男女比と貞操観念が狂った世界でパパ活をする
らんら
①変な世界で変なことを変な女とする
「は、はーい。飲みましょうね〜」
「あぁーい!!」
金色のシュワシュワした液体が入った哺乳瓶の先端を膝で寝ているお姉さんの口につける。そうすると、真っ赤な顔をしたお姉さんがチュパチュパと音を立てて飲んでいく。
…………どうしてこうなったんだ? 俺はただ、熱中症で倒れただけなのに。
そう。大学に入ってから三度目の夏休みを謳歌していた俺は、就活なんて気にせずに遊びまくっていた。
そして今日は二週間ぶりの予定が何もない日だった。しかし遊びまくっていた余韻が抜けず、昼間から散歩をしていた時。
急に視界がぐにゃぐにゃになって気づいた時には地面に倒れていた。少し離れたところから聞こえてくるおっちゃんの叫び声と、アスファルトの熱さを感じていた。
しかし次目を覚ましたときには、この酔っ払っている女性が住んでいるこの家にいた。しかもこの人、誰なのか全くわからない。
まぁよくわからない人の家で目が覚めるのはまだいい。助けてくれた可能性だってある。しかしこの女性、俺のことなんて助けようとしていなかった。だって。
「おいちぃ〜!! おかわり!!」
「もうないですよー」
「やぁだぁ!!!! さーちゃんもっと飲みたい!!」
目覚めた瞬間からずっと俺のことをパパ扱いしてるんだもん……
しかもさーちゃんと名乗る女性は俺よりも年上だ。現に今スーツを着ていて見るからに仕事帰りだった。
いやまぁこの際年齢なんて関係ない気もするが、年上でこんなことしているのは余計にきつい。それに部屋は散らかっているし、なぜか赤ちゃんが使うような哺乳瓶やガラガラ、挙句の果てにはオムツなんかも置いてある。
目が覚めたとき、一番初めに見たのがこの赤ちゃんグッズスペースだった。初めは子供がいるのかなと思ったけど違った。全てこの人が使用するものだった。
「びーるにゃいならほかにょしゃがすっ!!」
「えぇ……もうこれで六本目だよ? いいの?」
「しらにゃい!! のむっ!!」
そして何よりも怖いのが、この倒錯的な行動をお互い一時間も続けていることである。というか、もう全部が全部怖いしかない。
いや俺だって最初は拒否ったよ? でもすっごい怖い目つきで睨まれた挙句、俺が間違った行動をするたびにビール缶を机に叩きつけてきた。それが怖くて怖くて……後普通に扉の前でこいつが鎮座しているせいで逃げられなかった。だから仕方なくこの人の言うことを聞き続けた結果、パパになってしまった。わけわかんね。
しかもこの人、こんなことしている癖に余裕で俺よりでかいんだよな。170ある俺より頭一個大きいってどゆこと? 190以上あるよね絶対。
こんな赤ちゃんいたらこえーわ。一体何がこの人を赤ちゃんにさせているんだろう。
「ぱぱぁ、おしゃけもってきたぁ!!」
そう言ってやってくる女性の腕の中には、たくさんのお酒がある。しかもどれも度数も値段も高そうな瓶酒ばかりだった。
しかし肝心の女性はもう目が虚になっているしこのまま飲んだら寝てしまうだろう。それに今日は木曜、明日も普通に仕事がある。明日のダメージを少なくしてあげた方がいいだろう。
「もう、お酒辞めといた方が……」
「んっ!!」
「いやだから」
「うるしゃい!! のむっ!!」
瓶と哺乳瓶を突き出したまま、喚き始める女性。しかも足でバンバン机を蹴ってまくし立ててきた。
「でも、明日も会社あるよ?」
「しらないしらないしらなーい!!!! のむ!! はいっ!」
「でも」
「うるしゃい!!」
「いだっ!!」
こっ、こいつ!! 哺乳瓶で殴ってきやがった!!
「何すんだてめぇ!!」
また頭を叩かれないように気を付けつつ、この女に近づいて両手首を掴む。そして爪を立てて全力で握りしめる。
もう知らない。たとえ女だとしても、いきなり殴ってくるような奴に加減なんてしてやるもんか。それにこいつは酔っぱらいだ。これぐらいしないと頭も冷えないだろう。
「パパがわりゅい!!」
「あだっ!」
しかし、そんな俺の考えは一瞬で消え去ってしまう。何とこいつは、俺の手を払いのけてまた哺乳瓶で殴ってきやがった。しかもまた頭。
そしてまた手を振り上げたこいつが怖くて、咄嗟に頭を守るように体を丸める。
「あやまれっ!! あやまれっ!!」
何度も背中や頭を殴ってくる女。気が済むまで殴り続けるつもりなのか俺の停止を求める声にはちっとも反応してくれなかった。
「ごっ、ごめんっ! 謝るからっ! もう、やめてくれ!!」
「だまれっ!! ぱぱきらい!! きらい!!」
「いでっ……ご、ごめん。パパ悪かったから!! おさけ、のもうなっ! なっ!?」
「おしゃけ!!」
お酒のことしか頭がないのかこいつは。お酒を飲もうって言った瞬間、殴る手を止めて殴っていた手を俺に差し出してきた。
なんで俺、こいつの身を案じてあげたのにこんなにぼこぼこにされないといけないんだろう……就活しなかった天罰か?
それはそうと、ここはどこでこいつは誰なんだ。俺はこんなきったない部屋に住んでないし、赤ちゃんがいないのに赤ちゃんグッズを置くような奴じゃない。それに、こんなお酒狂いの幼児退行くそデカ女と同棲していた記憶なんてない。まじでだれでなんでこいつは幼児退行してるんだ?
意味が分からないことだらけだったが、とりあえずこの怪物を寝かせよう。もう俺、明日仕事だとか知らない。頭痛めながら働け! 暴力女!!
「おしゃけぇぇ~~!!」
「たくさん飲んでいいぞ」
「やったぁあ!! おしゃけのみゅ!!」
そしてまたしても膝に寝ころんできた。また変なことされそうで怖いが、これはこちらとして好都合。早く飲ませて眠らせよう。
……………………
「ははっ…………」
「おきゃわりぃ!!」
なんて思っていっぱい飲ませてみたが、全くこいつは眠らなかった。さっき眠そうだったよなおまえ? なんで逆に元気になってるんだよ。
さっきまで缶ビールを6本くらい飲んでいたのにあれから三本の瓶を空にするってどうなってるんだ? もうこの人怖い。
さっきよりもキラキラした目で真っ赤な顔を晒している女。そしてもうすぐ四本目の瓶が空になりそうになっていた。
「んぐっんぐっ…………ぷはぁ!! おきゃわりぃ!!」
「まっ、待ってくれ。もうすぐやめないっ……ひぃ!!」
しかも停止を求めるとまた哺乳瓶を上に掲げてくる。殴られたくないけどこいつ永遠に飲み続けているせいで一向に眠る気配がない。どうしよう。
「ごっ、ごめんね。飲もうね」
「きゃああい!! おしゃけもっとぉ!!」
「うっ、うん」
機嫌を損ねる前に新しい瓶を開けようとする。しかし、周りにはもう中身が入っている物がなかった。
「あ、もう、無くなっちゃった……」
「はやく!! はやく!!」
「いや、もう、新しいのなくて。飲みたいなら取ってきてくれないと」
有無も言わずに冷蔵庫に駆け寄る女。足取りはさっきよりもふらついていたが、難なく冷蔵庫にたどり着いた。
「おしゃけおしゃけおしゃけ……」
「あ、新しいのある?」
「……………………にゃい」
「え」
「にゃいにゃいにゃいにゃい!!!! おしゃけえええええ!!!!」
叫びながら近寄ってくる女。その目は血走っていて、明らかに異常だった。
こいつ絶対アル厨だろ。体つきは普通なくせに酔っていたとしてもこの様子は可笑しすぎる。
しかも空瓶や空き缶を口付けて持ち上げてみたり、哺乳瓶を開けて飲み干そうとしたり。何が何でもお酒を摂取しようと必死だった。そして。
「…………にゃい」
「もっ、もう寝ない? また明日飲めばいいじゃん」
「やぁあああああ!!!!」
ついに泣き始めてしまった。比喩とかじゃなくて、本当に泣き始めた。
えぇ…………もうやだこの人…………
どう接したらいいのかわからず放置していたら、泣きわめいていた女性が急に立ち上がった。
「ちょっ!?」
そして急にスーツを脱ぎ始めてしまった。
「何やってんの!?」
「もうねりゅ!! おしゃけにゃいもんっ!!」
「だとしてもっ!! 脱がなくてもいいだろっ!!」
顔ごと逸らして女性を目に入れないようにする。後ろから聞こえてくる布がこすれる音を聞かないようにするために必死に耳を塞いで、頭の中では余計なことを考えないように無にする。しかし。
「ぱぱぁもいっしょっ!」
「うわっ!?」
あいつがいきなり俺の脇腹に手を当てて持ち上げてくる。そして抵抗する間もなくベッドに押し倒される。
「えへっ……えへへへへへへ」
壊れたように笑う女の体にはオムツ以外の衣類は何も身についていなくて、肌色以外の部分も…………って、オムツ?
「は?」
曝け出されている胸に目が引かれそうになったが、それ以上に意味が分からないものがあったのでそちらに目をやる。そしてそこには、さっき俺が目を覚ました時に見たオムツを身に着けていた。
「…………はぁあああ」
なんか、オムツ見た瞬間一気にさっきまであったドギマギが消えていく。いやだって、オムツしているような変態女に興奮するわけないだろ……てかこんな格好でいつも寝てんのかよこの人。こわ。
「おやしゅみぃ……」
ベッドに入っていきなり酔いが回ったのか、すぐに気持ちよさそうな寝息を立て始める女性。
そしてこうして、オムツだけ穿いてほとんどすべてを曝け出している変態女性と、これは夢だと思い込んで眠ろうとする成人男性の図が完成してしまった。
しかしこの後、この女性に目いっぱい抱きしめられたせいで苦しくて眠れず、何度も目を覚ましながら朝になるのを待った。
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不定期更新だけど新作書いてみました。ちなみにこれでわかったと思いますが、私は変態でおっきい女性が大好きです。
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