第6話 小説「風の歌を聴け」
超有名作家のマイナー作品という意味で、先の「レベルE」と同じような位置づけかもしれない。
独立性の強い物語が緩く結合しているという点でも似ている。
筆者が無人島に1冊だけ持っていく本を選ぶなら、この「風の歌を聴け」は有力な候補だ。
主人公は大学生の「僕」。
その「僕」が21歳のときの1970年8月8日~26日までの18日間を描いたもの。
「僕」は東京の大学に通っているが、故郷との間を行ったり来たりしている。
故郷というと森と川に囲まれた田舎を想像しがちだ。
しかし「僕」の故郷は山と海に挟まれた港町。
アメリカナイズという意味では東京よりも先に行っていたかもしれない。
そんな故郷でビールを飲んだり思い出に耽ったりして過ごした「僕」の話。
この小説の特徴をいくつかあげたい。
・独立した物語の結合具合が強すぎず弱すぎず丁度いい
・アメリカ文学の影響を受けた斬新な文体
・どのページを読んでもすぐに物語に没入できる
・あっさりしていて著者のおしつけがましさが全くない
この小説は "Hear the Wind Sing" というタイトルで英訳されている。
ちょうど英語の勉強にもなるので、筆者は英訳本の文庫版も手に入れて読んでみた。
が、読めたもんじゃなかった。
あまり馴染の無い単語が頻繁に使われている。
そして軽く捻っている文章が、日本語なら心地よく読めても、英語だとついていけない。
そんなわけで英語版「風の歌を聴け」は最初の方だけ読んで放置してしまった。
あと、タイトルにもちょっとだけ違和感がある。
「風の歌を聴け」の「聴く」は「注意深く耳を傾ける」という意味になるので、英単語だと筆者は listen をあてる事が多い。
が、"Hear the Wind Sing" の hear は「意識しなくても耳に入ってくる」という意味なので「聞く」じゃないかと筆者は思う。
つまり「きく」という動詞について、日本語と英語の間に整合性が取れていないんじゃないかと……
「それがどうした、まずは最後まで読めよ!」と言われたら、返す言葉が見つからないので、この議論はここまで。
「ノルウェイの森」とか「国境の南、太陽の西」などの有名な村上春樹作品に比べても本作はよく出来ていると思う。
まだ読んでいない人がいたら、ぜひ読んでみてほしい。
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