キミとボクの星座

菅原 高知

キミとボクの星座

「ヒトは死んだらどうなるの?」


ボクの子供らしい残酷な疑問


『人は死んだら星になるの』


だけど アノ子は笑いながら教えてくれた


「物知りだね」って感心すると


『お姉さんだからねっ』ってちょっと、いやかなり嬉しそうなキミ


一歳しか変わらないけど 


アノ子にとって ボクのお姉さんなのは嬉しいことらしい


パジャマの隙間から見える 細い手首や首筋を見ながら そんな風に思った


真っ白なベッドの上 ソコがアノ子の世界の全てだった


ボクが外で色んなものを追いかけることがこの世の全てみたいに走り回っている時も


アノ子はベッドの上にいた


アノ子はそこでいつも本を読んでいた


だから 狭い世界で生きるアノ子は


ボクよりもずっと多く 世界の事を知っていた

  



ある日 呼び出された


キミがいなくなるって


その日 ボクは外で蝉を追いかけていた


小さな蝉を 小さな籠に閉じ込めてご満悦

 

急いで 走った ずっと走っていたけど 

もっと走った


キミのところに着くと ボク達は二人になった


「………」


『きてくれたんだ』


何も言えないでいるボクに気が付いて 


キミが棒切れみたいになった手を上げようとした


でも 上手くいかずに落ちる


ボクは 急いでキミの手を取った


落ちた衝撃で キミの手が壊れてしまいそうだったから


ソコから全部 壊れてしまいそうだったから


『ふふ 前に教えてあげたでしょ』


そんなボクを見てキミは優しく微笑んだ


『私は星になるの 夜になれば必ず会える

今よりもずっとたくさんキミを見ていられる だから――泣かないで』


気が付かなかった


いつの間にか ボクの目から大粒の涙がこぼれ落ちる キミの手を濡らしていた


『アナタの涙が枯れちゃわないように ずっと見ててあげるから アナタも私を見つけてね』


「――うんっ」






アレから数年後


今夜も僕は夜空を見上げる


キミは星になれたのかな?


なれたのならどんな星だろう?


僕の前ではお姉さんぶっていたけど

他の人の前では人見知りなキミのことだから


きっと二等星や三等星あたりかな?


僕も死んだら星になれるかな?


なれるのなら僕は一等星になりたい


ソレならどんなに離れていても見つけてくれるでしょ


本当はスピカみたいに近くにいたいけど


宇宙から見たら距離なんて無いのと一緒だもんね


それで みんなに僕等を見つけてもらうんだ


それで 指で結んでもらうんだ


『ホラ、アレがボク等の星座だよって』








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キミとボクの星座 菅原 高知 @inging20230930

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