払えないので働きます!
「弁護料って……しかもなんでわたしだけ?」
「なんでって、実質無罪になったのはお前一人だ。そしてそれを導きだしたのが、俺の弁護だからだよ」
「ち、ちなみにそれっていくらぐらい?」
そう問いかけるわたしに、ずいっと空木君は指を2本立ててわたしの目の前に突き出してきた。
「二万円」
にっ、二万円!? 1ヶ月お風呂掃除して500円なうちのルールじゃ、そんな金額大きすぎて払えないよ! それに、なんでわたしだけなの?
「他の奴らは、一日分の時間を奪われるって聞いてたろ。考えてもみろ、ガキだけで裏山に言ったとクラスメイトが知ってる中で、丸一日も姿を消してたらどうなる?」
「そんなの、警察に言ったりして捜索されるに決まってるじゃない!」
「だろ? アイツらはその一日分のお騒がせの話題や大人たちからのお説教、あとスマホは没収だから、それが代償として支払われることがもう決まってるんだよ」
「えっ、じゃあわたしも」そういうわたしの意見は「無理」の一言でバッサリと却下された。
「お前はクロカブリヌシ様のおかげで、立入りをしてないことになってそのまま家に返されることが決まってんだよ。他の奴らに比べてずいぶんいいだろ」
「でも、無罪なのにお金が必要って……」
「じゃあ俺の口添えがなくても、帰れたと思うか?」
うーん。そりゃお仕事でわたしの証拠を出してくれて、助けてくれたんだから当然なのかもしれないけど……どうしよう、困ったなぁ。
その時だ。
「え、何きみ仕事しなきゃいけない感じ?」
急に全身真っ黒な着物? (平安時代の時代劇とかで男の人が来てるような服)を着た男の人が、ニコニコとわたしに声をかけてきた。
「仕事っていうか、えっと……」
「あれでしょ。きみ、さっきの法廷でさ、一人だけ
男の人はその目がわからないくらいににこーっとした笑顔で、わたしの背の高さまでかがんでくれた。そのまま「んじゃさ、ウチで働かない?」と続けられる。
「えっ、でもわたし働いたことないし、ここって」
「んとねー、生きてる人間がきても大丈夫だよ。そろそろ五官王さまのとこにも、タカムラとかセイメイみたいなのがいてくれるといいなーって思ってたんだ」
えっ? 全然わからない。なんの話だろう? そもそもわたしは小学6年生だよ、お仕事とか、学校のバザーや文化祭の出店くらいしかやったことない。
「大丈夫だいじょうぶ、未経験者歓迎! 罪がない人大歓迎!
「……並べた単語がうさんくささ全開じゃないか」
あきれたように呟く空木さんの横でわたしは「あの〜」と小さく声を出した。
「五官王さまって、さっきの裁判長さんですよね?」
「ん? そうそう」
「……怖いです」
「あちゃ〜、そっかぁ。まぁ地獄の裁判なんて、裁判長はウソや悪いことを暴く人たちだからね。威圧的に見えるしこわいかぁ〜」
当たり前じゃない。全然笑わないし、声も大きいし、すごく怖くてなかなか顔が見れなかったくらいなんだから。
でもさ、と男の人はにっこり笑いながらわたしの方を見て小首をかしげる。
「今はどうにかして、そこの空木センセに弁護料払わなきゃなんでしょ?」
「うっ……」
「子どもでもオッケー、仕事は無いなんてこともないし、悪くないと思うけど」
うう〜っどうしていいかわからないよっ。地獄のお手伝いって、石をぶつけるとか、そんなことしなきゃいけないのかな? でも確かにこのままじゃ帰れないし、おばあちゃんやおじいちゃんに心配もかけちゃう。
どうしよう、どうしよう、ってわけわからなくなっちゃったわたしの横で、「そうか、それもアリだ」と空木さんが呟いた。
「
「えーっ、せっかくの人材なのに。でもそっか、空木センセの事務所は元の世にあるしねぇ」
うーん、と困ったように首を反対の方へかしげた闇黒童子さん。でもその言葉を聞いてわたしは空木さんの方を見た。
「えっ、元の世ってことは、地獄じゃないの?」
「ああ、しかもお前の住むアシキノ町だ」
「そっちの方がいい!」
いきおいよく言ってしまったけど、相変わらず空木さんはクールなまま。じぃーっとその色素の薄い目で見つめられると、ちょっとどぎまぎしてしまう。
「お前、趣味あるか?」
「畑仕事のお手伝いと、本を読むこと……あとクラスの新聞を書くことです」
「んじゃ、採用で」
さっと渡された名刺を受け取ると、そこには
【クチナシ法律相談所】
【弁護使 空木市郎】
と綺麗に住所や電話番号が印刷されている。
「明日、放課後に迎えをやるからこい」それだけ言うと、空木さんはさっさと歩き出してしまった。
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