように邪念と教養がない一般人にしたのじゃ」


「そうか……。わかったよ、時系列を直せば現代に帰してくれるんだな?」


「もちろんじゃ。ほれこっち」


神が案内した先には床にパズルが散らばっていた。


「これは……」


「歴史パズルじゃ。わしが壊してしまったがのう」


「これを直せばいいんだな?」


「そうじゃ。ほれ、あそこの直線が見えるじゃろ?

 あれが時系列線と言ってな。並べた順に時代が進行する」


「まかせろ。パズルは得意だ!」


「ちなみに歴史は得意なのか?」


「わからねぇ!!」


「一番不安になる答え……」


こうして時系列線の上に散った歴史パズルを並べていく。

そう時間はかからなかった。


「できたぜ! これで歴史修正完了だ!!」


「おおご苦労さん。どれどれ……?」


神は時系列車を動かして、歴史パズル順に歴史を進行させる。

すぐに時系列列車はタイムパラドックス障害で、時系列線を脱線した。


「おい、全然ダメじゃないか!!」


「ええ!? どこがダメなんだよ!」


「なんで織田信長とペリーが同じ時代になっとるんじゃ!」


「ペリーが織田信長に銃を伝えたんじゃなかったっけ?」


「それに江戸幕府に聖徳太子はありえないじゃろ!!」


「聖徳太子って偉い人なんだし、何がおかしいんだ?」


神は頭を抱えた。


「もしかして人選ミスった……?」


神の手違いなんてのは創作での常連ではある。

その当事者が自分になろうとは。


「そんなに訂正するなら神が並び替えればいいじゃん!」


「神は基本、人間のおこないにはノータッチなんじゃよ!」


「じゃあお正月に毎日祈ってるのはなんなんだ!!」


「聞くだけ聞いとるだけじゃ!!」


「おさいせんドロボー!!!」


やいのやいの言いながら、

その後も人間による学習しないトライandエラーが続く。


「なんで戦国武将がマイナンバー申請しとるんじゃ!!」


「坂本龍馬が平安時代に蹴鞠はじめるのおかしいじゃろ!?」


「バブル崩壊で前方後円墳が作られて鎖国するわけあるかぁ!!」


そこまで人間の行いに興味のない神でもツッコミが止まらない。

かといって、再度人間を無差別に選び直すには神パワーが足りない。

この人間に託すしか無い。


「ぜえ……ぜえ……。お前、想像以上に歴史に疎すぎないか?」


「過去は振り返らないからな」


「先人への敬意がないと言い換えておくぞ。

 このままじゃ一向に歴史は正常に並び替えられん。

 もっと真剣にやってくれんか?」


「俺はいつでも真剣だ!!」


「なんども時系列車走らせることもできない。

 次が最後なんじゃ。もう失敗は許されない。

 次の歴史修正でこの国の歴史は決まる」


「え……!」


「頼む。ふたたび世界を元に戻すため、ちゃんと並び替えてくれ。

 神パワー!! こやつの潜在能力を引き出しておくれーー!!」


「うおおお!! なんだ!? き、記憶が!?」


「本来は禁止されておるが、お前さんの記憶力をブーストさせた。

 これであらゆる記憶が鮮明に思い出されるはずじゃ。

 思い出すのじゃ、本当の正しい歴史を!」


「あでも俺、歴史の授業常に寝ていたし。

 教科書は初日に捨てちゃったから、思い出してもわからないや」


「思った以上に歴史アンチだった!」


神はひっくり返って虫のように手足をばたつかせた。


「い、いや……でも……見える見えるぞ!!」


「なにがじゃ?」


「俺、実家のトイレの扉に歴史の表が貼ってあったんだ。それが見える!」


「おお! それじゃ歴史の順番も……!」


「これなら完璧だ!!」


これまでの心配になる手つきとはうって変わって。

その歴史の並び替えには迷いなかった。


「これがこうで、次にこっちがこう。そしてこれがこう……」


「おおお! みるみる歴史が完成していく!!」


「できた!! 歴史の時系列並び替え完了だ!!」


「よさそう!!」


神は万雷の拍手を送った。


「今度は自信あるぜ。さあ、矛盾がないか時系列車を動かしてくれ」


「おいまっとくれ。ピースが1つ余っとらんか?」


「え? ああ本当だ。これは実家の歴史表にはなかったな」


「どこにいれる歴史じゃ?」


「まあ最後に入れとくよ」


「では列車動かすぞ」


時系列車は時系列線にそって動き出す。

配置された歴史パズルを通過して最後まで走り切ることができた。


「おお完璧じゃ! 歴史矛盾ないようじゃ!

 これで歴史は書き換えられたぞ!!」


「やった!! これで帰れるんだな!」


「ご苦労さん。それじゃお前を現代に戻してやろう」


「もうコケるんじゃないぞ」

「大きなお世話じゃ」


神とお別れをして現代へと戻っていった。

過去の時系列も正しく並び替えられたので、大きな変化はない。


「あ、そうだ。最後の歴史ピース、なんだったんだろ」


最後に並び替えた歴史ピース。

よくわからなかったので時系列線では現代の後に配置した。

あの歴史はいったいどこのどういった歴史なのか気になった。


ネットで歴史をさがして答え合わせをする。

だがネットがつながらない。


「あれ? 電波悪い? おかしいなぁ?」


ふと顔を上げたときだった。

空からバカでかい隕石が地球に迫っているのが見えた。


「こ、こんな歴史知らない……」


隕石が地球にぶつかると、それまでの人間の文明は跡形もなく消し飛んだ。



そして、現代文明の消滅から数千年後。




「さて、今日もいっぱい土器つくるべか~~!!」




最後に並び替えられた歴史ピース「縄文時代」が幕を開けた。

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