6-4

 十二月二十五日、待ち合わせ場所で私を見つけた瞬間、アオイくんは目を丸くして驚いている。


「ヤバイわ、海音ちゃん」

「なに? 何があったの?!」


 ヤバイを探しにキョロキョロすると、


「海音ちゃんが可愛すぎてヤバイ」


 言うなりアオイくんは私を一瞬ギュッと抱きしめて笑う。

 ……、この人はもう隠すつもりないみたいだ。

 顔から火が出そうなほどに真っ赤になってる私の手を握り歩き出す。

 ちょっと、だけのつもりだった。

 クリスマスだし、ちょっとだけオシャレしようかな、と夕べ自室で鏡見ながら服を合わせていると、ノックもせずに入ってきたお姉ちゃんが私がデートするらしいと気づかれてしまった。

自分の勝負服を色々と引っ張り出してきて、ファー付きの白いコートやら大人っぽいベージュのニットワンピースとか、もうこれじゃ本気のデート服じゃないか、と抵抗したのに、今朝は髪の毛巻かれたり、メイクまでされた。

 何だかめちゃくちゃ恥ずかしいけれど、アオイくんが喜んでくれてるし、良かったのかも。

 海辺の赤レンガ倉庫街は恋人たちでいっぱい。

 私たちもそう見えてるのかな。

 ジングルベルのオルゴールミュージックが流れ、シャンシャンと鈴の音が聞こえてくる。

 たくさんの飾り物をつけたクリスマスツリーの大きなもみの木は外国から毎年運ばれてくる私たちの街のシンボル。

 その景色の中の一点に私の目は釘付けになる。


「アオイくん、ねえねえ! あれ! サンタさんがいる!」


 指をさす私たちの前方にはサンタクロース。

 真っ白な髭に丸眼鏡のサンタさんは子供たちに囲まれて写真を撮っている。

 いいなあ、サンタさん。

 きっと私思い切り羨ましそうな顔してたんだろうな。


「海音ちゃん、並ぼう」


 おいで、とアオイくんに手を引かれて写真を撮ってもらう列へ、子供たちに混じって並んで、サンタさんを真ん中に写真を撮ってもらった。


「私サンタさんと写真撮ったの初めて!」

「オレも」


 お互いにその写真を待ち受けにしてから倉庫街のショップに入った。

 帽子のお店に入るとアオイくんは色んな帽子を被ってる。

 どれも似合う、様になるなあ。


「あ、これがいい、これにしよ、アオイくん!」


 ハットのもいいけど今日のアオイくんのコーデにはニット帽が似合うなあ。


「これにしよ、って」

「アオイくんへのクリスマスプレゼントにしたいんだけどダメかな? いつも勉強教えてもらっているお礼です」

「う、うそ?」

「もっと他のが良い?」

「海音ちゃんから貰えるなら何でもいい、あ、何でもはあれだけど」


 嬉しそうに目を細めるアオイくんの手から帽子を受け取ってから、レジで会計していると。


「仲良しですね」


 クスクスと店員さんが笑ってるのは、後ろに立つアオイくんが私の肩に頭を乗っけてニコニコ待っているせいだ。

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