第24話 楽しいパンペルデュパーティー
パンペルデュが無事焼き上がり、リーゼお姉ちゃんが、
「ソフィーちゃんがやけどしたら大変だから私がやるわね」
とお皿に取り分けてくれる。いつの間にかちゃっかりあたしたちとおそろいのエプロンも着けていた。
食堂中に甘ーい香りが漂って、お皿の上には金色のパンペルデュ。あたしがパンペルデュに見とれている間に、リーゼお姉ちゃんがさっさと後片付けを済ませていく。
「リーゼさん、ありがとうございます。ホットプレートまで運んでいただいて」
「いいのよ、ソフィーちゃん。ソフィーちゃんが運ぶのは大変だもの」
ソフィーちゃんにお礼を言われたリーゼお姉ちゃんの顔がデレデレに崩壊していく。
── 本っ当にソフィーちゃんが大好きなんだね。
あたしは皆の席にフォークとナイフを配っていった。ついつい楽しくなって、
「パンペルデュパーティー、パンペルデュパーティー。パンペルデュパーティーはたっのしいなっ!」
即興で作った歌を歌っていたら、ソフィーちゃんがニコニコしながらあたしのことを見ていた。
「あら、いい匂いね」
その時、言乃花お姉ちゃんが食堂に戻ってきた。
── どこに行ってたのかな?
と思っていると、リーゼお姉ちゃんが声をかけた。
「あれ、言乃花どこに行っていたの? もう準備出来るわよ」
「なぜあなたがそこにいるのかしら、リーゼ?」
言乃花お姉ちゃんが呆れた顔をしている。
「だって、ソフィーちゃんだけだと大変そうだったからよ」
「はい、とっても助かりました。リーゼさんありがとうございます。言乃花さんも座ってくださいね」
「あたしだとホットプレートとか運べなかったから、リーゼお姉ちゃんが手伝ってくれてめちゃくちゃ助かったんだよ。リーゼお姉ちゃんありがとうね!」
リーゼお姉ちゃんは嬉しそうに笑ってくれたけれど、言乃花お姉ちゃんは額に手を当てて大きなため息をついた。
── どうしたのかな?
あたしはソフィーちゃんと顔を見合わせて首をかしげた。
それからみんな席について、ふわふわパンペルデュのおやつパーティーが始まった。
あたしの目の前には金色に輝くパンペルデュが二切れ。少し斜めに重ねられて置いてある。その横には生クリームと、メープルシロップの入った小さな壺みたいな入れ物が添えてある。
── もう、よだれがたれそうだよっ!
じゅるり。
言乃花お姉ちゃんがいい香りのする紅茶を入れてくれた。
「この紅茶、ミルクティーにしてもおいしいから試してみてね」
そう言ってミルクピッチャーも用意してくれる。優しいよね。
「それじゃ、いただこうか」
「「いただきます」」
「いっただきまーす!」
みんながいっせいにパクリとパンペルデュを口に入れる。一口目はあたしもみんなの真似をして控えめに口に入れた。途端に、ふわり、とろり。舌の上でパンがするりと溶けてバターと砂糖の甘味が口いっぱいに広がった。
「美味しいーーーーっ!」
そこからは無我夢中でパンペルデュを頬張った。時々アクセントにメープルシロップをかけたり、生クリームを付けたりしたけど、あんまり美味しすぎて最後は全部どばーっとかけてパクパク食べてしまった。空っぽのお皿に反比例してあたしのお腹は幸せで満たされている。
「か、過去イチ美味しかったかも……」
ケプっとお行儀の悪いげっぷが出てしまったけれど、みんな笑いながら見てくれていた。
ふと気づくと、リーゼお姉ちゃんが号泣していた。
「あ、あう、ソフィーちゃんお手製のパンペルデュ〜」
── あたしも一緒に作ったんだけどな……でも、そっとしとこう、そうしよう。
冬夜兄ちゃんは笑いをこらえているし、メイお姉ちゃんはソフィーちゃんにニコニコしながら御礼を言っている。言乃花お姉ちゃんはリーゼお姉ちゃんに呆れながら上品に食べている。口元が緩んでるからきっと美味しいって思ってくれてるんだ。
── なんだろう、これ。すっごく楽しいっ!
食べているみんなを見てるだけですごく幸せな気分になった。きっとあたしの顔も緩んでるんだろう。
冬夜兄ちゃんが、
「しーちゃん、ソフィーと一緒に作ってくれてありがとうな。これ、すごく美味しいぞ」
と声をかけてくれる。メイお姉ちゃんも言乃花お姉ちゃんも、
「しーちゃん。素敵なパンペルデュをソフィーと一緒に作ってくれてありがとう。これ、本当にすごく美味しいよ」
「しーちゃん、ありがとう。とても美味しいわよ」
と言ってくれる。そしてリーゼお姉ちゃんは……、
「しーちゃん、これ、後でレシピちょうだい! 是非とも再現しなくちゃ……」
「リーゼ、お行儀が悪いわよ。話すか食べるかどちらかにしなさい」
って、やっぱり言乃花お姉ちゃんに怒られている。
── ……なんだろう。この背中がむずむずする感じ。ものすっごく嬉しいっ!
みんなに口々に御礼を言われて、あたしは幸せいっぱいになった。
── お料理っていいね!
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