灯日となる今日

 公園に響くは、市長の大胆で、あの大厄災を生き残ったを、鼓舞するように演説をしていく。

 聞いていくうちに、いつの間にか演説を聞き入ってしまっていた。

 

 市長になるべくしてなった器。そう思わせるほどに――。

 しかし、この演説の中、何かをしようとするなら直ぐに分かりそうなものだが……。

 その時、突然壇上の上に何者かが現れた。

 明らかにおかしかった。壇上に上がるのではなく、まるで上から降りてきたように現れたからだ。

 「市長!」

 私が市長に向かって走り出す。

 だが、後一歩の所で、突然、右目の奥がズキズキと痛みだした。

 その痛みで私は一瞬態勢がずれる。

 スローモーションのように市長とそいつが対峙しているのが流れる。

 ――市長の死。

 頭がそんな最悪を予感する。駄目だ。それだけは。あってはならない。この町にはまだ――。

「避けて!」

 だが、その言葉が届く前に、市長は鋭利な銀閃で胸を裂かれた。

「ぐふッぇ」

 市長が倒れこむのをただ、ひたらすらゆっくりと進む。

 市長を襲った、そいつが持っていたのは、黒い短剣のようなものだった。まるで黒曜石のように――その刃は黒かった。

 ――重なる。あの時に。あの日見た光景に。確か、あの時も……。

 そいつがこちらを一瞬振り向き、不敵な笑みを浮かべる。

 まるでそれは、子供のよう。

 そして、そいつはまるで雲のように姿を消した。

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