第21話 転移先は、ここで決まり!
スマホの画面には、
『出口をセットしてください』
と表示されていて、三か所から選べるようになっていた。
『中庭東屋』、『特別寮入口』、『実験室横』。
さらに説明が表示されていて、
「なになに、出口を選び呪文を唱えよ。呪文は以下の通り……なるほどぉ」
出口を選ぶと、鏡に向かって言う。
「よーし、いっくよー。
すると鏡がキラキラと光った。
「おお、なんかかっこいー! ……よーし、では行きますか」
あたしは鏡に飛び込んだ。
── ぽいっ。
出た先は、師匠の実験室横にある踊り場。
「ディメンションズゲート、クローズド」
ササッと鏡を消して実験室をのぞくと、背の高いボサボサの青い髪の後ろ姿が見える。
── あの白衣と青い髪。間違いなく師匠だ。
あたしはガラリとドアを開けると、大きな声を出した。
「師匠ーーっ! 来たよー!」
「おお、我が弟子詩雛くんではないか! 今日はどうしたのだ?」
「ソフィーちゃんとフレンチトーストをこれから作るんです。師匠も食べますか?」
「フレンチトーストだと? 聞いたことのない食べ物だな。非常に興味深いが、今重要な実験の準備をしているのだ。残念だがまたの機会にするとしよう」
そう言うと師匠はくるりと背を向ける。だけど、まだ用事があるんだよね。
「師匠。お願いがあります!」
「何? お願いだと?」
「はい。この世界の文字が読めるようになりたいんです。言乃花お姉ちゃんが師匠なら何とかしてくれるかもって言ってました」
「ほう、なるほど。だがそれには我が弟子のサンプルが必要だ。君のデータは実に興味深い! 我が弟子よ、私の研究のためにもサンプルを取らせてもらえるか?」
「サンプル?」
「前回は言乃花に廃棄されてしまったからな」
あたしは、ポンと手をたたいた。
「ああ、あの魔力を調べたやつのことかー。もちろんいいよ、師匠!」
あたしはまた試験管を渡されて魔力を注ぎ込む。って言っても魔力がどんなものか分からないから、ただ念じるだけ。
── 色、変われー。
すると前と同じように透明な液体が水色に変わった。それを師匠に渡すと、眼鏡の奥の瞳がキラッキラに輝いている。
「貴重なサンプル採取への協力感謝する。文字が読めれば良いのだな? ならば眼鏡を加工するとしよう。我が弟子よ、次はいつ来れる?」
── うーん。いつと言われてもなぁ。
「えーと。それが、ソフィーちゃんが呼んでくれないと来られないんです」
「何? そうなのか。ならばソフィーくんに伝えておくことにしよう。楽しみにしていてくれたまえ」
「やったー! 師匠、ありがとー」
それからあたしは特別寮へと向かった。途中、階段で何人かの生徒とすれ違った。
── そっかー。平日だと授業あるもんね。
気にせずすり抜けたけど、向こうはめちゃくちゃ驚いていた。
「え、子ども?」
「何でこんなところに子どもが?」
「え、幽霊!?」
── 幽霊とは失礼なっ!
って思ったけど、フレンチトーストがあたしを待っている。そのまま気にせず通り過ぎた。
特別寮に着いて、扉をノックする。
「ソフィーちゃん、来たよー!」
するとカチャリとドアが開いて、かわいいソフィーちゃんが顔を出した。
「いらっしゃい、しーちゃん。待ってたよ」
── あー、この笑顔、ほんっと癒やされるっ!
「おっ待たせー。じゃ、ちゃちゃっと作っちゃおう!」
そのまま食堂へ入っていくと、一つのテーブルの上にホットプレートが用意されていた。その横に食パン、牛乳、卵、砂糖がきちんと準備されている。泡だて器、ボール、菜箸、食パンをひたすための平たい入れ物までバッチリだ。
「すごーい、準備完璧だね!」
「うふふ。料理長さんに相談したらね、それは『パンペルデュ』のことですね、って用意したくれたのよ」
「ふーん、パンペル……? こっちではそう言うんだね」
あたしとソフィーちゃんはエプロンを着けてきれいに手を洗うと、早速調理を開始した。
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