第8話:二人だけの冒険

 レオン・グレイシスとリゼッタ・バリアンがそれぞれのパーティを追放され、パーティを組んでから早、五日が経っていた。


 元々、彼等は他の冒険者の様にダンジョンの完全踏破を目指している訳でも、一攫千金のチャンスを狙っている訳でも無い。


 ただ、ある程度のペースで、ある程度の額が稼げれば良い、というスタンスだ。


 その為、世界の中心に挑むダンジョンへの『半端者』同士でのアタックでも、危機感は感じながらも『冒険をしている』と充実感があった。


 ダンジョン第四階層の第五階層への『メインルート』から外れた、幾つにも枝分かれした通路の一つ。


 二人は広くなった通路で二人は戦闘を行っていた。


 既にゴブリン二体は倒している。


 そして、


「――《襲爪斬しゅうそうざん》!」


 レオンの爪状の斬撃を放つ剣術下位スキルが人狼型の魔物ウェアウルフの胴を深々と引き裂いて、その毛皮で覆われた屈強な身体を霧散させた。


 スキル使用後の僅かな身体の強張りを感じつつレオンは残る一体――二メートル程もある岩を人型に組み上げた様な魔物ゴーレムに視線を向ける。


 身体が軽くなった直後にレオンはソレに向かい駆けた。


 その背にリゼッタは魔力を練り上げて、


「“刃の冴えよ――研ぎ澄ませ”《シャープエッジ》!」


 彼の短剣の刀身に魔力を灯す。


 そして、レオンは太い岩石の腕を振り上げたゴーレムの眼前に滑り込んだ。


「っ、と!」


 レオンは叩きつけられる岩腕を見据え、短剣を振る。


 拳と刃が衝突し、一瞬だけ時が静止した。


 更に一瞬後、ゴーレムは腕を大きく弾かれ踏鞴たたらを踏んだ。


 彼の固有スキル《インパクトアブソーバー》によるノックバックと衝撃力を吸収し魔力へ変換、そして刀身に蓄積された。


 効果は蓄積した魔力を次に発動するスキルに消費し威力をその分、向上させる。


 副次効果として、武器への純粋な魔力による簡易的な付与エンチャント


「せやっ!」


 ゴーレムが体勢を立て直す前に、懐に潜り込みその左腕を斬り落とす。


 続けて空いた左側面に回り込み、短剣を胴体の岩の隙間に差し込んだ。


「《咆衝閃ほうしょうせん》――!」


 刀身から下位剣術スキルによる衝撃波が撃ち出され、ゴーレムの岩の身体が内側から弾け飛ぶ。


 短いスキル発動後の硬直が抜けて、レオンは大きく息を吐き出した。


「よし、これでノルマは達成かな」


 レオンは足元に転がったゴーレムの魔石を拾い上げて、『仕事』が片付いた事に心なしか安堵する。


 このダンジョンで稼ぐ方法は幾つかあるが、基本は魔物を討伐し回収した魔石をギルドで換金する事。


 そして、ギルドが出している『依頼クエスト』を熟す事だ。


 依頼も様々だが、多くの場合は特定の魔石の納品。


 魔石は魔物が体内で魔力を結晶化させた物で、魔力資源リソースとして利用が出来ると共に一定以上の質の物は武具やアイテムの素材にする為の練成魔法の原料ともなる。


 今回、二人が受注した依頼は『ゴーレム種の魔石一つ』『ウェアウルフ種の魔石三つ』『ホブゴブリン種の魔石二つ』。


 今しがたの戦闘でその全てを達成出来た。他の魔物から回収した魔石を含めて、一度のダンジョンアタックでの稼ぎとしては、十分だった。


「今日は随分と良いペースだ。今日は今までで一番稼げるかもな」


「そうですね。ダンジョンでの戦闘にも馴れ始めて戦闘時の消耗も幾分か軽減していますし、探索にも余裕が出てきましたね。と言っても――」


 リゼッタは言葉の途中で、手をレオンに向ける。


 詠唱を終え待機状態で維持していた防壁魔法プロテクトウォールが彼の後方に展開した。


 直後、その半透明の壁が一本の矢を弾く。


「油断は禁物ですが」


「だな」


 リゼッタにレオンが答え振り返る頃には、予め定めていた様に防壁が砕けて射線を通す。


 そのタイミングが分かっていた様にレオンは斬撃を飛ばす剣術下位スキル《飛刃斬ひじんざん》を放ち、再び矢を番えようとしていた横穴から顔を出したゴブリンを斬り裂いた。


「戦闘終了――と」


「お疲れ様です。グレイシスさん」


 短剣を鞘に納めたレオンにリゼッタは駆け寄った。


「あぁ、リゼッタもお疲れ。それじゃ、急いで拾っちゃおうか」


 二人は互いに無事を確認して、倒した魔物の魔石を手早く回収する。


「――さて、依頼は達成したし、このまま地上に戻っても稼ぎとしては十分なんだけど……どうする? 予定通りにこの先の行き止まりまで行ってみるか?」


「そうですね。私も体力や魔力にも問題はありません。深入りは危険ですが、もう少し探索を続けてみましょう」


 レオンの提案にリゼッタは頷いた。

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