いつも塩対応してくる恋愛無敵要塞クラスカースト上位のダウナー系美少女がもうとっくにデレていることを俺は陰キャラぼっちなので気づいてない
01大親友である着ぐるみマスコットキャラの中身知らなくても友情は永遠と信じている。それはそうと俺を嫌っているクラスカースト上位のダウナー系美少女が最近やたらエンカントしてきて罵ってくるのだが……
いつも塩対応してくる恋愛無敵要塞クラスカースト上位のダウナー系美少女がもうとっくにデレていることを俺は陰キャラぼっちなので気づいてない
神達万丞(かんだちばんしょう)
01大親友である着ぐるみマスコットキャラの中身知らなくても友情は永遠と信じている。それはそうと俺を嫌っているクラスカースト上位のダウナー系美少女が最近やたらエンカントしてきて罵ってくるのだが……
満開に咲いていた桜からエネルギッシュなヒマワリへ変貌しつつある水無月の正午。
午前の授業は滞りなく終了。みんな開放感からなのか梅雨入りからなのか、気だるそうにアクビや背伸びしていた。
俺こと佐竹碧月(さたけあおつき)ももれなくそのカテゴリーに含まさっている。昨日バイト頑張り過ぎたせいか疲労で身体がだるい。
椅子を傾け、目一杯海老反りすると窓越しから明るいブルースカイの空が真逆に飛び込んできた。
夏の入り口に差し掛かり、調度良い陽気のせいで眠気も格段に上がる。お陰様で授業にウトウトと船を漕ぎ先生のチョークが命中。いい笑いものにされた。
まあ、今は許そう。羞恥心より朝飯抜きが祟りお腹が減っているからだ。
教室内も賑わしく友人同士でランチタイムが始まり、前の席でも…………
「佐竹……うざいんですけど、視界にはいんないでくれる? 目がやらしい」
「結城さん、ここは俺の席だから無理だよ」
「チッ、言語を理解できないなんて最悪。私達ここでお昼食べるからどっか行けって説明しているのよ」
結城紅緒(ゆうきべにお)。クラスのカースト上位で、泣きぼくろがチャームポイントのクール系美少女。ダウナー入っていて大人びている雰囲気だ。
口は悪いけど面倒みがいいので男女の人気も高い。
だけど……接点あまりないのに何故か俺だけは嫌っていて塩対応してくる。
「………………」
「ちょっと聞いているの?」
こんな理不尽な要求、従う必要性ないから無視を決め込む。相手するだけ無駄だ。
そんなことで俺のランチタイムを邪魔されたくない。
しかし最近結城さんにはよく絡まれるな。
一年は同じクラスでも他の男子同様距離があったんだけど、進級後はバッティングする回数が指で折れないほどにランクアップ。
こんなに嫌悪される心当たりはないのだが……。きっと今年のおみくじで大凶がでた結果に違いない。憎まれ口叩かれる回数が格段に上がったのもそのせいだ。
「……………………」
「……………………」
俺の黙殺に対抗して結城さんが持久戦と入ったのか、見下ろしながら無言で圧を掛けてくる。
これは効く。周囲の視線と注目度にチキンハートの俺ではそろそろ限界。
結城紅緒は美人だ。ど近眼の眼鏡ヤローの俺でも分かるくらい顔面優等生。
切れ長の目、泣きぼくろ、ふわふわのショートヘア。
距離が近いから呼吸音が聴こえてくる。
「……………………他で食べるよ」
「ふん、目障りだから早くね」
根負けした俺はとっとと昼飯食べたいから屋上へ行くことにした。
もちろんソロ。自慢じゃないが学校で友人は一人もいない。これがラノベで主人公になりやすい陰キャラぼっちってやつだな。
でも寂しくはないよ。友達いないとは一フレーズも宣言してないからね。
◆
「はあはあ……、おはようございます!」
放課後になり急ぎ足で下校。
予定時間より多少早いが近場の仕事場へ入った俺はタイムカードを押す。なので息が荒い。
先輩スタッフさん達へ挨拶を交わしながら制服へ着替え、引き継ぎと持ち場の清掃を始めた。
俺のバイト先は特殊に入る。そう、だいぶ特殊。
子供達に一時の夢と希望を与える誇り高き仕事とはなんだと思う?
ゲーム? 全然違う、もっとリアリティーがある。なら動物園? 近いが違う、もっとドキドキとわくわくする場所。答えは遊園地だ。
俺は非現実的世界を身近に体感できるこの仕事が大好きなのさ。
——興奮していると、なんの前触れもなく背後から抱きつかれもふもふに包まれる。
視界に入ったミニホワイトボードには、『おはようあおつき、我が相棒よ!』ともふもふながら中々うまい字を書く。
「にゃん太郎おはよう。今日も元気そうだな」
職場のメインキャスト、そして相棒にして大親友のにゃん太郎だ。
着ぐるみ越しだと会話しにくいので、こうしてホワイトボードにメッセージを書き込むのがこいつの流儀。
『ふふん、論じるまでもなく至極当然であるにゃん。この遊園地の顔だからな。それよりどうかねにゃー、吾輩のもふもふ具合は? 天日干しを丹念に施したのでお日様の匂いがするであろう?』
「ああ、にゃん太郎の匂いだ。元気もらったよ」
こいつはにゃん太郎。
名前は体を表す代表みたいな猫の着ぐるみ。目つきが悪い赤色のトラ猫だ。
無論、こいつにも本体があるけど中身は誰も知らないし俺自身も然程興味はない。
沢山助けてもらった俺はこいつを信頼している。なので正体なんて知る必要はないから『にゃん太郎』、ただそれだけで十分だ。
『うむ。相棒に太鼓判押してもらえるのなら安心だにゃー。ハグしてくる子供達に不快な思い出を作りたくはないからにゃ。それよりあおつきよ、今日も早い出勤だ。偉いぞだにゃー』
「皆の仕事手伝うつもりだったから授業終わったら全速力で来たんだ。今週末よりナイト営業のイルミネーションカラーをピンクから紫に変えるからさ」
ここはみのり野台遊園地。巷の三流会社が税金対策と道楽で運営している夢も希望もないアミューズメントパーク。
小規模だけど県外からも来園者が来る。なんせ、四県のほぼ県境だからな。ははは。
ただ会社の前会長であるオーナーは良い人なので料金を値上げせず運営してきた結果、万年赤字経営。
なので内部のコストカットからくる慢性的な人手不足は、仲間内のチームワークでカバーしていた。
特ににゃん太郎と俺のコンビネーションは抜群で、俺達で園内を回していると言っても過言ではない。
『あおつきいつもありがとう。吾輩はとても感謝しているにゃー』
「良いってことよ相棒。でもお前に比べたら俺なんて大したことはしてないさ」
にゃん太郎は我がみのり野台遊園地のメインマスコット。着ぐるみなのでショーと園内の見回りは至極当然として、清掃・調理・小動物の世話などリーダーもしくはシンボルとして園内を動き回っている。
我が遊園地を陰日向と支えている縁の下の力持ちだ。
なので汎用型とか量産型と罵るのは御法度。
にゃん太郎は基本的に土日祝日以外、夕方からの登場になる。複数体制でやればいいことなのだがそれをにゃん太郎に拒絶されているから仕方なく現スタイルへなっていた。
幸いうちはナイト営業にも力を入れているので、ゲストからの不平不満は出ていない。
「それはそうとにゃん太郎、そろそろ開放してくれないか?」
『待て待て、まだあおつきパワーを充填中だにゃ。この儀式しないと今日を乗り切れないのにゃん』
心地よいがもう夏も近いのでこのもふもふに長い時間抱かれると暑くなるのが悩みの種だ。
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