Day15 解読

 からすがカア、と鳴いたとて、月にはとんとその意味がわからない。

 鳥は太陽の傍にあるものと相場が決まっている。月の出る頃には皆が眠り、例外のような夜の番人が息を潜めるように鳴くばかり。

 ところがその夜は、息を潜めるどころか静寂を破るような声が聞こえる。月へ向かってしきりに鳴く黒い鳥を、月は知らなかった。太陽へ聞こうにも夕暮れは駆け足で西に去り、朝焼けは駆け足で追いかけてくるので尋ねる時間もない。夜の番人は言葉が通じないので尋ねることも出来ない。

 それがからすという鳥であると知ったのは、朝焼けに飛び立つその鳥を太陽が「よう、からす殿」と挨拶をしたのを後ろに聞いたからだった。からすはカア、と鳴いて太陽に挨拶したが、月へ向かってするのとは違う声だった。

 どうしてもその意味を知りたいと月は耳を澄ませ続け、ようやく解読出来た頃には夜は全く明るくなって暗さを忘れ、からすは鳴かずに飛び去った。

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