文月の種まき
かんな
Day1 まっさら
広げた日記帳は綺麗だった。
まるで新品、ページを開く時は少し力を込めてぐっと押し込む。さらりとした紙の手触りを確かめた後に天井を仰いだ。それからカレンダーを見て、チクタク進む時計を見つめ、窓の外を眺める。とっぷり夜も更けて近所の犬が鳴いていた。
夏休みが終わる。夏休みが終わるとどうなる。学校が始まる。すなわち、宿題の提出である。夏休みに日記を書きなさい、とはいつの時代の話だろう。今日日、日記を求めたところで誰も彼も好きなことを書いて、それが真実かも怪しいというのに。
宿題から逃れる術はないと言われている。あれには時間的、距離的、単位的な追跡機能がついている。
時計の針に触れ、進もうとする力に抗う。
時間は不可逆とは言ったものの、ある一点から一点にかけての点同士の移動は多少のコツを掴めば難しくない。
「……逃げ切ったら単位くれるかな」
まっさらな日記を埋めるための旅を始めた方が良かった、と気づくのはこれから三十日後である。
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