第4話 突然のお誘い

 ソフィーちゃんはどんな話でもとっても嬉しそうに聞いてくれる。あたしの普通はソフィーちゃんには普通じゃない。かくれんぼも鬼ごっこも、もちろんけいどろだって知らないし、ドッジボールも見たことがないらしい。


 大事なメイって人に聞いても「知らない」と言われたそうだ。ソフィーちゃんとメイお姉ちゃんは長い間二人だけで生活していて、学園に来て初めてたくさんの人を見てびっくりしたんだって。どれだけ田舎で生活してたのかな。ソフィーちゃんはその間のことはよく覚えてなくてあまり話したくないんだって言ってた。だからあたしも聞かないようにしたよ。


『しーちゃんとお話するの、とっても楽しいよ。会えたらいいのにな』


 って言われたから、


「あたしも! ソフィーちゃんに会ってみたいな」


 って答えたんだ。


 ── ワールドエンドミスティアカデミー。どんなところなんだろうね。




 ドタドタと階段を駆け上がると、バン! と大きな音を立てて部屋のドアを閉めた。母さんの怒る声がしたけど、そんなの構ってられない。ベッドにうつ伏せになって、しばらくジタバタと暴れまくった。


「あーーーもう! なんっでこんな時にれーちゃんいないの! ばかー!」


 八つ当たりだって分かってるけど抑えられなかった。


 もうすぐゴールデンウィーク。「連休は久しぶりにお出かけしようか。れーちゃんの家族と一緒に遠出するのもいいね」って話してたのに、父さんが博物館のイベントで忙しくてドタキャンされちゃったんだ。


 あたしの父さんは近くにある博物館で学芸員の仕事をしているんだよ。お休みの日の方が忙しくなることは多いけど、大型連休なんかは交替で休みを取れるようにしてくれてる。


 ── れーちゃんたちと休みを合わせようって言ってたのに。もう、信じらんないっ! 


 しかも母さんまでドラッグストアのパートのシフトがどうしても抜けられないみたいで、初日からまさかの留守番確定になってしまった。


 ── ゴールデンウィーク初日からあたしお留守番? まさかだよー。


 けれど、れーちゃんとこは家族旅行も入れていて、日程が合わなかったんだ……。


 ── もう、がっかりしょんぼりを通り越してブチ切れても、あたし悪くないよね? 


 しばらくジタバタともがいていたら、スマホから通知音が鳴った。


『ソフィーから通話のリクエストがあります』


 急いでアプリを開けて通話ボタンを押すと、一気に話しだした。


「ちょっと、ソフィーちゃん! 聞いてよ!」

『え、しーちゃん? どうしたの?』


 ソフィーちゃんに愚痴を思いっきり聞いてもらったら、ちょっとスッキリした。


『じゃあしーちゃん、その日はずっとお家で一人でいないといけないの?』


 ソフィーちゃんが心配そうに聞いてくれる。そのときピンとひらめいた。


「ソフィーちゃん、あたし決めたよ。あたし、その日は家出する!」

『え、ええー! ちょっとまって、しーちゃん。そんなことしたら危ないよ?』

「あたしさ、その日はお小遣いもらえるから、そのお金で家出することにするよ!」


 とってもナイスアイデアだと思ったのに、


『しーちゃん。そんなことしたら、め、だよ』


 ってしかられた。がっくし。だけどそのとき、


『あのね、しーちゃん。わたし学園長にお願いしてみるからちょっと待っててね。いったん通話切るけど、かけ直すから』


 そう言うと通話が切れた。


 ── どゆこと?  


 って、はてなになっている間に、また通知が来る。


「もしもし?」

『あのね、しーちゃん。その日、学園に遊びに来ない?』

「……はい?」

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