シンギュラリティ・シャドウズ
銀親偽他
― プロローグ ―
朝焼けが、空間の端に浮かんでいた。
ピクセルにも光にも似た粒子が、ゆっくりと街を染めていく。
この都市では、朝はすでに日課になっていない。
誰も「おはよう」と言わず、ただ目覚めた場所から“その人らしい動き”が始まる。
そういうものだと、みんな知っている。
――ここが現実かどうかなんて、もう問題じゃないのだから。
川辺のスペースに、ひとりの影が立っていた。
もうひとつの影が、少し遅れて歩いてくる。
「遅いぞ、シン。今日の空、綺麗だぞ」
「また始めるのか? 空の記録。」
「違うよ。今日のこれは“保存”じゃなくて、記憶さ」
「どこが違うんだよ、それ」
「さぁな。でも、ちゃんと見ておきたい朝があるんだ。」
ふたりはよく似ていた。
話す声も、立ち姿も、まるで最初から並ぶことを前提に作られていたかのように。
どちらが先で、どちらが後か――そんなことは誰にも分からない。
それぞれが、それぞれの目線で、同じ風景を見ていた。
ただ、その日の朝だけは、少しだけ違った。
空はいつもより透き通っていたし、風の音は少し遅れて聞こえた。
そして、笑い声の奥に、ほんのわずかな「揺れ」があった。
――終わりが、どこかで始まっている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます