果てのない終わり

無機質に配管が剥きだした天井を見上げる。

 コンクリートの冷たさが、ここを閉ざされた場所だと感じさせられる。

 ハルの奴、大丈夫かな。

「ちょっと休憩するか」

 アルコン本部でも減ってきた喫煙室で煙を吹かす。

 今日はルルがやけに件を知りたがっていたな。

 確か――「大厄災の赤い月に関する報告文書」。

 その報告書の中にあるカルタの名簿を欲しがっていたよな。

 あの報告書は少しおかしな所があるのは薄々気づいている。

 大厄災から3年も経ってからカルタを回収しに行っている点、大厄災に直接関わった関係者が軒並み死んでいるか、悪魔化しているということ。

 その悪魔化も重篤なレベル……。

 報告書ではこれでとなっている。

 明らかにおかしい。そして――カルタの名簿。

 カルタの名簿だけ、ほぼ全ての文書が黒塗りにされていた。本部諜報部で、だ。

 そんなことを出来るのは諜報部長官か、ヴォルフ会長だけだ。

 ヴォルフ会長は何か隠していて、大厄災に関する何かを知っている?

 「ま、ヤバいのはカルタの名簿に書かれていた、『赤い月』なんだが――」

「それは気になるね。僕にも聞かせてくれないかい?ハル君の親友さん」

「――ッ!ヴォルフ会長!」

 他に誰もいないと思って声に出してしまった。

 どうする?いっそヴォルフ会長から真実を聞くか?いや、聞いたから消されるかも知れない。

 いやいや、もう既に機密文書の情報を聞いているんだ。目を付けられているには変わりない。

「ヴォルフ会長は大厄災についてどこまで知っているんですか?」

 「それはね――」

 

 肺から煙を入れるのを忘れ、煙草の灰がポトリと落ちる。

「……な、馬鹿な……。そんなことがあっていいのか!」

 ヴォルフ会長は友達を見つけたような目付きでただ、悟ように語り掛けてくるだけだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る