第3話 新たな仲間
レンが真眼鑑定を習得してから一週間が経った。
彼は毎日Eランクのダンジョンに通い、能力の習熟に努めていた。
今や彼の名前は新人冒険者の間で有名になっている。
「一人でダンジョンのボスを倒す鑑定師」として。
だが、今日は違った。
Bランクダンジョンの調査依頼を受ける予定だった。
「本当に一人で大丈夫なのですか?」
受付嬢が心配そうに尋ねる。
Bランクダンジョンは、熟練の冒険者でもパーティを組んで挑むのが常識だ。
「大丈夫だ。もし危険だと感じたら、すぐに撤退する」
レンは自信を持って答えた。
真眼鑑定があれば、危険を事前に察知できる。
無謀な挑戦ではない。
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森の奥にあるグリーンシェル洞窟に向かう途中、レンは奇妙な光景を目にした。
大きな木の下で、一人のエルフが座り込んでいる。
長い金髪と尖った耳が特徴的だった。
だが、彼女の表情は暗い。
レンは声をかける。
「大丈夫か? 怪我でもしたのか?」
エルフが顔を上げる。
美しい緑色の瞳だったが、涙で潤んでいた。
「あの……あなたは?」
「俺はレン・シルバー。冒険者だ。君は?」
エルフは少し躊躇してから答える。
「エルフィです。私も……冒険者でした」
「でした?」
レンは彼女の隣に座る。
エルフィは小さく笑う。
「昨日、パーティから追放されたんです」
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エルフィの話を聞いて、レンは自分との共通点に驚いた。
彼女もまた、パーティメンバーから軽視されていたのだ。
「エルフなのに魔法が使えないなんて、恥ずかしくないの?」
「君の弓の腕は悪くないけど、エルフらしい華麗さがないよね」
「正直、エルフじゃなくても同じことができるし……」
エルフィが語るパーティメンバーの言葉は、レンが受けた仕打ちと酷似していた。
「魔法が使えないエルフは珍しいの?」
レンが尋ねると、エルフィは頷く。
「エルフは生まれながらにして魔法の才能があるとされています。でも私は……」
彼女は手のひらに小さな光を灯そうとするが、すぐに消えてしまう。
「……これが精一杯なんです」
レンはエルフィを真眼鑑定で見つめる。
彼の瞳が金色に輝く。
「なっ……!」
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レンの視界に、エルフィの真の姿が映し出された。
彼女の体の中には、巨大な魔力の塊が眠っている。
それは通常のエルフの何十倍もの魔力だった。
しかし、その魔力は何かによって封印されている。
魔力が封印された原因も真眼鑑定によって見ることができた。
「エルフィ、君は昔、何か大きな魔法事故に巻き込まれたことはないか?」
エルフィが驚いた表情を見せる。
「なぜそれを……? 幼い頃、村で魔法の暴走事故がありました。その時に……」
「その時に、君の魔力が自分の身を守るために内側に籠もったんだ」
レンは古代の本で読んだ知識を思い出す。
強い恐怖や衝撃により、魔力が自己防衛のために封印される現象があるという。
「でも、その封印は解くことができる」
「本当ですか?」
エルフィの目に希望の光が宿る。
「俺の鑑定能力なら、封印の構造が見える。君が望むなら、手伝おう」
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レンはエルフィの封印解除を試みることにした。
「……」
だが、それには時間がかかりそうだった。
「封印の解除には、少し時間がかかりそうだ……。少しずつやっていこう」
「はい!」
エルフィが答えた。
「もしよければ、今日はBランクダンジョンの調査があるんだが、一緒に来ないか?」
エルフィが戸惑う。
「でも、私は魔法が使えませんし、足手まといになるかも……」
「君の弓の腕はどのくらいだ?」
レンが尋ねると、エルフィは弓を取り出す。
近くの木に向かって矢を放つ。
矢は狙った場所に正確に刺さった。
レンは真眼鑑定でエルフィの弓術を分析する。
「素晴らしい。君の弓の腕は相当なものだ」
実際、エルフィの弓術は天才的だった。
魔法が使えないことを補うために、彼女は弓術を極限まで高めていたのだ。
「俺と組まないか? お互い、パーティに恵まれなかった者同士だ」
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グリーンシェル洞窟に到着した二人は、入り口で作戦を練る。
「俺が鑑定で危険を察知し、君が弓で敵を倒す。シンプルだが効果的だ」
エルフィが頷く。
「分かりました。レンさんを信じてみます」
洞窟内は緑色の光で満ちていた。
壁一面に発光する苔が生えている。
レンは真眼鑑定を使って、周囲を詳しく調べる。
「左の通路に罠がある。右を行こう」
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洞窟の奥で、二人は最初の敵に遭遇した。
グリーンシェルスパイダーという巨大な蜘蛛の魔物だ。
その体は人間の大人ほどもある。
「エルフィ、奴の弱点は額の中央だ。そこを狙え」
レンの指示と同時に、エルフィが矢を放つ。
矢は正確に蜘蛛の弱点を射抜いた。
魔物は一撃で倒れる。
「すごいな」
レンが驚く。
エルフィも自分の手柄に驚いていた。
「弱点が分かると、こんなに簡単に倒せるんですね」
二人の連携は完璧だった。
レンが敵の弱点を見抜き、エルフィが正確に射抜く。
この組み合わせなら、どんな敵とも戦えそうだった。
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洞窟の中層で、二人はより強力な敵に遭遇した。
グリーンシェルキングという、このダンジョンの中ボス的存在だ。
「こいつは厄介だな」
レンは真眼鑑定でキングを分析する。
硬い甲羅に覆われ、通常の攻撃では傷つけることができない。
だが、甲羅の継ぎ目に小さな隙間があった。
「エルフィ、甲羅の継ぎ目を狙うんだ。だが一発では倒せない。連続で撃つ必要がある」
「分かりました」
エルフィが集中する。
矢が次々と同じ場所に的中し、キングの甲羅に穴を開けていく。
そして、キングは力尽きて倒れた。
「やったな」
レンがエルフィの肩を叩く。
エルフィは嬉しそうに微笑む。
「レンさんのおかげです。こんなに気持ちよく戦えたのは初めてです」
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ダンジョンの最深部で、二人は意外な発見をした。
古い魔法陣が床に刻まれている。
レンが真眼鑑定で調べると、それは封印解除のための魔法陣だった。
「……エルフィ、君の封印をこの魔法陣で解くことができる」
「私の?」
「君みたいに体内に魔力が封印されてしまった者の封印を解く魔法陣だ」
レンはエルフィに魔法陣の中央に立つよう指示する。
そして、古代の本で学んだ解除の呪文を唱えた。
魔法陣が光り始め、エルフィの体を包み込む。
洞窟全体が強い光に包まれた。
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光が収まると、エルフィの姿が変わっていた。
彼女の髪は以前より輝いて見え、瞳は深い緑色に変化している。
「これは……」
エルフィが手を見つめる。
手のひらに、美しい緑の光が安定して灯っている。
「魔法が……使える」
彼女の魔力は強大だった。
レンの真眼鑑定によると、A級魔道士に匹敵する力を持っている。
「それが君の本当の実力だ」
エルフィが涙を流す。
「ありがとうございます、レンさん。あなたに出会えて本当によかった」
「こちらこそ。君のような仲間に出会えて幸運だ」
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ダンジョンから戻った二人は、ギルドで大きな注目を集めた。
「Bランクダンジョンを二人だけで攻略?」
「しかも最短記録じゃないか」
ギルドマスターのソリスが二人を呼び出した。
「君たちの実力は本物のようだね。正式にパーティを結成しないかい?」
レンとエルフィは顔を見合わせる。
「ぜひお願いします!」
二人は同時に答えた。
「それから、君たちにAランク昇格試験を受ける資格を与えよう」
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その夜、レンとエルフィは新しいパーティの名前を考えていた。
「どんな名前がいいですかね?」
エルフィが言う。
「『真眼の翼』はどうだ? 俺の真眼鑑定と、君の矢が翼のように飛ぶから」
「素敵な名前ですね。気に入りました」
二人の新しいパーティ「真眼の翼」が誕生した。
レンは窓の外を眺める。
街の向こうで、きっと紅炎の剣のメンバーたちが困っているはずだ。
彼らが真の鑑定師の価値を理解する日は近い。
そして、その時には全てが遅いということも。
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