5-7
「アオイくん、聞いてもいい? Na na naって」
私が確認したかったこと。
「うん……、拓海が菜々のことを想って、書いた曲だと思うよ」
ああ、やっぱり、そうか。
アオイくんが言うならその通りだろう。
Na na naを初めて聞いた時、そしてそのタイトルを聞いた時のアオイくんの表情。
『それでいいの? 拓海』と心配していたアオイくん。
「菜々はさ、幼馴染なの、オレら幼稚園からずっと一緒でさ」
少しずつ私にもわかりやすいように、アオイくんが話してくれた幼いころの話。
三人の家はすぐ近所で同じ幼稚園に入ったことから親ぐるみで仲良しだったそうだ。
「菜々と拓海は小さなころから、お互いのこと好きだったんだと思うよ」
中学一年生になった頃、ようやく二人は付き合いだしたらしい。
そっか、そんなに幼い頃から惹かれあってたんだ……。
ショックよりも妙に納得してしまうのは、Na na naの歌詞を聞いてその世界観を感じていたからなのかな。
それとも加瀬くんの菜々さんへの気遣うような守るような視線をここ数日目の前で見て来たからかもしれない。
「菜々は、父親がイギリスの人でさ、だからちょっと日本人離れした顔してるでしょ? そのせいで小さいころから、からかわれてたんだけど、中一の時酷いイジメにあってさ」
ああ、女子のひがみ、というものだ。
あそこまでキレイだと嫉妬の対象にもならないと思うのだけれどな。
ただ女子のイジメというのは何がきっかけで始まるのかはわからない。
それは私自身もよく知っているけれど河本さんの場合もまた、『そんなことで?!』だった。
彼女が理由を聞いてまだ中一だった頃の彼女の心境を想うと苦しくなる。
「イジメの原因になったのは中学入ってから少し経った頃、菜々のことが好きだってセンパイが告白してきて。その人、めちゃくちゃ人気あったの。運動部のキャプテンでモテる人で」
そういう人ってどの学校にもいる、同性からも異性からも人気のあるような。
「だからこそ自分に自信もあったんだろうけど、割と人がたくさんいる場所で堂々と菜々に告白したんだよね。でも、菜々はその場で振っちゃったんだよ、拓海がいたしね」
そして、それを目撃していた運動部のキャプテンさんを好きだった人たちが、菜々さんを悪く言うようになって、イジメという形へと変化してったと。
菜々さんのせいではないのに。
アオイくんや加瀬くんが側にいる時は庇ってたらしいのだけど、どうしても菜々さんだけの状況の時は、一人で耐えているようだった、と。
それでも菜々さんは加瀬くんがいたから頑張って学校に来てたらしいのだけど……。
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