第17話

ウキウキと心弾ませながら、まだかまだかと何時もツルギが乗る黒光りの車を待つ


空も青く太陽も眩しく雲一つない晴天。清々しい九月の中旬だと言うのに少し肌寒いから、心配した下っ端が上着を寄越して来た。


要らねぇよ、そんなダッサイ服!!!と思いながら



「あ、ありがと、少し寒かったから助かった!」と、上着を両手で抱き締めながらニッコリ微笑んでおいた



ポーッと見惚れる下っ端



心の中で罵倒するのはいつもの事



ふん、簡単な奴と、バレない様息を吐き出した



ちょっと微笑むとコロッと騙される馬鹿な男



まぁ、背がもう少し高かったら相手してやっても良いけど



顔は合格...



あ、駄目、駄目、月華蝶の面子に手を出してツルギにバレたらヤバイヤバイ。



残念....美味しそうなのに



舌なめずりする私に気付かず下っ端は名残惜しそうに離れて行く



そんな中、遠くに止まる一台の高級車。



何であんな所に止まるんだろうと、不思議に思いながらも駆け出そうとして




出来なかった。




一旦外に出たツルギが振り返り中を覗き込み、大事そうに女を抱えて出てきたから。




私がされた事が無いお姫様抱っこ



もう一人の男は馬鹿笑いし



女が何かを言うと渋々と女を降ろしたツルギ。



私の中にフツフツと黒い感情が沸き起こる。



何処の馬の骨とも解らない女の手を掴み、愛しそうに見つめるツルギ。



もう一人の男に頭を撫でられ恥ずかしそうに顔を赤らめるその女。



そんな男の手を払い除け自分のモノだと言わんばかりの独占欲丸出しのツルギなんて



見たくないっ!!!



他の女をそんな目をして見つめる姿なんて...有り得ない。



そこは私の場所....



私がいずれ手に入れるべき場所だった




何でアンタが居るの?



私は踵を返し駆け出した



階段を上がり二階のドアを開ける前にポケットに忍ばせてた目薬を瞳に大量にさし



ドアを開けた




ツルギは絶対渡さない




どんな手を使っても




泣きながら入って来る私を案の定幹部の皆は目を見開き驚いた顔をした。




そして私はシャクリあげた声を漏らし




「わ、私っ....姫じゃ無くなるっ」




弱々しく言葉を発した。




気分は大女優だ。

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