第2話 着る、食う…寝る?
一人、白い筒状の愛玩具、相棒ラムちゃんと性に耽っていた高校生の京介。彼は突然意識を失い見知らぬ場所で目を覚ます。彼はまだここが何処だか、なぜここに来たかを理解していない。ここは彼の勝手知ったる地球ではない。そもそも宇宙のどこだかも分からない。
彼が知りえたことは、どこかの洞窟にいること。ゴブリンに似た醜悪な生物がいること。そして、愛用の愛玩具ラムちゃんがプルプルっと可愛いことだけ。
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「はぁ~~~、今日もラムちゃんは柔やわでプニプニで最高だよ」
決して性に耽っている訳ではない。先ほどまで死の間際に立たせられ、そんな元気は毛頭ない。しかし、最愛の相棒が一人の寂しさを癒してくれる。
それに、
プルプルン、プルルン♬
ラムちゃんもスライムのような造形に変態し、一緒に喜んでくれているようだ。まるで猫のように京介の頬を擦り上げている。
「それにしても、もしかしてあいつをやったのは ラムちゃんなのかい?」
あいつとは、先ほどまで京介を追い詰めていたゴブリンである。今は頭から血を流し、もうすでに事切れている。ラムちゃんに問いただすも、プルプルするだけで確かなことは分からない。
「うーん、まあ、助かったみたいだし良いか。それよりも流石に何か着ないと」
目を覚ましてから衣服は来ておらず。生まれたままの姿である。
京介は小さいころから運動神経がよく、バスケットボールをしていた。中学時代もバスケ部に所属しレギュラーを務めていた。高校に入ってからもバスケを続けており、日々勉強と運動に明け暮れていた。体は少し小柄であるが持ち前の瞬発力、持久力を活かしたプレースタイルが得意であった。そのため体は引き締まっており、無駄なお肉はほとんど無い。
「うー、寒ー。早く服を着たいけど…。あれしかないかぁ...うげぇ、背に腹はかえられないけど、これ?汚れてるし、臭いも…」
「はぁ、しかしなぁ、裸でいるのも怖いし、さっき怪我したところも心配だし」
そこにあるのは倒れたゴブリンの着ている布切れ。お世辞にもキレイとは言えないそれは悪臭を放っており、元々の衛生観からは到底着れるものではなかった。
京介は先の戦闘にて背中、下腿あたりに怪我を負っている。幸いゴブリンの持っていた棒切れが柔らかかったのか、暫くしたら動ける位には回復している。出血も止まっており、自分の回復力に驚くばかりだ。
「こんなのでも着るしかないか」
ゴブリンの死体から剥ぎ取った布の服を持ち上げ、嫌そうにしていると、横からラムちゃんが擦り寄ってきた。
「あ、こら汚れるから駄目だって」
言うや否や、ラムちゃんは京介の持った服を持ち上げた鎌首で掻っ攫い次の瞬間、
ゴクン。
大きく拡がった体で服を丸のみしてしまったではないか。
「え⁉ちょっと、ちょっと。ダメだってバッチイよ。早く吐き出しなさい」
しかし、ラムちゃんは白く透明な体をプルプルさせるだけで、一向に吐き出す素振りは無い。京介がお腹でも壊したら大変だと、手を突っ込んでみるが、
「うわぁ、柔やわで気持ちいい…♡」
恍惚な表情を浮かべラムちゃんのスライムボディを堪能している京介。彼のそんな妨害?を受けながらもラムちゃんは取り込んだ衣服を体の中でグニグニ押しつぶし捻り、搾り上げ、それはまるで、全自動オ…
「洗濯機⁉」
…そう、洗濯機のようであった。
暫くして、ラムちゃんのプルプルが収まり、ペッ、と真っ白で清潔な服が現れた。
取り込む前は至る所解れてボロだった衣服が、ほとんど新品の服のようであった。
「うわ、真っ白。臭いも全く無いし肌触りも最高だよ。ありがとうラムちゃん」
京介の感謝に全身プルプルさせて喜んでいるようだ。(表情は分からいけど、僕の声はちゃんと聞こえているみたいだな)
京介は薄暗い洞窟の中で一つの希望を見つけたように晴れやかな気持ちでいっぱいであった。最愛の相棒がスライムのように変化してしまったが、それもで愛すべき存在であることに変わりなかった。
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ぐーーーぅ
怪物では無い、京介の腹の虫だ。
「あー、腹減った~。」
目覚めてから数時間、死の淵から何とか着衣を手に入れた。ラムちゃんという可愛らしい相棒も居る。
しかし、腹は減る。
ぐーーーーーう
洞窟内を彷徨っているが目ぼしいものは殆どない。ゴブリンから奪った服も上半身から太もも辺りまでを何とか隠せる程度。植物の根らしきもので腰を結って何とか着ているがほぼ素っ裸である。
しかし、服のお陰か寒さは大分マシになった。
ぐーーーーーーーーーう。
もう鳴りやまない。
思えば目が覚める前、学校から帰ってきて速攻ラムちゃんと戯れたため、おやつも何も食べていない。最後の晩餐は母親の作った昼飯の弁当だった。
「卵焼き美味しかったなぁ」
そんなことを考えながら薄暗い洞窟内をうろついている。初めはゴブリンに見つかるかもと慎重に行動していたが、疲労、空腹、脱水によって正常な判断が乏しくなっている。
「水~、取り合えず水だけでも…」
人間1-2週間は水だけでも生きていられると見たことがあるが、今は綺麗な水すらない。洞窟の中なので湿っぽく所々に水溜まりがあるが、
「俺、こんな水飲めないよ~」
と、清潔な環境で生きてきた京介では到底泥水は啜れない。
「ううっ、砂漠とかではこんな水でも貴重何だろうけど、無理、絶対に無理~」
そんな主人の様子を見ていたラムちゃんは、ピチョンと体を泥水に沈めると、スゾゾゾゾっと水分を吸収し茶褐色ボディに変化した。水分を含み大きくなった体がグルングルンと回転し徐々に体の中心に茶色く濁った部分が集まりだす。
「ラムちゃん?」
ペッ、と集まった濁りが吐き出されると。ちょっと大きくなった体で京介の腕の中に納まる。そして鎌首を顔の上まで持ち上げると、ぽたぽたっと水滴が落ちてきた。
「わ、わ、ちょ、ちょっと冷たいって。あ、でも水?」
ラムちゃんから水を与えられそれを喉を鳴らしてゴクゴクっと飲み上げる。
「ぷはぁ、生き返る~。美味しいよラムちゃん」
プルプルプル♪
プルプルと嬉しそうなラムちゃんのお陰で、何とか水分を摂取できた京介は空腹を満たすために探索を続けるのであった。心なしか疲れも回復し、再び足取り軽く洞窟を探索するのであった。
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「やっと、やっと見つけた‼」
それは赤く小ぶりな果物だった。なぜ洞窟内に果物が生い茂っているのか、周囲は他と比べ非常に明るい。その先を辿ると遥か天井高くから明かりが照っている。
「あれは、日の光か?あんなに高い天井じゃ、とても登れそうにないな」
久しぶりに浴びた日の光はとっても暖かく心地の良いものだった。その僅かな光から栄養を得るがごとく地面に生えたそれは力ずよく生い茂っていた。
「しかし、これ食べれるのか?」
京介は美味しそうに実った赤い実を見つめ考える。これまで見たこともないような果物だ。以前見たサバイバルガイドにも、˝迂闊に野生の果物は食べるな、毒がある可能性が高い˝などと書かれていた。
「うーん。でも美味しそうだし。腹が減っては戦も出来ぬって言うしな」
「あ!そうだ、ラムちゃんお願いがあるんだけど。」
京介はそういうとラムちゃんに赤い実を一つ見せながら
「これ僕が食べてもいいか分かるかい?」
ラムちゃんは鎌首で実を摘まむとパクンっと体に取り込んだ。シュワシュワシュワ~っと赤い実が溶ける様になくなり、種だけになっり吐き出された。
「どう?」
京介は恐る恐る、期待半分といった感じで様子を伺っている。すると、ラムちゃんの体の中に小さな♡マークが出現した。
「ハート?」
そのハートは大小に収縮を繰り返す。
「食べても良いってこと?」
京介はラムちゃんのハートを見つめつつ、恐る恐る赤い実を口にした。
「あっまーい♡」
「甘酸っぱくて美味しいよ。」
京介はその甘さに感動しつつバクバクと実を食べ始めた。
「ラムちゃんももっと食べる?」
そう言ってラムちゃんにも実を分けながら食事の有難みを噛みしめていた。
〜~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
続きはまた明日。
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