第12話妻との再会と新たな旅路

ドラゴンを討伐したことで

ワシはドラゴンスレイヤー茂吉だとか、

そんなたいそうな名前で呼ばれるようになってもうた。


いやー恥ずかしいからやめてくれ…。


ドラゴンを一口食いたいと、周りの村から人がどんどん来て

ものすごい人になった。

多量にあったドラゴンの肉はどんどん消化されていく。


「よかったの。ドラゴンや。ワシらの体の中でまた生きろよ」

とワシはつぶやく。


ワシはご神木のところへ行き

酒をまいた。

ドラゴンの供養とご神木への感謝の気持ちだ。

もちろんお地蔵さんにもな。


その帰り道ー歩いていると

突然ネックレスが外れ、通した指輪が転がっていった。


「あーちょっとまってくれ。そこのお嬢さん。その指輪を止めてくれ」


指輪は若い女性の前に止まって倒れた。


「これは…mokiti michiko …ローマ字」


「あーすまん。すまん。それ大事なものなんだ。妻との思い出の指輪なんじゃ」


「あなたは先ほど助けてくださった方…ありがとうございました。おかげで無事でした」


「そうか…それはよかった」

あれが助けたお嬢さんか…キレイなお嬢さんだ。

なんか懐かしいような…不思議な気分じゃ。


「もしかして…mokitiというのはあなたのお名前ですか?」


「そうじゃよ。でもお嬢さん。その文字が読めるのか?」

不思議じゃの。異世界なのにアルファベットが読めるのか。


「はい…もしかしてなのですが…坂上茂吉さんではないですか?」


「そうじゃよ。ワシ坂上茂吉85歳」

なんでわかる?あれ知り合い?


若い女性は今にも泣きそうな顔をしている。


「えっどうしたん。なんかワシ変なこと言った?」


「あなたの奥さんはミチコという名前で…あなたが60歳の時に亡くなったでは?」


「そうじゃけど。お嬢さんは何者なの?」


「ミチコです…。あなたの妻のミチコです」


「いや…

たしかにミチコの若いころに似てるけど…

えっミチコ。

私の奥さん60歳だったんだよ」


「そうですよ。

あなたが定年する5年前に亡くなったんですよ。

私はその後こっちに転生して

行商人の両親のもとに生まれ

両親は去年ドラゴンに襲われ他界

今は私が行商人のあとを継いでます。


あなたのこともちゃんと覚えてますよ。

好きな卵かけご飯のレシピは、卵の白身を先にとりわけて

白身だけをご飯に投入し、それを攪拌

その後黄身を入れ、そこに牡蠣しょうゆで味付け。

でしょ。

濃厚でオイシイですよね」


「あーミチコだ。みっちゃんだ。えーひさしぶり。

というか……

ワシ、天国来たんか?

ドラゴンにやられて」


あれーなんか??頭が混乱してきましたよ。


「違いますよ。リアルなみっちゃんですよ。ほらハグして」


「みっちゃん……」

ワシは何十年ぶりかに、心の底から涙を流した。


「会いたかった。ずっと、会いたかったんじゃ」


ワシはギュっと妻をハグした。

あーこれは妻のニオイじゃ。そうこんな抱き心地。


「えーでも。こんな指輪…持ち歩いて…めっちゃ私のこと好きなんですね」


とみっちゃんは挑発的に、小悪魔みたいに言ってくる。

うーん可愛い。


「そりゃもちろんじゃよ…めっちゃ会いたかった」


「でも。ここ本当に天国じゃないの?」

どこまでも疑うワシ。

仮にこれがラノベだったとしても

都合がよすぎるもの。


「違いますよ。それでこの指輪返してもらいますからね」


「いや…まぁ良いけど…それ妻の形見だし」


「ここに妻いるじゃない」


「えっでも…こんなに歳の差あるし…ワシとまた一緒なんて嫌だろ」


「別に…。慣れました」


「じゃあ。また一緒に暮らすの?」


「嫌なんですか?」


「いや。そりゃ私は嬉しいけど、みっちゃんはいいの?」


「こんな爺さんの世話できるの私くらいじゃないです?」

と少しイジワルそうに答えるみっちゃん。


しかし坂上茂吉は悩んだ。

坂上茂吉は85歳若いとはいえ

こんなに若い

今25歳

いくらなんでも歳の差カップルすぎね。


そこのあの老婆が来た。


「話は聞かせてもらいました。

なんと異世界からの方でしたか。

これも石神様のお力でしょうな。

年齢のことなら心配はいりません。

ドラゴンの生き血を浴びた

異世界人はそのドラゴンの寿命の10分の1 

長生きすると言われています。

あのドラゴンは推定600歳、

なのであと60年は生きることになるでしょう」


「おーそうなんじゃ。若くはならないの?」


「そんな便利な機能はない」


「なんだ…。しょぼん」


「まーいいじゃない。これでまた同じくらい生きれるね」

とみっちゃん。


というわけで、みっちゃんと茂吉はまた一緒に暮らしだすことにした。



茂吉はご神木の近くにあった岩に石工に手間賃を払い

地蔵菩薩の姿を彫らせた。


そして『一願地蔵』と名づけ。

この村のご神木跡に祀る。

もちろん村長の許可を取ってだ。


茂吉はこういった。

「ワシがドラゴンを倒せたのは、この石神様(正式名称一願地蔵様)のお陰じゃ。

いい神様だから、なにかあれば守ってくださるぞ」


それから一願地蔵は、村の名所になったそうな。ドラゴンを倒した神としてな。


そういえば

みっちゃんがこう言っておった。


「これって〇〇市にあった地蔵?」


「そうだよ」


「わたしここ行ったことあるよ」


「えっいつなの?知らんよワシ」


「そりゃそうだよ。あなたと付き合うまえに一願地蔵に、茂吉と末永く、たとえ一度離れても再び再開できるような強い絆で結ばれますようにと祈っていたから」

と恥ずかしそうにみっちゃんは言った。


ワシは強くみっちゃんを抱きしめた。


あれ…でもまてよ? 

みっちゃんと引き合わせたの一願地蔵なの?

偶然?

うんなに?


一願地蔵の声が聞こえる。


「まーな。いろいろあるって…それより。

これからが大変だぞ。

茂吉…ふたりでがんばれよ」



えっなに?どういうこと?


まだなんかクエストあんの?

二人でスローライフは???


END


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85歳坂上茂吉 異世界転移したらシルバー人材センターがなかったので、冒険者ギルドに登録してみました 坂本クリア @clear-sakamoto

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