仕事と私事
朝日がようやく生き残りの街を照らし始めた頃、1通の手紙が届く。
――カルタ本部より。
私は少しおいてから、手紙を見る。
「ルル、仕事だ。少し出てくる。」
「え、ちょ、カルタはどうすんの?」
「ルルが世話すれば良いだろう」
「カルタはあんたの方ばっかり見ているけど?」
カルタの方を見ると、少し涙目でこちらを見てくる。
「困りましたね。……分かりました。連れて行きますよ」
カルタが着替え、外へ出る。
「私の側を離れないで下さいね」
石で舗装された道、適当に停められた車を横目に進んでいく。
「わぁあ」
開けた公園に着くと、カルタは目を輝かせている。
今回の仕事は護衛だ。ここ、セントラルの市長の演説を護衛する。
比較的簡単で安全な仕事なはずだ。カルタを連れて来ても問題はない、だろう……。
――何も起こらなければ良いが。
会場の裏側に付き、警備員に
「アルコンの警備の方ですね。その……そちらのお子さんは?」
「連れだ。入れては行けないのか?」
「いえ、そういうことでは、一応確認を」
「そうか」
会場の中では後数分で演説が始まる。
慌ただしくスタッフが働いている。
スタッフの間を抜け、市長のいる控え室へ向かう。
「市長、お客様がお見栄です。」
「そうか。通せ」
「失礼します。本日アルコン本部より派遣されたハルと申します。」
「その子は?」
「連れです」
「そうか、そうか、子供は外で遊ばなきゃダメだしな。子供はわしら……いや、この町の灯りだからのう」
市長は満面の笑みでカルタの頭を撫でた。
カルタは怯えているようだったが、撫でられていくうちに照れくさくなっているのが分かった。
カルタが救えるようになる未来は来るのだろうか…………。
「市長、お時間です。」
「そうか、そうか。――では、護衛を頼んだぞ」
そう言いながら市長は控え室を出た。
その背中は、どこか大きく見えた。
私の薄汚れた背中とは違い――。
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