第47話:圧死のプレッシャー
「知っているのかね?」
「まぁ少しだけな。組織そのものの情報が少なすぎて、把握できていない感はある」
「私は圧死のプレッシャー。押し潰される死にこそ人の終わりがあると願うもの」
「圧死……ね。で、そのお前が妨害しているのが餓死の
「餓死のスターバー。飢えによってこそ人は死ぬと、その死因を担いでいる
「了解。つまりお前らを殺せば万事解決というわけだ」
「つまり、君は死に抗うと?」
「然程でもないな。単に迷惑だから死んでくれ。それ以上ではないな」
「では死んでくれ」
「了解」
俺も答えるのが面倒で肯定してしまった。壮年の男性だ。圧死のプレッシャー。穏やかな顔をしているが
「斬」
大気が震えた。ズバシュウッ! と何か軋んだ風の音がして俺に斬撃が走る。片から逆の腰まで袈裟切りの斬撃が走り、それを俺は反射した。血の一滴も流れていない。むしろ俺が反射して、それがプレッシャーに迸り、そのまま背後の建物……その一部が切れた。もちろん反射した風の斬撃はプレッシャー自身には効いていない。
「風の斬撃……」
「ウインドギロチン……と私は呼んでいる。圧死にも色々ある。大気を強く細く押し潰せば擬似的に風をギロチンに出来るんだ」
ほぼ理屈そのものが月〇天衝なんだよなぁ。
「圧死のプレッシャーね」
「さて、そういう君も呪いを持っているね。術式を教えてくれるかな?」
「反射だ」
全く見当外れではないが、相手が物理的に依存する以上、間違いでもない。漫画でもないので術式開示してもメリットもないしな。
「どこまでできるか興味あるね」
プレッシャーがぺろりと自分の唇を舐める。
「斬」
風の斬撃。今度は俺は躱した。ほぼ勘だ。別に大気の斬撃が見えているわけではない。俺の後ろで建物が傷跡を残したが、まぁそれはそれで。
「京八流無手活法」
間合いの詰め方は縮地。足から腰へ、背骨へ、肩へ、腕へと通してエネルギーを拳に伝える。崩拳。だがその崩拳はプレッシャーの気圧によって阻まれた。斥力……というほど御高尚なものではないが、空気があれば圧死の呪いで局所的な気圧が作れるのだろう。とはいえだ。それで防御したと思われるのも心外だ。
「急々如律令。
「ぐ……う」
その俺の蹴りが効いたのか。だが相手も降参はしないだろう。
「光熱」
俺に向かって手をかざし、そしてその手から熱が生まれる。ソレを瞬間的に察知して、
「急々如律令。
起動マクロ名を口にしたのは必然。瞬間、俺とプレッシャーの距離が離れ、同時にプレッシャーの呪術が完成する。手の平に生まれた熱がプラズマとなって俺を襲っていた。反射してもよかったが、理屈を見抜くうえで理解と考察は必至。
「プラズマか」
「知っているのか?」
あー、知らないのね。圧死のプレッシャー……とは言っても、物理学を学んでいるわけではないので自分が何をしているのかは流石に把握していないか。
「圧縮」
ほぼ同時に、さらなる術式。空間が軋んだ。恐ろしいまでの圧力が俺を座標に落ち込んで、そのまま挽肉にする……はずだった。俺じゃなければそのまま挽肉だったろうが。
「ふう」
自分中心に落ち込む周囲大気を全て反射する。
「わかるか? お前に俺は殺せない」
「では殺して差し上げよう」
そうして俺は構えを取った。相手も同じだった。武術に理解があるのか。堂々とはしているが……はてさて。問題はココが都市部で、俺が本気を出すと帝都が一部更地に成ること。
「すいません。
は、通じないだろう。まぁ皆殺しにすれば話は違うかもしれないが、一応は助ける前提で場を収めたい。とするとだ。周囲は混乱の極みだ。いきなりゴミ集積場の近くで異能バトルが始まれば、俺でも逃げる。
「さて、そうすると」
「光熱」
手の平にプラズマを作って、それを螺旋丸のように俺に押し付けてくるプレッシャー。そのプラズマを真っ向から迎え撃って、俺は相手を殴りつける。その拳が気圧ではばまれる。だが関係ないな。俺はそのまま殴りつけた。
「なんッ!?」
「気圧の壁を反射した」
つまりむしろ気圧は俺の拳を加速させて殴りに加算したことになる。
「失敗か」
それが俺の本音だった。エギオンをホロウボース……つまり呪力に変える。これにも精製過程が存在する。呪力には濃度と量度があり、その掛け算が総度と言われている。この総度が呪力……つまりホロウボースの多寡を決めているのだが。それと別の基準も存在し、今の俺は……その別の基準の条件を満たすために奔走していた。
「急々如律令。
プレッシャーの側面に回る。それも一瞬で。なおかつ認知されず。すでに
「
踵による回し蹴り。だが
「急々如律令。
さらにプレッシャーの懐に入る。
「貴様!」
「虎拳」
拳が入る。それによって呪ったのだが、やはり不成立。このまま殴り殺してもいいのだが。そう上手くはいかないよな。
「天より落ちて。理不尽と嘆き。受け止めきれずに失笑する。その不幸に如何な名を貴様はつける」
瞬間、空が落ちる。としか言えないような現象が起きたのだが。
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