僕の愛玩具はなんでも出来るやつだった

アオネコ

第1章 気付いたら異世界に

第1話 プロローグ

 粘性の摩擦音が部屋に木霊する。今日も今日とて高校から帰るなり大切に仕舞ってあったゲル状の筒を取り出し性に耽っている。この部屋の主、蒼井京介は高校1年生だった。愛用のそれを使用しては日々の鬱憤を晴らしたいた。


「ふ~、今日もすっきりした。ありがとうラムちゃん、チュ♡」


 キレイにしたそれを愛おしそうに愛でる情景は誰にも見せられない。ましてや愛玩具に名前を付けているなど、友達にも家族にも誰にも知られてはならないし、そもそもオモチャをこのように愛でていることは彼だけの秘密である。誰にも知られてはいけない愛玩具を仕舞おうと腰を上げた瞬間、


「うっ、あがぁ」


 激しい頭痛が彼を襲う。頭を押さえのたうち回る。手にはひんやりとした柔らかい感触もあるがそれすらも忘れる程の痛みで意識が薄らいでいく。


(な、、あ、頭が割れ..る)


 そうして彼は愛玩具と共に意識を失った。いつの間にか京介の部屋には白い少女が佇んでおり、倒れた京介を悲しそうにただ見つめていた。



---------------------



ピチャン… ピチャン…


(うっ)


 冷たい、濡れぼそった感触が頭を伝う。


「う~ん、痛たたた。」


 体がガチガチに痛む、固く冷たい感触を頭や背中に感じる。目が冴えてきたが薄暗い。床に寝ている様だが明らかに自分の部屋や家の中では無い。


「はぁ? 何だここは?」

(確か、凄い痛みがあってそのまま気を失ったのか。それにしても一体ここは?)


 見回してみても、京介の部屋ではないことは理解した。どう見ても薄暗い洞窟のような場所。何時間寝かされていたか分からないが体は冷え全身が痛む。それに、


「なんで裸なんだ⁉」


 気を失う前まで制服を着ていたはずだ。

(もちろん下着も、ズボンも事が終わってからしっかり履いたはず)


「おーい、誰かー、居ませんかー?」

      (   お~い、誰か~、居ませんか~)


 返ってくるのは木霊する自分の声だけ。


「本当に、一体何があったんだ?誰も居ないし、どこなんだよここは!?」


 自問自答しても答えは得られず。ただ、木霊する音が洞窟が奥深くまで続いてるように思えるだけであった。



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「うー、寒い。取り合えず何か着るものを探さないと」


 周囲を見回すがが落ちているのは石や小さな枝程度。枝もか細くこれでは火も起こせそうにない。


「薄暗いけど何とか見えるな。うー、何もないなぁ」


 洞窟内は日の光はないがぼんやりと明るくなっており、周囲を探索できる程度は可能だ。頭もしっかりしてきて体も動かせる位にはなってきたが、これと言って目ぼしいものは落ちてはいない。


「はぁー、どうしたものかな…ん?あれは…。えっ、ラ、ラムちゃん!!!?」


 周囲を見渡しながら近くの岩陰に目を落とすと、そう、そこにプニョりと横たわって居たのは、京介が愛してやまないゲル状の筒。


「ラムちゃん~、君もこんな寒い場所に横たわって、寒かったろう。怪我は無い?」

「あー、このスベスベで柔らかい感触、間違いなく僕のラムちゃんだ」

「はぁー、よしよし、今日も白くて可愛いね~♡」


 このような事態でも、愛しき愛玩具を愛でる彼は、どこかネジでも外れて居るのだろうか。孤独から抜け出した安心感からか、彼は寒さを忘れ嬉しそうに舞い上がっている。


 しかし、小踊りしている彼はまだ気づいて居ない。薄暗い洞窟の奥、彼が呼びかけた声に反応する矮小で醜い、残忍な生物の影。彼の声や音に連れられ、ゆっくりとすぐ傍まで近づいていたそれは、


『ぐギギギギギ』

「え?」


バコン!!!

「ゔっが!!?」


突然、背後から背中に重たい衝撃と疼痛が走る。前のめりに倒れ、何とか後ろを振り向くと、そこにはニタ~とギザギザの歯をむき出し不気味な笑みを浮かべる黄色い目玉の化け物。体は緑っぽく禿げ頭に尖った耳や鼻、餓鬼のような風貌、それはまるで、


『ギャギャギャギャぁ』

「ゴブリン!??」


そう、それはゲームや小説でお馴染みのそれのようであった。それは倒れた僕に再び棒切れを叩きつけるように大きく腕を振りかぶりながら近づいてくる。


『ギャア』

(何⁉、なんでこんなのが。さっきまでは何も…)


 何とかその場から離れようよ藻掻くが背中の一撃で思うように体が動かない。

迫りくる悪鬼の恐怖、寒さが、彼の行動を妨げる。体を奮い立たせ動くがそれよりも素早くゴブリンの攻撃が彼を襲う。


(はぁっ、はっ、早く逃げなきゃ…?!)

『ギャギャ』


ザスっ!!!


「っんあ˝ぁ」

 

 運よく背後への一撃は避けたが片足に掠ってしまった。深くはないようだが出血しているし、こんなに痛いのは生まれて初めてだ。それでも体を引きずりながら逃げる彼をそいつはニタニタと笑いながら近づく。


(何か、何かないのか?)


 逃げながら必死に周りをみても落ちているのは石ばかり。小石を拾い向き直って投げつけるが奴には大した意味を為さなかった。


(くそ、なんでこんな事に。目が覚めてラムちゃんと再会出来たけど、そのラムちゃんもどこかに落としちゃったし、せめてラムちゃんだけでも無事で、あ~最後にもっと愛して上げたかった…)

『ギャー、ギャ』


 とうとう壁際まで追い詰められ、逃げる場所を失った彼は目を瞑り走馬灯のようにラムちゃんとの思い出に浸っていた。残忍な笑みを浮かべゴブリンが両手で棒切れを叩きつけようと振りかぶり、彼の頭に狙いをつけ力強く振る、


『ギャギャギャ・・・・ァギャ⁉』


ドサ……





 もう駄目だと顔を食いしばりその時を待つが、一向に何も起きない。何かが倒れるような音以外は水の滴り落ちる音が小さく聞こえるだけ。


「うん?」


ゆっくり目を開けてみたが、迫り来たゴブリンは腹ばいに倒れている。


「一体どうしたんだ?」


京介は恐る恐るゴブリンを観察してみた。後頭部から浅黒い液体を垂れ流し黄色く大きな目は最早明るさを失い、息の根を止めているようだった。


「はは、し、死んでるのか?」

「でもどうやって...。ううん?」


倒れたゴブリンの後ろには何も居ない。ただ、白いラムちゃんが落ちているばかり。


「ラムちゃん…‼」

「はぁ~ラムちゃん無事で良かった。もしやられてたら死んでも死にきれないよ~」


 愛する愛玩具を見つけ歓喜を上げた。京介は何とか体を動かし、ラムちゃんのもとに辿りつき、抱きかかえる。抱き抱えるラムちゃんを頬ずりしつつ喜んでいると。ぷるぷるっとした感触のあと全体がグニュグニュと蠢いているように見える。


「え?」


 よく見れば白く筒状であったはずの美ボディが徐々に形を変えて液状のプルプルに変態しているではないか。


「ラムちゃん⁉」


ピクっ


 京介の声に反応しラムちゃんだった物体Xは首を持ち上げるようにキョロキョロと京介を見つめ返す。


(ラムちゃん⁉ラムちゃんなの?それともさっきのゴブリンみたいに怪物なの?)

(もしかしてゴブリンが居るんだから、スライムとかそんなのも居たりして...)


 水面から鎌首を持ち上げた蛇の如く、色白の物体は京谷の顔に近づくと嬉しそうにスリスリと擦り付けてくるではないか。


「や、 やめろって。擽ったいよ。」


 ひんやりとした感触にプルプルの張り、柔らかくも弾力のあるそれは長年付き添ったラムちゃんそのものであった。


 京介の声に体をプルプル震わせてラムちゃん自身も嬉しそうにしているのだった。



〜~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

続きはまた明日。

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