第31話 案件配信 #忖度ってなんですか?

「ふぅ……フッフッフ……ハッハッハ!!!」


コメント

・ボロ負けして精神おかしくなっちゃった

・実際アレは味方が悪いwww

・利敵いたの草しか生えない

・配信者的には美味しいけどもw


 映えある一戦目、あたしは"利敵行為"と呼ばれる味方の邪魔を永遠にしてくるプレイヤーとマッチングしてしまいボロ負けした。

 

 ──バンッ!! バンッ!!


 あたしはあまりの怒りに思いっきり台パンをかます。


「い、いたい……くそがぁ」


コメント

・拳が弱すぎる!!w

・ちょっと可愛いなw

・さっさと二戦目行って切り替えようぜ

・ドンマイドンマイ

・そういやコントローラーの使い心地は?


 流石の不遇さにいつも厳しいリスナーもあたしを慰めてくれた。……くぅ、その優しさは別にいらねぇんだよな。くっそマジで利敵したヤツ許さねぇからな。

 

 ……ん? コントローラーの使い心地?


 ……あっ。


 あたしは怒りのあまりぶん投げ、床に転がっていたコントローラーを拾い上げて動作確認をした。

 ヨシ、正常。


「おう、耐久性は十分みたいだな。ぶん投げても間違いなく動くわ」


コメント

・案件先の商品をぶん投げるな

・耐 久 性

・言い訳が過ぎるだろw

・これが忖度抜き……ってコト!?


 流石にやらかしたかと思ったけど、出鼻を挫かれたあたしの怒りは凄まじいものだった。

 ぶん投げたくらいで済ませたあたしを誰か褒めてくれ(過言)。


 というわけで気を取り直して二戦目。

 あたしはふぅ、と息を吐いて切り替える。


「よし……行くぞオラ!!」


 ステージは洋館のような場所。

 遮蔽物は多いが、建物自体が広いためバチバチの撃ち合いになりそうだ。


「よーし、右よし左よし──敵が来たらドタマを撃ち抜く!!!」


 あたしは角から敵が現れた瞬間、持ち前の反射神経で即座にヘッドショットすることに成功した。

 抜群のエイム狙いと反射神経だ。


コメント

・ファッ!?

・えっぐ

・どんなエイムしてんねんw

・あー、敵来たー、って思った瞬間にはヘッドショットしてた……化け物すぎるだろ

・こんだけ上手いなら尚更一戦目が可哀想で草


「ふっ……コソ練の成果が出たな」


コメント

・練習してんじゃねーか

・あれだけ虚栄心が強かったら不甲斐ない姿は見せたくないわなw

・プライドの塊すぎる


 練習の成果が出ていると確信し笑みを深める。

 実のところ、あたしが練習したことはたった二つだけ。本当にそれだけ。


 一つはエイム──つまりはどれだけ正確に敵を狙って撃てるかということ。

 戦いではこれが肝になってくる。他のことができていても、エイムがクソガバい場合は下手くそ扱いされるほど肝心なのだ。


 そしてもう一つは反射神経。

 これは持ち前の才能もあるが、細かな変化に気づく訓練を意図的にした結果、敵が現れた一瞬で仕留めることが可能になっていた。


 ……悔しいことにレヴィ・スケルトの書いてあった練習法が正しいことが証明されちまったがな。

 だが、ここまで短期間で上手くなることは想定していまい。この勝負、あたしの勝ちだな。


「ヘッド!! ヘッド!! たまに股間!!」


 バンッ! バンッ! バンッ!

 と正確に敵を撃ち抜いていく。


コメント 

・おい

・ひっ、ヒュンッてした……

・意図的に股間を狙うなw

・確かにこのゲームはなぜか股間がクリティカルヒット扱いになるけどさ!!

・マジでエイムすげぇな

・攻撃全振りしてるせいで被弾しまくってるけどw


「回避なんざいらねぇ!! 殺られる前に殺れば良いんだよ!!!」


 その通り、あたしは敵の銃弾を躱す動きを一切していなかった。しかし、その前に敵を撃ち抜けばあたしの勝ちになる。

 その他の動きは全部味方にカバーさせることで、倒れる前に逆転不可能なラインまで敵を打ち倒しておけば良い。


コメント

・脳筋すぎるだろ

・レレレ撃ち一切しないやん

・実際に秒速でキルしてるからまかり通ってるwww

・動きだけはめっちゃ初心者で笑う

・コントローラーの使い心地どう?


 ……そういや案件配信だったわ。


「コントローラーの使い心地ねぇ……あ〜、確かに普段使ってるコントローラーよりエイムが良い気がする。マジで。なんつーの? スティックが滑らかっつーか、正確に操作したい動きに応えてくれる感じはあるわ。実際問題マジで使いやすい」


 と、忖度抜きであたしは良いと思えたので褒める。使いやすさはすげぇある。

 ただその一方で若干の文句が少し。


「ただ、あたしみたいにお手々がちっちぇーと、ボタンとボタンの位置が若干遠くて押し間違えそうになるわ。企業さーん!! 合法ロリ向けのコントローラー出してくださーい!」


コメント

・草ァ!!

・誰が出すんだよ

・需要考えろw

・レビューが具体的なお陰でガチで言ってるんだろうなって感じはある

・買ってみようかなぁ


「正直ガチのゲーマーじゃねぇと違いが分かんないと思うけどな。ニワカは機材を良くする前にプレイヤースキルを高めろ。設備投資はそっからだろ」


コメント

・身も蓋もねぇ!!!

・案件配信で購買意欲を削ぐな!!w

・正論だけど案件やねん

・なんでリスナーが案件であることを一番気にしてるんだよ、おかしいだろ

・最早ワイらの案件なのでは???


 そんなこんなであたしの案件配信こと、FPS配信は大成功に終わったのであった。

 これにはあたしもホクホク顔のニッコリである。




 ──三日後にこんなメッセージが届くまでは。


────

レヴィ:ワタシとFPS勝負しよう。オフで

レイナ:あ? 誰がするかよめんどくせぇ

レヴィ:負けるの怖いんだ。じゃあいいよ

レイナ:ぶち殺してやるよマジで

レヴィ:明日の18時に事務所ね

────


「どうしよう……」


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