第20話:隼の残滓/後編
ネストの食堂は、いつもより静かだった
ファルシアの死から数日
皆、それぞれのやり方で悲しみを乗り越えようとしていた
ブラインは、シェパーズパイを黙々と口に運んでいた
その隣に、リズが座る
「ブライン、あんた、ファルシアのこと、もっと知りたいんだろ」
リズの言葉に、ブラインは顔を上げた
「ああ」
ブラインは、短く答えた
「ファルシアは、あたしにとって、兄貴みたいなもんだった」
リズは、遠い目をして語り始めた
「あたしがネストに来たばかりの頃、あたしは誰にも心を開かなかった
組織にいた頃の経験が、あたしをそうさせてた
でも、ファルシアは、あたしを信じてくれた」
リズは、組織にいた頃、実験体として扱われていた
人間としての
そんな中で、彼女は心を閉ざし、誰も信用しなくなった
「ファルシアは、あたしに、人間としての扱いをしてくれた
あたしの話を聞いてくれた
あたしの痛みを、理解しようとしてくれた」
リズの言葉は、感情がこもっていた
彼女にとって、ファルシアは、暗闇の中で差し込んだ光のような存在だったのだろう
「あいつは、いつも、あたしたちの未来を考えてた
この
リズは、シェパーズパイを一口食べ、続けた
「あたしは、あいつの夢を、馬鹿げてるって思ってた
こんな世界で、緑を育てるなんて、無理だって
でも、あいつは、諦めなかった」
リズの言葉は、ブラインの心に響いた
ファルシアの情熱は、多くの人々に影響を与えていたのだ
「あいつは、よく、夜中にこっそり出かけてた」
リズは、声を潜めて言った
「あたしは、最初は、何してるのか分からなかった
でも、ある日、あたしは、あいつの後をつけた」
リズは、ファルシアが、ネストから少し離れた場所にある、秘密の場所へ向かっているのを見た
そこには、小さな小屋があり、中には、見たことのない女性がいた
「その女は、ファルシアと、よく話してた
緑豊かな大地を取り戻すための『何か』について、熱心に話し合ってた」
リズは、その女性の容姿を詳しく語った
長い黒髪、透き通るような白い肌、そして、どこか
ブラインは、リズの話を聞きながら、ある人物を思い浮かべていた
それは、彼の姉、ウェナだった
「その女は、どこか、見覚えがあるような気がした」
リズの言葉に、ブラインはハッとした
「……姉さん」
ブラインは、小さく息を呑んだ
「あたしは、その女の名前は知らない
でも、ファルシアは、その女といる時が、一番楽しそうだった」
リズは、寂しそうに言った
「ファルシアは、その女と、この世界に緑を取り戻す夢を語り合ってたんだ」
ブラインは、リズの話を聞き終え、自分のロケットを握りしめた
ロケットの中には、ウェナの写真が入っている
ブラインの心の中で、様々な感情が
ファルシアの死、ウェナの行方、そして、この世界の未来
ブラインは、ロケットを強く握りしめた
ウェナの
ブラインは、立ち上がった
彼の目には、新たな決意が
「俺は、ファルシアの夢を継ぐ
そして、姉さんの行方を探す」
ブラインは、食堂を出て、夜空を見上げた
満月が、荒廃した世界を静かに照らしている
その光の下で、ブラインは、ロケットを胸に抱きしめた
彼の心の中には、ファルシアの想いが、確かに
そして、ブラインは、新たな一歩を踏み出すのだった
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