俺だけ能力ゼロだけど、働かなくていいから逆に勝ち組だった件 〜なんでか美少女たちが養ってくれる〜
コロッケ斬
第1話 労働免除通知ってマジかよ
この世界では、生まれた瞬間に ≪特異素質(通称:ギフト)≫ が割り当てられる。
火を操る者、空を飛ぶ者、未来を見る者、心を読む者。
ランクはS・A・B・C・Dと五段階あり、ほとんどの人間がCかDで、その≪ギフト≫をもとに将来の仕事を選ぶ場合が多い。仕事にせずとも、趣味やライフワークなど、その様子をSNSで発信したりなど、今の時代、このギフトは最大の個性であり、その人のアイデンティティを表すものになっている。
……で、そのギフト検査(正式名称は、
そんな世界の中で、この俺、
これまでの人生の中では自分がどんなギフトを持っていたのか判明しなかった。
でも、それはほとんどの人間がそうで、今回の検査結果から、そのギフトの研鑽を重ね、磨いていくわけである。
さて……そんな俺のギフトは………………
「ナシ」だった。
え?
「……おかしいな。機械の故障か?」
ギフト調査員(国家公務員)が言う。
本来なら、≪
調査員の人がうろたえてた。
「お、おかしいな……」
何度スキャンしても結果は同じで、俺の欄にはでっかく……
≪ ――――――――――― ≫
…………棒線だけが表示された。
このとき俺はショックを受けるというより「これみんなに知られたらまずくね?」っていう冷や汗のほうが先に出た。
だって今やこの世界では、ギフトをもとに仕事をし、ギフトをもとに趣味を見つけ、ギフトが生活の根幹を成すものなのだ……。
それが……何もないだと?
案の定、学校ではすぐに噂が広まった。
ギフトゼロの高校生現るってことで、みんな俺に同情の視線を向けたり、中には笑いものにするやつもいた。
さらに、驚いたことにSNSの晒しアカに俺の名前が載ったらしく、そのことを心配した担任からは「あれだったら行政機関に助けを求めなさい」と高校卒業する身分だから、直接助けてはくれず哀れな目で見られた。
(まあしゃあない。ギフトがない人間なんて世界中探しても初めてなんだから)
かなり深刻なまま、俺は高校を卒業した。その際、俺の両親はすでに他界しているため、俺の現状を知らない。もし自分の息子がギフトのない人間だったと知ったとき、もし親が生きていたらどう思っていただろうか。
そして驚いたことに大学から内定取り消しの連絡がきた。
現在、両親のわずかな遺産を切り崩して、一人暮らししている俺にとって……それは未来が断絶されたような……暗い事実だった。
それから数日。俺はまるで廃人のような生活を過ごした。メシは喉を通らない。メシに喉を通して生き延びたところで、俺はこの世界から拒否されたのだ。
そんな俺のもとに、国から一通の封筒が届いた。
【特別通知:労働義務免除対象者指定のお知らせ】
あなたは無能力者であるため、社会的な貢献およびリスクゼロと判断され、 以下の特典が適用されます。
・労働義務の永久免除
・生活支援金の毎月支給
・宿泊先の無償提供(監視対象)
なお、この制度は半永久的に継続される見込みです。
――ギフト管理局
「なななな、なにィィィ!!!!!!」
え……。これっていわゆる……働かなくていいってことじゃねえか。
「……マジか!?」
通知を見たとき、俺は一瞬で悟った。
「これ……勝ち組では?」
だって働かなくていいんだよ?
何もせず、寝ててよくて、生活は国が面倒見てくれる。
しかも泊まるところまで……。
まあ、監視という言葉が気にはなるが、国が管理している施設だ。無理なことはしないだろう。それに、金の心配が要らない生活なんであれば、少しくらいの監視があっても何ら不満はない!
そして俺は、国の金で派遣された引っ越し業者に荷物をまとめてもらい、指定されたマンションに移り住んだ。
いわゆるタワマンってやつで、二十階建ての最上階が俺の部屋だ。
元の家からは電車で50分ほど離れてるが、こっちの方が都会だし、戻る理由も特にない。
強いて言えば、近所の弁当屋がちょっと恋しいくらい。
「……あ、そういえば俺、三日くらい何も食ってないな」
広々としたリビングには高級そうな革張りのソファ、壁掛けの大画面テレビ、システムキッチンまで揃っていて、まるでセレブ仕様のシェアハウスといった雰囲気だ。冷蔵庫も電子レンジもピカピカのハイスペック。
正直、住環境としては申し分ない。
テンションぶちあがりで、俺は各部屋を見回る。
広い。一人で住むにはあまりに広いのである。
だが、リビング以外の部屋は全て
は?
寝室が四つある。それぞれの部屋にシングルベッド。
誰が使うっていうんだ、これ……。
――――ピンポーン♪
インターホンの音が鳴った。
引っ越し初日の夕方、宅配の予定なんてない。
誰だ……?
「…………引っ越し初日に誰がなんの用だ??」
首をひねりつつ玄関を開けた俺は、そこで言葉を失った。
――制服姿の女の子が立っていた。
赤髪のショートカットは耳にかかる程度で、切れ長の目がキッと俺を見据える。どこか不機嫌そうな表情で、こちらを警戒しているようだった。
気の強そうな不良女子って感じ。怒らせたら怖そうだ。しかしながら、この子、顔が……めちゃくちゃ整ってる。
睨んでるのに、ある意味かわいい。
怒ってるのに、美人すぎてある意味全然怖くない。
こんな子が、なんで俺の家の前に……?
「…………お前が、同居人か……」
と、その女子は言った。
は、はああああ?
「矢口平太……それがお前の名前だろ? あってるよな?」
声はツンとしていて、どこか火花が散りそうな熱を感じる。
「は、はい……誰?」
「私は
「……は、はい?」
耳がおかしくなったのかと思った。
一緒に住むって、俺と一緒にってことだよな?
「それと……これ、お弁当。作ってきた」
彼女はすっと手を伸ばす。
その手はすらりと長くて、爪は短く整っていて、どこか生活感がある。
包みの布越しに、ほんのり温もりが伝わってきた。
「……え???」
制服姿のまま、料理して、訪ねてきて、同居宣言。で、弁当?????
「とりあえず弁当食べながら、自己紹介しようか」
如月というその女子はなんか急に顔を赤らめだす。
うん、わけわからん。
ただ、俺の腹はめっちゃ鳴る。
ぐぅぅぅぅぅううううううううううううううううう。
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