第32話 祖父母と愛莉
ここから妹の扱いに賛否が別れる展開になります。
以前なろうに投稿していた際はかなり荒れました。
過激な描写が含まれます。
厳しい躾は虐待と変わらない等の考え方に生理的険悪感を持たれる方はこれ以降読まれる事を控える事をお勧めします。
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愛莉が祖父母が住む家に向うのは2年ぶり、親父が死んだ時ぶりだ、それ故に愛莉は何処か緊張している様に見える。
俺、秋菜さん、そしてその隣に愛莉が座るという順番だ。
俺の方を盗み見てソワソワしているが敢えてそれを無視する。
和解した訳ではない、俺がコイツを再び妹と認めるのは祖父母の与える所謂試練とも言える物に耐えられたらの話だ。
そうして俺達はほぼ無言の道中を経て再び立儀家本家へとやって来た。
「久しぶりだね愛莉…2年ぶりかねぇ」
「う…うん。」
愛莉は早速祖父母との対面を果たしていた。
俺と秋菜さんは後方に控えている。愛莉は何かあれば直ぐに俺に目線を送り助けてと訴えてくる。
だから敢えて後ろに控え祖父母と対面する形を強制した。
挨拶もそこそこに祖父が抑揚の無い声で愛莉にたずねる。
「愛莉まず最初に聞きたいのだが何故お父さんの墓参りにこなかった?お父さんの命日に何故2年も顔をみせなかった」
「それは……おっ…お母さんが行かなくていいって……言ったから……」
「琢磨は毎年来ていたぞ?お前はお母さんに行かなくても良いと言われたらお父さんの墓参りには行かなくても良いと…そう思ってるのか?」
「あ……あう…」
「はぁ…つまりお前はお父さんなど死んでしまえばどうでも良いと…死んでしまった者に興味は無いと?」
「ち、…ちが…」
「違うのか?」
「ち、…違う…愛莉はお父さん好きだったから…」
「では何故墓参りに来なかった?」
「うっ…うぅぅう…」
「泣くな!泣いて許される段階は遠に過ぎている…お前は一時の快楽に身を委ね、兄を虐げた餓鬼畜生だ。本来ならこうして顔を合わせ言葉を交わす事すら腹立たしい!」
「あぅぅぅあぅうぅ……。」
「本当なら嬲り殺しにしたい所だ!ならばどうしてこんな場を設けてると思う?」
「……あぅ……わ…わかりません…」
「本当にわからないか?」
「うぅ…」
「………。お前がお父さんの…立儀誠太の子供だからだ」
「お父さんの…?」
「ワシ等にとってお前は死んだ誠太の…ワシ等のたった1人の子供が残した宝物だからだ、どれだけ薄汚く汚れ穢れたとしてもそれは変わらない事実だ…。」
「…愛莉はお父さんの…」
「だがワシ等はお前に手を差し伸べる術を知らん!お前は余りにも穢れ汚れ過ぎている」
「うぅぅう……」
「これだけ言われてなんとか言うつもりはないのか…」
「あ………あぅだって……あっ…はぁはぁ…あっ…愛莉だって…愛莉だって…お兄ちゃんのこと…お父さんのこと…お母さんのこと…好きだった…でも皆が…皆が…そんな事より気持ち良い事だけしてればいいって…愛莉もそうなんだって…愛莉も…おかしいって思ってた…でも皆と気持ちいい事してれば解らないこと考えたくなかったから…」
「だからお父さんの墓参りに来なかったのか…」
「お父さんが死んで悲しかった…寂しかった…でも誰も愛莉を救ってくれない…愛莉を救ってくれない…だから愛莉はお兄ちゃんなんていらない…お父さんなんていらない…気持ちいい事だけしてたらいいってお父さんもお母さんもいうから…だから愛莉はそうしてたんだ!!知ったような事言うな!愛莉は…愛莉は…寂しかったんだ!!」
祖父は深く目をつぶり暫く黙った…感情的に自身の内心を吐露した愛莉はそんな祖父の態度に青ざめていた。
見捨てられる!捨てられる!
彼女の心内はそんな自身の不安で一杯だった。
「愛莉…お前はもう高校一年生だったな…その年でならある程度自我が確立されていてもおかしくないはずだ…なのにその脆弱で稚拙な精神はなんだ?」
「え…?」
「幼い…幼すぎる…余りにも幼稚に過ぎる。その欠如した幼い精神では周りに誑かされるのも道理か…」
「あなた…ではやはり…」
「ああ…元よりそのつもりだ…。愛莉よ…」
「は…はい…」
「お前は数カ月後に今の学校を辞めて別の学校に転校させる。」
「え?」
「手続き等色々とあるからな…それにワシ等もあの馬鹿共と腰を据えて話さなければならない事があるし良い機会だ。」
俺と秋菜さん、そして祖母はこの祖父の考えを前もって聞いていた。
あらかじめあの脆弱な心が問題なのは祖父も当たりをつけていた。
彼女に足りないのは学力でも体力でもましてや美貌でも無い。
それは心の強さだ。
彼女はその心の幼さ故周りの言葉に翻弄され自分の意思なく右に左に揺れ動くだけだった。
理想のお兄ちゃんなる依存体質などその最たるモノだろう。
誠太の子。
自分の孫。
自身の子が生み出した孫が発達障害を持っているならそれをただすのは間違いなく自分達の務め。
祖父はそう考えていた。
祖父が愛莉を転校させようと動いている学校は全寮制の学校だ。
学校とはいうがその見た目はお寺に近く非行に走った子供を収容する施設だ。
一度入れば3年間出ることは出来ず服は支給される物だけでオシャレ等に気を使う必要は一切ない。
愛莉のような流行り廃りに敏感な今時女子にはキツイことこの上無いだろう。
オマケに一度入学すればスマホは取り上げられ髪は男も女も丸坊主、丸刈りだ。
自身の髪を大変気にいっている愛莉にはこれも堪えるだろう。
朝は4時起きで座禅を5時から2時間。
その後は朝食でその後からようやく授業が始まるが私語は基本厳禁で破れば週に1日しかない休みの日に1日座禅。
授業が終われば掃除洗濯自己鍛錬と夕食、そして22時に睡眠が強制されるなんとも素敵なカリキュラムが組まれている。
勿論破れば座禅だ。
こんな施設ではあるが保護者側からの面談は許可されており子供の成長を逐次観察できるのも嬉しいポイントだ。
祖父はもし施設に愛莉をいれる事になれば毎日でも見に行きたいと考えていた。
毎週愛莉の成長過程を確認しにいくと以前は息巻いていた。
ちなみにこの施設、祖父の知人の住職が運営しており他の詐欺や違法の心配は一切無い。
だから安心して愛莉を任せられるのだ。
「来週からはそこでその甘えきった稚拙な精神を鍛え直し立派な人間になるように研鑽と努力を積め。」
「まっ……まってよ…そ…そんなの……無理だよ…あ…愛莉…そんな牢獄みたいな所で3年間も…」
「たかが3年だ、3年間我慢すればそれでいい。」
「む…無理だよ…そんなの…無理だよぉ…」
「ならば中岸に戻るか?お前も馬鹿でないなら中岸に戻る事がどれ程に愚かしい選択かわかっているはずだ……」
「愛莉は……愛莉は…」
愛莉は寺への転校を決意した。
スマホを奪われ…服を奪われ…髪を奪われ…自由を奪われそれでも愛莉は施設への転校を選択した。
正直琢磨はこの結果を意外に思っていた。
彼女は自己保身の権化だ。
後先など考えず目先の自由に縋り付く化け物
それが愛莉と言う人間だった。
だからスマホも服も髪も自由も手放して地獄に落ちる事を選択するなんて思っていなかったのだ。
しかしそうなるとしても、そうなると解っていても愛莉は寺への転校を選んだ。
恐らくそれも自己保身なのだろう。
彼女は理解している。
このまま中岸家に戻れば待っているのは本当の地獄。
義父に義兄に義弟に搾取される未来。
母は役に立たないだろう。
そして外の世界には義兄によって世界にばら撒かれた自分のあられも無い姿を映し出した映像の数々。
少なくとも3年間はその恐怖に脅かされる事はない。
何せ寺の中は3年間外の世界から断絶されているのだから。
そして愛莉は転校の日を迎えた。
元の学校生活との別れに未練は無かった。
自分は既にアイドルでも天使でもなく男のアレを嬉々としてしゃぶる性欲過多のラブドールちゃんとして蔑まされる立場になったのだから。
皆がちやほやしてくれた自分はもう何処にもいない。
愛莉ちゃんなら頼んだら一発やらしてくれんじゃね?
俺頼もうかな?
あのデカチチ触らしてもらえっかな?
不潔…きもっ!
私前からあんなのだって思ってたのよね!
媚びてて前からキモいって思ってたのよね、
うわっこっち見た、やめてよ〜ビッチがうつる〜
ここから逃げ出せるなら何処だっていい…
早く来週になれ!
愛莉はそんな甘ったれた考えをしていたが正直舐めていた。
もう一度言おう…彼女は舐めていた。
更生施設として機能する寺のシステムは徹底して愛莉を攻め立てた。
確かに自分をイジメる脅威はない。
しかしここには何もかも無かった。
「あぁ愛莉の髪が〜あぁ…あ……あぁあ…」
パラパラと髪が落ちていく。
黒がかった茶色のキレイな髪。
お気に入りだった。
ツインテールにするために毎日ケアに時間をかけていた自慢の髪だった。
愛莉の大切な自慢の髪が全て無くなり丸坊主にされた。
「これが愛莉の服…」
服はどれも同じ真っ白な作務衣だ。
オシャレなんてする要素もない。
誰かの使い回しのヨレヨレの服だった。
今は真冬だというのにこんな薄着で3年間過ごさなければいけないのかと問いただせば規則だからと一蹴された。
そしてご飯も味気ない。
コメと身の無いシワシワの魚と味噌汁
お腹はそこそこ満たされるが食べた気になれなかった。
そして座禅だ。
それが兎に角キツイ。
背を正し不動で真っ直ぐな姿勢で座る。
目が痒くても頭が痒くても背中が痒くても足が痺れても一切動く事を許されない。
足が痛んで少しでも姿勢を崩せば
「かあっっっつっ!!!」
バシィぃぃぃン!!!
「痛うぃぅぃぃい!!?」
「かあぁっっ!!!」
バシィぃぃーぃぃ!!
「いだぁぁああ!!?」
「があぁっっっっつ!!!」
バシぃィぃぃぃぃんん!!
「あぎゃあぁぁあ!?」
目を掻きたくて叩かれた
肩を動かして叩かれた
まぶたが重くなったら叩かれた
足を動かしたら叩かれた
叩かれた
叩かれた
叩かれた
叩かれた……。
叩かれた。
朝は四時に叩き起こされ座禅。
この日も叩かれた
なんか分からないけど叩かれた。
味気ない食事に楽しい事なんて何も無い日々。
回りには同じハゲ頭の子たち。
ハゲだが調子に乗ってそうな奴が私に声をかけて来たけど直ぐに連れて行かれた。
何処行ったのかと思えば叩かれていた。
バシィぃぃぃん!!
いい音がしていた。
私語は厳禁
勉学において私語は不要。
ゆるされるのは5分程度の休憩時間の時のみ。
それ以外での私語は即座禅行きだ。
授業が終われば次は学校…ここでは寺子屋というらしいその寺子屋の掃除だ。
掃除機はない。
全てホウキと雑巾で直接だ。
それが終われば個人修行と言って境内の走り込みやスクワットや腹筋をやらされる。
健全な精神は健やかな体に宿る。
基礎の体力作りと称して毎日これが繰り返される。
体中筋肉痛でボロボロに…なる
真冬の中薄着なのに汗をいっぱいかいててヘトヘトになる。
そしてここでの生活は全て自分でやる。
掃除も洗濯も全て自分。
食事だけはお寺から出して貰えるけどこんな味気ないのなら自分で味つけしたいけどそれは無理だ。
健全な体に不要な味付けは毒になるらしいから。
そして22時。
夜になれば寝る事を強要される。
眠く無くても寝ないといけない。
無駄に起きていたら皆大好き座禅の時間だ。
まぁ気がついたら疲れ果てていて爆睡していた。
そして4時に叩き起こされる。
そして座禅だ。
「かあぁぁつっ!!!」
バシィぃぃぃン!!!
「ひぎぃぅぃぃい!!?」
「かあぁああっっ!!!」
バシィぃぃーぃぃ!!
「いだあぁぁああ!!?」
「があぁっっっっつ!!!」
バシぃィぃぃぃぃんん!!
「ひあぎゃあぁぁあ!?」
今日も叩かれる
背中をかきたくても叩かれた
足を動かして叩かれた
首を動かしたら叩かれた
お尻の位置を調整したら叩かれた
叩かれた
叩かれた
叩かれた
叩かれた……。
叩かれた。
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