第3話「この気持ち、名前はまだない」

☁️プロローグ:笑顔を願ってくれた人に、返せなかったまま


風が止んでいた日。

空が曇っているわけでもないのに、光の輪郭がにじんで見えた。


_「ごめん、って言葉だけで今日まで来てた」_


_「じゃあ、わたしがほんとうに言いたかったことって、なんだったんだろう」_



📱LINEの通知と、胸のざわめき


夜。机の上のスマホがふっと光る。


詩織:

「つむぎって、好きな人いる?」


「あ、ごめん!突然!笑」

「あたしね…たぶん、好きな人できちゃったかも」


「ないしょだからね🤫」


つむぎはスマホの画面を見つめたまま、

画面を閉じなかった。心が閉じられなかった。




📚教室:笑顔で言う詩織の“変化”


翌朝、詩織はいつものように明るく近づく。


詩織:「おっはよ~つむぎ!」


つむぎ:「……うん、おはよう」


詩織:「ねぇ、聞いてくれる?まだちょっと不確かだけど」


詩織:「はるくんって……さ」


詩織:「なんか、あたし、気になるかもって思っちゃって」


その名前が出た瞬間、

つむぎの胸の奥で、何かが音を立てた。




🧃放課後の自販機横:詩織のやさしさに、うまく笑えない


詩織:「つむぎは?……なんかさ、誰かのこと気になる?最近」


つむぎ:「……わかんない。まだ、名前がない」


詩織:「そっか……うん、それもいいと思う」


自販機が飲み物を落とす音だけが、

やけに響いた。



📘夜、詩織の“言葉”が重なる


LINEのやりとりはなかった。

でも、つむぎのなかで

あの言葉たちが何度もくりかえされていた。


_“つむぎって、好きな人いる?”_


_“あたし、たぶんできちゃったかも”_


言葉が刺さったんじゃない。

笑顔で言ってくれたその“強さ”に、自分が逃げた気がした。

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