これにて無罪放免!……のはず
「それについて、被告人である桜井菊乃はスマートフォンを所持しておらず、これまでにも祖父母の言いつけにより
ちょっと待って、なんでわたしの個人情報を知ってるの! そんなの調べるのはプライバシーの侵害にはならないっていうの?
「弁護使はその仕事の特性上、個人情報を調べて手に入れていいことになってんの。ってかすご〜っ。
「は? まさかこの煩悩と罪だらけの現代でそんな……」
「ほんとほんと。
わたしの視線を感じたのか、さらっとそう返して少年は前を向いて話を続けた。
「あとすいません。彼女の経歴の掘り下げは本筋から離れちゃうんで、後にすると言うことで〜」
「空木……キサマが言いだしたにもかかわらず、ぐぬぅ」
……どうやらこの空木って人、めちゃくちゃなマイペースらしい。裁判長のおでこのあたりに青筋が浮いている。
「あ、あと本件について、そこの方が証人を希望しているみたいなんですが……」
いつのまにか、裁判長の正面側に並んだ席のひとつに、黒いモヤモヤしたものが座っていて、それが小さくてを挙げているような形をしていた。
「おお! クロか、久しいな」と少し嬉しそうにヒキガエルの神様が言ってるから、知り合いなのかもしれない。
「クロカブリヌシ様、いらっしゃったんですかぁ? めずらしーっすね。今日はなんの証人で?」
「ソノ子……菊乃ハ悪クナイ。ソノ昔、我ノ
「おっと。おっしゃってることわかってますクロカブリヌシ様? 三笠山は三つの笠、つまり三神の
牛頭さんがそんなに焦ってはいない口調でそう返す。もしかしたら、この人(?)もかなりのマイペースなのかもしれない。首を傾げた牛頭さんに、黒いモヤモヤ——クロカブリヌシ様とやらはゆっくりと頷いた……ように見えた。
「カワズノ……今回ハ我ニ免ジテ、ヒイテハクレヌカ?」
「し、しかし! 土を
こくり。と、静かに、でも確かにうなずいたクロカブリヌシ様に、ヒキガエルの神様は納得していないようだったけど、うーむと目を伏せる。
「我ノ話ハ以上、裁判長ドノ、感謝スル」
そう言うと、クロカブリヌシ様はずるっと影が動くようにして、薄く薄くなりながら元いた席に戻っていた。
「ガワズガサ殿、本件「三笠山立ち入り撮影事件」について。一、立ち入りを禁じない者あり。二、撮影しておらぬ者あり。三、三神の総意にあらず。となってしまうが、これに間違いや意見はないか?」
「やむなし、だ。クロが言うなら相違なかろう」
「検察官、牛頭。これに対して意見はないか?」
「しかるべく」
裁判長の問いかけに対して、向かいの席にいるヒキガエルの神様は静かに答えた。
……っていうか「しかるべく」って何? わたしたちは叱られるべきってことなのかな? 他の皆に目をやれば、ひと言一言にものすごくビクビクしているみたい。
「弁護使、意見はないか?」
「ないです」
ツーンと、わたし達の隣に座る少年は、もう興味もなさそうに短く答えた。
「では最後に——これにて
「よかったぁ」「ヤッタァ」「よくわからないけど、わたしたち悪いことしてなかったんだよね?」とホッとした声が小さく聞こえたのを、「だが!」と裁判長が遮った。
「神からの被害届による訴えとして、直接この隠世裁判に
「そ、そんな。覚えてないのにやっちゃダメって……めっちゃムズくない?」
「そうだよ! 俺たちにも証拠を残しといてくれよ!」
河野くんとアリサちゃんの言葉に、「意見は聞かぬと言っただろう!」と裁判長の喝がとぶ。
「お前たちの一日分の時間をいただく、それで何か思うことのある心の持ち主ならば、二度と同じようなことはせんだろう。では本日は、これにて閉廷とする!」
裁判長のお達しと共に、ドンっと木槌が打たれると。瞬く間に皆の姿が煙みたいに消えちゃった!
……ってあれれ、わたし。わたしは帰れないの!?
すっと席を立ったり消えていく神様を見ながら、焦っているわたしに「おい」と隣から声がかけられた。
「なにボケっと突っ立ってるんだ。出るぞ」
「出るってどこに?」
こい、というようにそのまま歩きだす空木さんの後ろに、とりあえずついていく。
「で、どうすんの? 無罪ってか起訴取り消しにしてやったけど」
「ど、どうするって?」
恐るおそる聞くわたしに、「どうって……」と面倒くさそうに空木くんが振り返って言った。
「弁護料。お前の弁護したから払ってもらうぞ」
「えええええーっ!?」
おこづかいだってないに等しいのに、そんなの払えるわけないじゃない! どうしたらいいのー!?
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